2023年7月19日、鹿島建設は、AIとドローンを組み合わせた新しい資機材管理システムを、AI insideと共同開発したことを発表した。ドローンが空撮した動画からAIが資機材を認識し、その位置を現場3Dモデル上に表示する。
今回、国土交通省 北陸地方整備局発注の大河津分水路新第二床固改築Ⅰ期工事(新潟県長岡市)における資機材管理に適用し、作業時間を約75%(1回あたり約2時間を30分に)削減した。
同システムは、2022年度の国土交通省「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(PRISM)」に採択され、その有用性を確認・検証したものとなる。
建設現場では数多くの資機材を扱うが、従来の資機材管理は現場職員が現場内を巡回し、目視と手作業で行っていた。膨大な手間と時間を要するだけでなく、人が高所や狭所等に立ち入るという安全上の課題があった。また、現場で使用する資機材の大半はレンタル品だが、万が一、点検期限切れの資機材を使用していた場合、作業員の安全を脅かすリスクが懸念される。さらに、管理が行き届かない場合、資機材を重複してレンタルし、それにより余分なコストが発生するおそれがあった。
システムの概要とフロー
1. 学習データ準備~AIへの学習(事前準備)
ドローンが撮影した空撮画像を使い、AIに現場内の資機材の名称と形を学習させる。AIモデルの構築には、AI inside社が提供するAI統合基盤「AnyDate(※)」を採用。
2. ドローンによる現場の撮影
ドローンで現場内の動画撮影を行う。一定の高度から撮影を行い、その空撮動画とドローンの飛行記録をPCに取り込む。
3. AIによる解析と結果の出力
1で学習した結果をもとに、撮影した空撮動画と飛行記録からAIが資機材名称と位置を推定。その結果を現場3Dモデルに取り込むことで、資機材の位置を現場3Dモデル上に表示する。
※ AI開発・実装に求められるデータ・学習・運用を全て包含したAI統合基盤。テキスト・画像・数値などさまざまなデータに対応し、高度なスキルがなくとも、それぞれの課題に応じた高付加価値なAIソリューションを開発可能。
システムの成果
ドローンによる空撮動画からAIが資機材の名称と位置を検出し、現場3Dモデル上に見える化する。現時点で人と同程度の大きさの資機材であれば概ね検出できており、検出可能な資機材は25種類。個別に管理したい資機材については、プラカードを使用した識別によって法定点検日等を管理することもできる。
現場3Dモデル上に資機材の位置を可視化することにより、広大な敷地の現場でも効率的に資機材を管理。活用していない資機材も判別できるため、該当する資機材は返却するなど無駄をなくすことにもつながる。
同システムの効果を検証した結果、従来の作業と比較して、資機材管理の作業時間を約75%(1回あたり約2時間から30分に)削減できることを確認した。
今後、鹿島建設では同システムの資機材の検出精度を向上させるとともに、手で持ち運べる小さい資機材の検出率向上に取り組む。また、今回の工事で構築したAIモデル(資機材学習モデル)は他の現場にも活用できるため、全社への展開も視野に入れているという。
さらに、同システムと、鹿島建設の土木現場で活用が進んでいる現場見える化統合管理システム「Field Browser」とを連携させることで、さらなる現場業務の効率化を目指すとしている。