2023年7月7日、鳥取県は、以前より鳥取砂丘エリアで整備していた「鳥取砂丘月面実証フィールド(ルナテラス)」および「建設技術実証フィールド」の完成を記念して、オープニングセレモニーと各フィールドを活用したデモンストレーションを実施した。

 セレモニーでは平井県知事と鳥取大学の中島学長が登壇。鳥取県と鳥取砂丘月面実証フィールド/建設技術実証フィールドの土地を保有する鳥取大学の2者にて「鳥取大学と鳥取県との鳥取イノベーション実装事業」に関する基本協定を締結した。

 同協定により両者は、同フィールドを主な拠点として、宇宙分野や建設分野をはじめ鳥取県における新産業創出や県内産業の高付加価値化を目指すとしている。

各フィールドを活用したデモンストレーション

鳥取砂丘月面実証フィールド

月面探査車向けタイヤの走行試験(ブリヂストン)

 月面環境(大気がなく、120℃から−170℃までの温度変化等)ではゴムや樹脂が使えないため、スプリング構造を持つ金属製タイヤを試作して実証試験を行った。同社はこれまでも、鳥取大学乾燥地研究センターの協力を得て、鳥取砂丘(同センターの圃場)においてEV計測車両を用いた実証試験を実施している。今回鳥取県内企業との協業により、牽引式走行試験も新たに開始する。

開発中の惑星ローバー走行(ARES(アレス)Project)
 ARES Projectは、火星探査機の学生世界大会「University Rover Challenge(URC)」に、日本チームとして初の出場を目指す学生団体プロジェクト。東北大学、慶應義塾大学、東京大学,筑波大学の学生が所属している。火星探査ローバーの開発を行っており、開発中の惑星ローバーの走行を行った。

建設技術実証フィールド

ドローン自律飛行の実演(WorldLink&Company:SkyLink Japan)
 ハイピア(高橋脚)等の近接目視が困難な橋梁の点検に活用している自律飛行(障害物の自動回避)型ドローンの実演を実施。

ドローンレーザーの実演(鳥取大学、みるくる)
 ドローンに搭載したレーザースキャナのデータを地上で受信し、リアルタイムに3次元化(点群化)処理した映像を大型ディスプレイに映しながら、ドローンレーザーを使った3次元測量技術を紹介した。

3次元データを活用した業務プロセスのプレゼン(アイコンヤマト)
 整備完了後の実装フィールドの3次元地形データを事前取得しておき、3次元CADで描写した点群データを大型ディスプレイに映しながら、3次元データを活用した業務プロセスの効果をプレゼンした。

ICT建機(MG)による法面施工の実演(テクノレンタル・コマツカスタマーサポート)
 事前作成した3次元施工データをICT建機(マシンガイダンス)に入力し、3次元データを活用した施工(ICT施工)の実演を行う。オペレーターが確認しているモニター画面を大型ディスプレイに映しながら、丁張作業が不要になるなどのICT施工のメリットを説明した。

遠隔臨場の実演(NSW、ユビテック)
 スマートグラスやウェアラブルカメラを活用することにより、事務所(遠隔)に居ながら現場状況をリアルタイムに把握することができる遠隔臨場の取り組みを紹介。また、通信ネットワークを活用したバイタルデータのチェックなど、作業従事者の健康管理をはじめとした労働環境改善の取り組みも併せて披露した。

鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」

 国内外で宇宙産業が大きく成長することが見込まれる中、鳥取県における産業の成長軸のひとつとして、鳥取県に宇宙産業を創出するために「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の一環として実証フィールドを整備した。愛称はルナテラス。

 面積は約0.5haで、鳥取砂丘(国立公園外)の砂をそのまま活用する。フィールドの潜在ユーザーの声をもとに設計しており、月面環境を想定した実証実験を行うための「平面ゾーン」「斜面ゾーン(5度~20度程度)」「自由設計ゾーン(利用者が自由に掘削・造成可能)」を備える。アルテミス計画など月面探査に参画する国内外の企業・研究機関による実証実験の拠点化を目指す。

建設技術実証フィールド

 鳥取県の基幹産業である建設産業について、先進技術の導入による生産体制の革新とそれを担う人材育成、生産性の向上を目指す企業支援を行うために新技術実証フィールドを整備したもの。3次元測量設計、ICT建機操作など県内企業の技術研修等を実施する。鳥取砂丘月面実証フィールドに隣接しており、面積は同じく約0.5ha。

「鳥取砂丘月面実証フィールド/建設技術実証フィールド」完成までの経緯

 鳥取大学ではポストコロナの社会変革を見据え、浜坂キャンパスを大学・企業・自治体の連携拠点とする「とっとり浜坂デジタルリサーチパーク構想」を計画。同計画の中で鳥取大学が「デジタルリサーチパーク構想」を策定したことをきっかけに、同大学と県は、鳥取砂丘西側エリアの広大な敷地に技術検証のためのフィールドを整備する検討を開始した。

 その後、浜坂キャンパスのさらなる活用を検討する際に、宇宙産業創出に向けた「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の活動拠点としても最適な場になると考え、合同プロジェクトとして2023年度から本格始動。鳥取大学協力のもと2022年12月にフィールド整備に着手し、2023年6月末に完成した。