2023年7月12日、ソラリスとCASTは、配管内を自律的に移動しながら進むことができるロボットにフレキシブルな超音波センサーを搭載した配管内減肉検査ロボット「Ultra Sooha」を共同開発したことを発表した。同ロボットはコンセプトモデルであり、今後実用性を高めるため開発を進めるとしている。

 高度経済成長期に建造された上下水道やガス導管といったインフラ配管、工場・プラント、ビル・マンション・学校などの配管の老朽化が進んでいる。一方、配管の保全人員の高齢化や、少子化による労働力不足が課題となっている。

 また、人や既存の配管検査ロボットが入り込めない小径配管の検査は、従来、工業用内視鏡(ファイバースコープ)による映像を通した目視で行っていた。しかし配管に3カ所以上の曲がり(エルボ)が存在すると、その先への侵入が困難で、配管内部の状況を非破壊で確認する手段がなかった。

共同開発について

 製造現場の配管メンテナンスを課題対象とする両社は、配管内の自律的な移動とフレキシブルで薄型なセンサーによる超音波減肉モニタリングを掛け合わせた、配管メンテナンスの新たなアプローチを目指す。

・ミミズ型管内走行ロボット「Sooha」
 ソラリスのミミズ型管内走行ロボット「Sooha」は、ミミズのぜん動運動を模倣し、人間や他のロボット機構では侵入が困難な細管内の走行および映像による可視化を実現する。小口径配管内(内径100mm以下)の自律走行や90度の曲がりが多い配管内、垂直方向の走行も可能だ。本体が空洞である特徴から、カメラ以外にもさまざまな検査装置や清掃機器をビルトインできる。

・CASTセンサー
「ゾルゲル複合体圧電デバイス」技術を活用した耐熱性とフレキシブル性により、100℃を超える環境でも壊れずに動作するセンサー。高温・曲面への密着が可能で、薄さは約1mm。製造現場の高温箇所や人の手のアクセスが難しい狭所、点検の都度足場の設置・撤去の費用や手間を要する高所の配管やタンクに対して、効率的な減肉モニタリングを実現する。

・コンセプトモデル「Ultra Sooha」
 ソラリスのSoohaとCASTのセンサーを掛け合わせたコンセプトモデル。人工筋肉と空気制御による自律的な移動を行いながら、人工筋肉の伸び縮みによる配管内部への密着のタイミングを利用して超音波による管厚の測定を行う。

 これまで超音波による測定可能な範囲はセンサーを取り付けた箇所に限定されていたが、移動しながらかつ水などを用いない管内からの管厚測定に加え、Soohaに搭載したカメラによる映像確認を同時に行える。

 コンセプトモデルとしては直管内の移動に限定した開発を行ったが、今後Soohaで対応可能なエルボも含めた管内移動管厚測定を実現するため、開発を進めるとしている。