2023年6月7日、九州大学は、次世代電動航空機向け400kW級全超電導モータの回転試験に成功したことを発表した。

400kW級全超電導同期モータ
熱交換器ユニット

 航空機へのCO₂削減要請は非常に厳しいものであり、2050年までにCO₂排出量実質ゼロという目標が策定された。航空機の高効率化を目指し、ガスタービンと発電機で発電した電力によりモータを駆動してファンを回し推進力を得る、次世代航空機の開発が国内外で進められている。

 九州大学先進電気推進飛行体研究センターでは、経済産業省主導のNEDOプロジェクトを受託し、企業・国研と連携して、次世代航空機の実現を目指し、超電導技術を使った高効率かつ高出力電動推進システムを開発している。

 従来のモータに比べて、超電導化すると細い超電導線を巻いた巻線と無鉄心化により、同じ大きさで重量1/10、出力を2倍にできるが、超電導線は交流運転下では超電導特有の交流損失が発生してしまう。開発グループでは、これまで超電導線の交流損失予測、低減および大電流容量化技術の開発を進めており、これらを適用することで、回転機の界磁巻線だけでなく電機子巻線まで含めた全てを超電導化した全超電導モータを開発し、液体窒素をポンプで循環させる冷却システムと組み合わせて、回転試験に成功した。

 今回の結果は次世代航空機の実現に向けた大きな成果であり、引き続き実用化に向けた開発を進めるとともに、同システムの空飛ぶクルマへの適用も目指すとしている。

電気推進システム構成図