2023年6月7日、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)は、AGVやAMRに搭載して幅広い用途に活用できるVisual SLAMソリューション「自己位置推定システム with Vision-based Navigation Software」を同日より販売すると発表した。

 同ソリューションは、位置姿勢計測や地図作成機能をもつ高精度なキヤノンのソフトウェア「Vision-based Navigation Software」と、HMS社製産業用AIスマートカメラ「SiNGRAY Stereo Pro」を組み合わせたものとなる。

「自己位置推定システムwith Vision-based Navigation Software」設定画面イメージ
HMS社製AIスマートカメラ「SiNGRAY Stereo PRO」

 近年、超スマート社会の実現に向けた取り組みのひとつとして、AGV(無人搬送車)やAMR(自律移動ロボット)、ドローン、人や物体などを認識して駆動するサービスロボットを活用した工場や物流、商業施設などでの自動化や無人化が進められている。これらの高度な自律性を持つロボットでは、移動や動作に必要な周辺環境情報を的確に取得するため、眼の役割を果たす仕組みの精度が重要となる。

 移動ロボットの眼となるソフトウエア技術であるVisual SLAM(※1)は、幅広い画角で撮影したステレオカメラ撮影データを用いて周囲の環境の3次元情報とカメラの位置や姿勢を同時に推定するため、レイアウト変化の多い現場にも柔軟に対応することができる。

 Vision-based Navigation SoftwareのVisual SLAMは、立ち上げ時の高速な位置姿勢計測が可能。また暗所や逆光に強く照明変動や外光環境への順応性が高く、地図作成に必要なルート走行テストの回数を少なくすることができるという。加えて、検出した特徴点の分布やルート走行で作成した地図、計測信頼度のメーター表示を同一画面上に表示するため、稼働環境によって発生する課題への対応の迅速化が期待される。

 同ソリューションの提供にあたり、AGVやAMRなどの開発に必要なプログラム開発やステレオカメラでの評価をサポートし、顧客の検証から実装に至るプロセスの短縮を支援する。今後はさらに、物流・移動、点検、配膳・給仕などの自動化・少人化ニーズに対応するため、新しいサービスを提供していくとしている。

※1 SLAM:Simultaneous Localization and Mappingの略。周囲の三次元情報から自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術。LiDARというレーザーセンサー(距離センサー)を用いた「LiDAR SLAM技術」と、カメラ・イメージセンサーから取得した画像データを用いる「Visual SLAM技術」の2つのセンシング方法がある。Visual SLAM技術は映像情報をもとに自己位置推定を行うため、周囲の障害物や人の識別、コンセントや充電箇所などランドマーク(特徴物)の認識など、自己位置推定以外のさまざまな制御に活用できる。