2022年6月20日、富士通は、屋外で利用するローカル5Gのシステム全体を検証できる常設施設として、栃木県大田原市の那須工場に検証環境を構築したことを発表した。

 約1万5,000平方メートルのエリアにおいて、住宅が密集する地域での検証が難しいドローンを活用した飛行実験や、広範囲での無人搬送車、無人搬送ロボット(以下、AGV)の運行試験など、ローカル5Gの屋外活用に向けた技術検証が可能。

 これにより、例えば、屋外施設の設備点検や侵入者検知、河川や山斜面の監視を模した検証など、現場にローカル5G環境を構築する前に、制御の妥当性やシステムの保全性、連結試験など、ローカル5Gを含むシステム全体を検証できる。

 同社はこの検証環境を、屋内検証環境と併せてトータルに提供していくとしている。

検証例のイメージ

 近年、あらゆる業界におけるDXの加速を背景に、ロボットやAIを活用した保安対策や点検作業の自動化・遠隔化などに必要なインフラとして、エリアを限定し低遅延かつ大容量通信が可能なローカル5Gの活用が期待されている。主に、建物や敷地内での設備点検業務や整備監視業務における作業効率の向上と省人力化を目的に、ローカル5Gの実証が進んでいる。

 広大なエリアが必要となるローカル5Gの屋外検証は、実施場所や期間など条件に沿う環境を臨時に構築して実証実験を行うケースが多く、常設かつドローンが飛行可能な屋外検証環境へのニーズが高まっていた。

 今後同社は、検証環境を用いた検証の第1弾として、NTTコミュニケーションズによる侵入者検知や対象物を自動追尾する監視業務向けの機能について、ローカル5Gを活用した場合の有用性を7月中旬より共同で検証するとしている。

検証環境の概要

 所在地は、富士通那須工場内検証エリア(栃木県大田原市)。

富士通那須工場内の検証エリア

ローカル5Gシステムの概要

1. システム検証設備

実験基地局
 富士通のローカル5G スタンドアロンシステム「FUJITSU Network PW300」を使用した実験基地局、およびローカル5Gネットワークを常設。ドローンやAGVなどの検証器材や作業端末の持ち込みのみで検証可能。

ローカル5G向けセキュリティ
 トレンドマイクロが提供する5Gおよびローカル5G向けセキュリティソリューション「Trend Micro Mobile Network Security」を「FUJITSU Network PW300」に組み込み常設。

2. カバーエリア
 富士通 那須工場内検証エリアの範囲 約1万5,000平方メートル、高度20メートルまで。

3. 検証例
 ドローンを活用した侵入者検知やドローンの制御検証のほか、自然災害発生時の被害状況把握、屋外設備の遠隔監視など、屋外環境を想定したさまざまな検証を行うことができる。また、屋内検証環境の「FUJITSU コラボレーションラボ」と連携して、屋内動作検証から実際の運用に近い屋外での検証まで含めた大規模な検証を行うことも可能。