2023年5月16日、テムザックは、水田における雑草抑制・遠隔監視ロボット「雷鳥1号」(プロトタイプ)を開発したことを発表した。宮崎県延岡市において開始した、ロボット技術を用いて省力化を追求する「WORKROID農業」の一環となる。

 同ロボットを実証用の水田に投入したほか、ドローンによる播種作業の実施や水管理システムの運用も開始した。

 テムザックではロボット技術を活かして、経験のない人でも農業が行えるWORKROID農業に取り組んでいる。省力化を目指し、農業ワークロイド(雷鳥シリーズ)、ドローン、水管理システムなどを活用し、米粉用の水稲直播栽培を実施する。

 米は日本の数少ない食料自給品目であるが、農業従事者の高齢化・担い手不足、耕作放棄地の拡大により、省力化・省人化に向けた技術革新が求められている。

 テムザックは、2022年12月に延岡市、北浦農業公社と連携協定を締結。2023年4月、延岡市に農業ロボットの実践拠点「アグリ研究所」を開設し、WORKROID農業を本格始動した。

 同社は、米粉用稲作から米粉の流通までを一気通貫で行うことができる省力化農業を確立し、全国に広めていきたいとしている。

雑草抑制・遠隔監視ロボット「雷鳥1号」

 田んぼの雑草抑制・遠隔監視を行うロボット「雷鳥1号」。

 α版は自律航行型で、水を攪拌して泥を巻き上げることで光合成を妨ぎ、雑草の生育を抑える機能を備えている。前進→右旋回→前進→左旋回といった単純な動きをランダムに行うようプログラミングしており、複数台を同時に稼働することで効率的に隅々まで撹拌する。

 β版は遠隔操作型で、離れた場所からカメラ映像を見ながら操作して、水田の様子を確認することができる。

 太陽光発電のエネルギーにより稼働するが、バッテリーを搭載しており、曇りでも航行が可能。小型・軽量のため搬入出作業も容易で、台数の増減により水田の規模を問わず柔軟に対応する。

α ランダム制御型
β 遠隔操作型
雷鳥1号(プロトタイプ)スペック
型番α ランダム制御型β 遠隔操作型
サイズ
(全長×全幅×全高)
600×380×250mm
(フロート材含む)
340×300×200mm
(フロート材含む)
重量約2kg約1.5kg
適用面積1反につき約5台1反につき1台
電源/駆動電圧5vバッテリー単三乾電池4本
操作方法自律遠隔操作

ドローン直播

 鉄コーティングした種籾(たねもみ)を、ドローンで水田に直接播く方法を採用。育苗・田植え作業が不要となり、農作業を大幅に省力化する。鉄コーティングを施すことにより、種籾の重量を増やし水中に沈降しやすくすることで、直播でも育成が可能となる。さらに、表面が硬くなることから、鳥に食べられることを防ぐ効果も期待できる。

(ドローン播種協力:コヤワタオフィス)

水管理システム

 圃場の水位・水温、気温、湿度、風速、雨量等を自動測定できるセンサー類を導入。時間や場所を問わずスマートフォンから確認できる。給水・止水を遠隔で行う仕組みも備え、水管理に関する作業を省力化する。

水位水温センサー(左)、基地局(右)
気象観測器(左)、給水バルブ(右)