2023年5月9日、ザクティは、濃霧や暗闇といった悪環境でも人物検出が可能な自動走行ロボット・無人搬送車向け、人物検出用2眼遠赤外線カメラセンサの試作開発を行い、自動走行ロボットに搭載して実証実験を行ったことを発表した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボットによる社会変革推進に向けたロボット・AI部事業の周辺技術・関連課題に係る先導調査研究」事業として開発したもので、自動走行ロボットの活用により物流業界の人手不足問題を解決するため、既存のセンサでは難しいとされていた条件下での自動走行を実現することで、より安全な自動走行ロボット走行につなげる。

 自動走行ロボットの活用は物流のラストワンマイルを担うことから、物流業界のDX・人手不足解消が期待されている。

2眼遠赤外線カメラセンサを搭載した4WD小型自動走行ロボット(左)、正面黄色枠内が人物検知用カメラ(中央)、実証実験時の様子(右)

 実証実験ではブルーイノベーションの協力を得て、異機種・複数のロボットやセンサを遠隔で制御・統合管理する同社のベースプラットフォーム「Blue Earth Platform」(以下、BEP)と接続した4WD小型自動走行ロボットに、同センサを搭載・連携した。ロボットの自動走行中にセンサが人物を検出すると、BEPを通してロボットを停止させるという一連の動きを検証した。

 既存の可視カメラセンサやLiDARでは人物の検出が困難な夜間や霧などの悪環境において、同センサを用いることで人物を検出し、その距離も算出することが可能であることを確認した。

 同センサを自動走行ロボットに搭載することで、従来は人物検出が難しいとされていた悪環境下の人物検出精度を向上させ、より安全な自動走行を実現することができる。

濃霧環境、暗闇環境での同センサおよび可視カメラセンサの画像比較。写真の赤枠上の文字は、AIによる人物判定確率と、人物と同センサの距離を示している。

 少子高齢化による配送ドライバー不足が社会問題化する中、物流業界では労働環境改善のためドライバーの時間外労働の上限規制が適用される2024年問題が差し迫っている。一方、配送サービスの需要は大幅に増加しており、物流のラストワンマイルが課題となっている。自動走行ロボットの活用はこうした物流課題の解決策として期待されており、さまざまな実証実験や実用化に向けた道路交通法の改正などが官民一体となって進められている。

 ザクティでは、ドローン向け可動式カメラの技術や製品の自動走行ロボットへの活用を検討しており、雨天や霧などの影響を受けにくい赤外線カメラをLiDARや可視カメラと組み合わせて使用することで、より高い安全性を備えた自動走行を可能にするとしている。