2023年4月25日、ダイナミックマッププラットフォーム、ソフトバンク、ビーブリッジの3社は、デジタル庁から受託した「デジタルツイン構築に関する調査研究」の一環として、空間IDを活用した配送ロボットとARナビゲーションのデータ共有に関する実証実験を、2023年2月に実施したことを発表した。

 実証実験では、空間情報(ロボットの配送地点や建物内の情報)や地図情報などのデータを空間IDに紐付けることで、ソフトバンクが開発した配送実証向けの自律走行ロボットや、ビーブリッジが提供するARナビゲーションアプリといった、異なる企業のシステム間でデータを共有することができた。

 この仕組みで共有されたデータを活用することで、地図の作成や位置情報の登録などの作業を効率化する。例えばソフトバンクの場合、従来自律走行ロボット用の地図の作成にかかっていた工数を、最大8割程度削減できると考えられる。また、ビーブリッジの場合、より効率よく正確なARナビゲーションを提供することが可能になるという。

 今後3社は、さまざまな企業のシステム間でデータの共有を進めることで、自律走行ロボットをはじめとする空間IDの活用事例の拡充を進めるとしている。

<空間IDについて>

 空間IDとは、3次元空間をボックス状に切り分けることで、空間情報の基準が異なる場合でも、一意に位置を特定できる規格のこと。空間IDに静的・動的な情報を紐付けることで、空間IDをキーにして空間情報を簡易に統合・検索したり、データを高速で処理したりすることが可能になる。現在、デジタル庁と経済産業省の主導で規格の標準化に向けた整備が進められている。

背景

 ロボットの自律走行や、ARナビゲーションのようなアプリケーションの稼働には、位置情報や建物の情報などを取得して地図を作成し、事前にルート設定を行う必要がある。しかし、地図の規格や基準となる座標が事業者によって異なるため、別の事業者が同じエリアでロボットなどを導入する場合でも、新たに地図の作成や位置情報の登録を行う必要があり、その工数やコストが配送ロボットなどの導入の障壁となっている。

 そこで3社は、共通の規格である空間IDに空間情報や地図情報などのデータを紐付け、ダイナミックマッププラットフォームが開発した「地図・GIS基盤システム」を通して異なる企業のシステム間でデータを共有することで、地図の作成や位置情報の登録などの作業を効率化することを目的に実証実験を行った。

実証実験の内容

1. 空間情報やロボット用の地図などを空間IDに紐付け

 ソフトバンクがロボット用の地図を作成し、ロボットの出発地・経由地・目的地や建物の情報などの空間情報や、作成した地図の情報を空間IDに紐付け、地図・GIS基盤システムに登録した。

2. 空間IDを活用した自律走行ロボットによる配送

 ソフトバンクが開発した自律走行ロボット「Cuboid」を活用して、地図・GIS基盤システムを通して空間IDに紐付いた建物の情報を読み込むとともに、登録した出発地・経由地・目的地のデータを基にルートを設定して物資の配送を行った。

自律走行ロボット「Cuboid」

3. 空間IDに紐付いたデータの共有

 空間IDに紐付いた空間情報や地図の情報を、異なる企業のシステムでも活用できることを検証するため、地図・GIS基盤システムを通してビーブリッジにデータを共有した。

4. 共有データを活用したARナビゲーションの実施

 ビーブリッジが、地図・GIS基盤システムを通して共有されたデータを活用し、ARナビゲーションアプリで建物内の目的地までのルートや店舗情報などを表示することで、人による配送のサポートを行った。

ARナビゲーション画面
各社の役割
ダイナミックマッププラットフォーム「地図・GIS基盤システム」の提供
ソフトバンク・自律走行ロボットの提供と自律走行システムの運用
・ロボット用の地図の作成
・空間情報やロボット用の地図情報の空間IDへの紐付け
ビーブリッジ・ARナビゲーションアプリの開発
・ARナビゲーション用の地図の作成
・ARナビゲーションに必要な情報の空間IDへの紐付け
各社の役割