2023年3月27日、徳島県佐那河内村とセイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、エアロネクスト、NEXT DELIVERY、KDDIスマートドローンは、2023年3月24日に「中山間地域におけるドローン配送」の実証実験を実施したことを発表した。佐那河内村役場庁舎を起点として、次世代高度技術の活用により新しい物流サービスの構築を目指す。

 具体的には、NEXT DELIVERYとKDDIスマートドローンが連携して、セイノーHDとエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの社会実装の検討に向けて行うものとなる。

 なお同実証は、環境優良車普及機構により、2022年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金交付対象事業(社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業)として採択されている。

(左より)エアロネクスト代表取締役CEO・NEXT DELIVERY代表取締役 田路圭輔氏、佐那河内村長 岩城福治氏、セイノーHD事業推進部ラストワンマイル推進チーム新スマート物流推進プロジェクトマネージャー和田悟氏、KDDIスマートドローン代表取締役社長 博野雅文氏
地元のシイタケを搭載したドローンが着陸する様子(佐那河内村役場駐車場)
ドローンと車でJAまでリレー配送した佐那河内村産シイタケ(佐那河内村役場駐車場)

 自然環境に恵まれた佐那河内村は、住民の自然に対する関心も高く、村の将来あるべき姿、村のアピールポイントとして、「自然の豊かさ」についての意見が多く挙げられているという。この意見をもとに2020年度に策定した佐那河内村総合計画においても、自然環境の保護・保全のため、環境への負荷軽減対策に取り組むことを住みよい環境づくりの主要な施策・事業としている。

 また、佐那河内村は徳島県内の中山間地域に属し、生活する上で車の運転が必須となる。一方で、同村の人口と世帯は、2023年1月末現在で人口2,171人、942世帯、高齢化率は47.6%となっており、運転免許証を返納する高齢者も増加傾向にあるという。これから先、買い物難民の増加が見込まれるほか、担い手不足のため過疎地に対する物流の問題が発生するなど、生活利便性の確保が困難になってきている。

 こうした中で、佐那河内村ではスマートシティの推進や脱炭素社会構築、地域課題解決に向けた新たな取り組みを模索しており今回の実証実験へと至った。

 今後は実証実験で明確になった課題の洗い出しを行い、また、医薬品配送、フードデリバリーの配達代行、共同配送や貨客混載なども組み込み、地域コミュニティ活性化を目指し取り組みを進めるとしている。

実施内容

 今回の実証実験では、1)福祉分野での弁当配食サービス、2)農業分野での軽作物輸送、3)買い物代行サービスの3点について、住民の理解度向上、地域課題の洗い出しを目的に、仮設のドローンデポとドローンスタンドを設置して実施する。ドローンデポとは、既存物流とドローン物流との接続点に設置する荷物の一時倉庫・配送拠点のことで、ドローンスタンドは、ドローン物流の起点および終点に設置するドローンの離着陸のための設備・スペースとなる。

 ドローン配送では、エアロネクストとACSLが開発した物流専用ドローン「AirTruck」を使用し、機体の制御にはKDDIスマートドローンが開発した、モバイル通信を用いて機体の遠隔制御・自律飛行を可能とするスマートドローンツールズの運航管理システムを活用した。

 3月24日の報道関係者への公開では軽作物輸送を想定し、嵯峨老人憩の家から佐那河内村役場までの片道約1.6kmを約4分でドローン配送した。また、弁当配食サービスを想定し、佐那河内村役場から佐那河内村保険センターまでの片道1.8kmを約4分で配送。買い物代行サービスを想定して、佐那河内村役場から桜集会所までの片道4.1kmを約9分で配送した。

2人分の弁当とお茶を配送し、再度離陸するドローン(佐那河内村保健センター前)
弁当とお茶を受け取った住民
ドローン配送した弁当とお茶