2023年3月16日、埼玉県神川町とセイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、エアロネクスト、NEXT DELIVERYは、2023年3月15日に、同町においてドローン配送の実証実験を実施したことを発表した。神川町とセイノーHD、エアロネクストの3者が同日締結した、ドローンなどを活用した地域課題解決のための包括連携協定に基づく取り組みとなる。

 セイノーHDとエアロネクストが推進する、ドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの社会実装の検討に向けて実施するもので、NEXT DELIVERYが実施した。

 なお同実証は、環境普及機構により、2022年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金交付対象事業(社会変革と物流脱炭素化を同時実現する先進技術導入促進事業)に採択されている。

包括連携協定締結式の様子。(左から)セイノーHD執行役員 河合秀治氏、神川町長 櫻澤晃氏、エアロネクスト代表取締役CEO・NEXTDELIVERY代表取締役 田路圭輔氏。

実証実験の概要

 物資や商業施設が集積する市街地と、過疎化が進行している旧神泉村地区への「市街地・過疎地連結型ドローン物流」を想定し、今年度は神川町内において、定期飛行に向けた課題の洗い出しを目的として、仮設のドローンデポとドローンスタンドを設置して実証実験を実施した。ドローンデポは、既存物流とドローン物流との接続点に設置される荷物の一時倉庫・配送拠点であり、ドローンスタンドは、ドローン物流の起点および終点に設置されるドローンの離着陸のための設備・スペースとなる。

 実証実験では、多目的交流施設と城峯公園を往復でドローン配送すると共に、災害支援やフードデリバリー、物産販売の視点を組み合わせ、常に荷台を空にしない取り組みを実施した。

多目的交流施設から城峯公園までの飛行ルート。

 関東西濃運輸本庄支店に集まった救援物資(粉ミルク、幼児用お菓子、ジュース、スポーツドリンク、体拭きシート等)と、おふろcafé白寿の湯で調理した弁当と豚汁を軽車両で多目的交流施設まで輸送。多目的交流施設敷地内で、救援物資と弁当・豚汁をドローンに搭載した。その後、物流専用ドローン「AirTruck」により城峯公園まで片道約5kmを約11分で配送し、災害時を想定した救援物資を地元の住民に、弁当と豚汁はサイクリストのもとに届けた。

救援物資と弁当を配送したドローン。(城峯公園)
救援物資を受け取る住民。(城峯公園)
救援物資と保温バッグに入った弁当・豚汁。
ドローン配送した弁当。

 城峯公園では、サイクリストが直売所で購入したお土産(野菜やマヨネーズ等)をドローンに積み込み、多目的交流施設に向けて復路飛行した。
 その際、撮影用ドローンで危険箇所を確認する想定で多目的交流施設のモニターで、ドローンに搭載したカメラからの飛行中のライブ映像を確認した。
 ドローンによって多目的交流施設に配送した荷物は軽車両に積み替え、関東西濃運輸本庄支店より発送された。

復路飛行したドローンが着陸する様子。(神川町多目的交流施設)
ドローン配送した荷物を陸送スタッフに受け渡し。(神川町多目的交流施設)
車に積み替えリレー配送。(神川町多目的交流施設の駐車場)
各社の役割
神川町・水素・再生可能エネルギー・ゼロエミ物流等の脱炭素化の取り組み
・実証実験の場やリソースの提供
・社会実装へ向けた支援
セイノーHD・持続可能な物流網の構築
・ラストワンマイルの課題解決
・新スマート物流SkyHubの社会実装
エアロネクスト・高性能なドローンを実現する技術
・物流専用ドローン機体準備
・新スマート物流SkyHubの社会実装
NEXT DELIVERY・ドローン配送サービスの実用化
・ドローン運航オペレーション

各者コメント

神川町長 櫻澤晃 氏

 この協定を機に神川町でドローンを活用した新スマート物流システムの構築、観光や産業振興での活用に向け検討し、それにより、10年先も、20年先もずっと住みたいと思えるまちづくりのため「挑戦する」取り組みを進めていきたいと考えております。

セイノーHD 執行役員 河合秀治 氏

 セイノーホールディングスは、幹線輸送の強みを活かしたラストワンマイル配送領域において、生活様式の変化や構造変化に対応すると共に、買い物弱者対策、生活困窮家庭対策等の社会課題解決型ラストワンマイルの構築を積極的に推進・拡大しております。神川町においては、物流が担う役割やテクノロジーの実装で、住民の皆様が持続的に安心して暮せる住みよい神川の町づくりと住民サービスの維持、向上を追求し、10年、20年先の未来につながるドローンによる自動化を視野に入れた新たな空と陸の物流モデル構築に向け取組んで参ります。

エアロネクスト 代表取締役CEO・NEXTDELIVERY代表取締役 田路圭輔 氏

 埼玉版スーパー・シティプロジェクトにおいて、拠点間をヒト、モノ、情報がフレキシブルに移動できる環境を提供して、住民がフレキシブルにコンパクトに暮らせる町を目指す神川町。我々が提唱している物流を基点に地域社会インフラをバージョンアップする新スマート物流の取り組みはその実現につながる取り組みだと考えています。神川町から新しい移動のモデルを発信できたら嬉しく思います。

包括連携協定の内容

 ドローンを含む次世代高度技術の活用により、以下の事項において連携・協定する。

観光・産業・経済の振興に関する事項
持続可能な地域交通や地域の事業者と連携した物流課題の解決による住みやすい環境づくりに関する事項
医療・服薬指導・福祉の充実および継続に関する事項
地域防災や地域の脱炭素化への貢献および新しい社会インフラの整備に関する事項
地域雇用、人材育成および産業基盤整備に関する事項