2023年3月9日、日本無線(以下JRC)は、「長野県航空機システム電動化プロジェクト」のもと、2022年11月28日から11月30日に長野市大岡聖山において、JRC製無人移動体画像伝送システム(※1)を用いて、ドローンを安全に飛行させるための通信環境の確保などの実験を実施したことを発表した。通信やセンサーなどからなるトータルソリューションにより、公衆通信網を使用しない自営通信網による伝送路を構築した。

※1 ドローン等に用いられる高画質映像の長距離伝送などを可能とするシステム。

 長野県は2016年に「長野県航空機産業振興ビジョン」をまとめ、電動化やドローン市場の拡大に応じた研究開発を産学官連携で進めている。2021年に発足した「長野県航空機システム電動化プロジェクト」では、二酸化炭素の排出を減らしエネルギー効率を改善するため、電動航空機市場への参入を進めるとともに、山岳地域へのドローンによる物資輸送の実現を掲げている。従来のヘリコプターによる物資輸送はコスト高が原因となり請け負う業者は減少しており、今後、代替物資輸送手段として期待されるドローンの導入を視野に入れている。

 今回の実験は、公衆通信網や衛星測位基準局が少ない山岳地域でドローンを安全に飛行させる技術の確立を目指し、長野県工業技術総合センターからの委託事業として実施した。山岳地域でドローンを安全に飛行させるために、麓にいる操縦者や山小屋で待機する操縦者などに、ドローンの位置情報やドローンからの映像情報を途切れることなく確実に通信する環境を確保することが目的となる。併せて、ミリ波レーダーシステムによるセンシング技術や、準天頂衛星システムからのL6D信号(※2)受信による高精度飛行位置検出技術のドローンへの搭載について検討を行う。

 機体と地上との通信にはJRC製無人移動体画像伝送システムを用いて、飛行ルート上に自営通信網を構築。クエストコーポレーション製マルチコプタータイプのドローンに、前方監視カメラ、ミリ波レーダーおよび準天頂衛星システム受信機を搭載し、目視外での安全飛行に必要となると想定される情報が、飛行中の機体から地上ステーション(※3)へ安定して伝送できることを確認した。

※2 準天頂衛星から送信されるセンチメータ級測位補強サービス信号。
※3 実験で構築した、機体から伝送される情報を監視する地上設備。

地上ステーション

 JRCでは、次世代エアモビリティに関わるさまざまな技術開発を進めており、センサー・通信・測位とそれらのインテグレーションなど、次世代エアモビリティ向けトータルソリューションの提供を目指すとしている。