2022年11月14日、東京大学協創プラットフォーム開発(以下、東大IPC)が運営するオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合は、東京大学関連ベンチャーで、自社開発の国産産業用ドローンとクラウドサービスを組み合わせ、企業や自治体などにソリューションを提供するエアロセンスに対して出資を決定したことを発表した。なお今回の投資は、イノベーションエンジンおよび日本無線との共同出資となる。

 エアロセンスは「ドローン技術で変革をもたらし、社会に貢献する」をビジョンに掲げ、2015年8月にソニーモバイルコミュニケーションズ(当時。現在はソニーグループが持ち分を保有)、ZMPの共同出資により設立。国産ドローンのハードウェアからソフトウェアまで自社内で一気通貫の開発体制を持つことで、さまざまな分野の現場で使いやすい産業用ソリューションを提供している。

 エアロセンスの強みであるVTOL(垂直離着陸型固定翼)型をはじめとする多様なドローン各機種の製造・販売体制の強化に加え、強固な事業運営体制の構築を目指し、今回の投資実行に至ったという。
 今後はさらなるオープンイノベーションの推進に加え、東京大学の知見を活用して法制度への対応強化など事業戦略の策定・実行の支援も目指すとしている。

 また同日エアロセンスは、日本無線と10月上旬に資本業務提携を締結したことを発表。長距離、長時間の飛行が可能なエアロセンスのVTOL型ドローン「エアロボウイング」の性能向上に取り組み、日本無線が同機を活用することで国の行政機関の防災、点検の支援体制の強化および拡充を図る。

 航続距離が最長50kmとなるエアロボウイングは、すでに広域・長距離の監視業務などに活用されている。携帯電話回線網の上空利用により、長距離・広域における運用機会は増えたが、山岳地帯や海域、緊急時などの利用には課題もあったという。日本無線の無線技術を活用し携帯電話回線圏外での飛行を可能とすることで、ドローンの活用範囲拡大につなげる。

 また両社は、エアロセンスのVTOL技術と日本無線による水・河川管理に関する知見や保有する無線通信技術を合わせることでインフラ分野のDX推進に寄与し、安全・安心な国土づくりに貢献するとしている。

 インフラは建設・整備だけでなく維持管理や災害対応も求められる一方、建設業の就業人口は減少し、高齢化も進んでいる。技術継承や担い手確保が課題となっており、国土交通省はこれらの課題の解決に向けて「インフラ分野のDXアクションプラン」をまとめて取り組みを進めている。

 エアロセンスは、ドローンおよびAI技術を取り入れた自動化システムの開発を手掛けている。建設分野で活用が進んでいるドローン測量においては自律飛行ドローンによる計測からクラウドコンピューターによるデータ解析までのワンストップサービスを「AEROBO測量2.0」として提供。2020年にはエアロボウイングの販売を開始し、広域での活用を実現している。
 日本無線は無線通信技術を基に、幅広い製品やシステムを提供している。防災分野においては気象レーダーの開発、ダムコントロールシステムの提供など総合防災サプライヤーとして防災減災に取り組んでいる。