2023年3月16日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)とACSLは、JAXA独自技術の低騒音プロペラ「Looprop」の設計手法の高度化に関する共同研究において、LoopropをベースにACSLの国産ドローン「SOTEN(蒼天)」に搭載する低騒音プロペラ「Looprop for SOTEN」を共同開発したことを発表した。従来のプロペラより最大2.3dBA(音圧エネルギー換算41%低減)の静音効果があるという。

 Loopropは、JAXAが静音を目的に独自に開発したループ状の形(8の字状)のプロペラで、4枚羽のそれぞれ2枚の位置を寄せて先端のカーブをつなげた形状をしている。回転の際に周囲の空気とプロペラが穏やかに接するため騒音が抑えられるほか、耳障りな音を軽減する効果や、変形抑制効果を持つ。

新規開発プロペラを搭載したSOTEN
新規開発プロペラ「Looprop for SOTEN」試作品

 ドローンの利用は、物流や警備など社会の基幹インフラへの導入が現実的になっており、従来では禁止されていた市街地や住宅の上空も飛行できる制度(レベル4)の整備も進んでいる。レベル4では市街地などの生活圏を飛行することから、ドローンが発生する「音」を静かにしていくことが重要な課題の一つとなっている。

 この課題に対してJAXAとACSLは、LoopropをSOTEN向けに最適化設計したLooprop for SOTENの試作品を共同開発した。最適化設計により、従来型プロペラ(現在のSOTENのプロペラと同形状)との比較において、同等の推力を維持したまま静音性能を達成し、人の不快感が軽減されたことを確認した。

PA指標(Phyco-A)による標準プロペラと新開発プロペラの比較。(千葉大学工学部 劉浩研究室 Jianwei Sun氏による、千葉大学とJAXAの共同研究成果)

 屋外での効果検証飛行試験の結果は、通常の2枚羽プロペラとの音圧レベルの比較で、最大で2.3dBA音圧が低下(音圧エネルギー換算で41%減少)したことを確認。また、音質も耳障りさの主因である倍音成分によるプロペラの特徴的な音が減少し、より自然界の騒音の音質に近くなる性質と相まって全体の静音性が向上していることを確認した。

計測位置ごとの音圧レベル(dBA)。効果を正しく計測するため、従来型プロペラはLoopropと同じ材料で製造したものを使用した。
周波数分析結果(水平距離5m高度3m位置)。