2023年2月21日、住友商事は、Advanced Air Mobility(以下、AAM)の分野で電動垂直離着陸機(以下、eVTOL)を開発・製造するドイツのVolocopter GmbH(以下、Volocopter)に出資したことを発表した。

VolocopterのeVTOL「VoloCity」

 AAMはeVTOLおよび無人航空システム(ドローン)を用いた航空交通・物流システムの総称。eVTOLは、既存の民間航空機と比較し、電動のため駆動時の温暖効果ガス排出量が格段に少なく、滑走路が不要で離着陸時の騒音も小さい次世代航空機だ。また、維持管理が必要な部品点数が少なく、将来的には自律飛行が可能で、運航費用を大幅に節減できると期待されている。日本国内おいては「未来社会の実験場」をコンセプトとする2025年大阪・関西万博を皮切りに、eVTOLの社会実装と商業運航開始が計画されている。

 Volocopterは2011年にドイツ・Bruchsal(ブルッフザール)市で設立されたeVTOL開発・製造会社であり、開発中のVoloCityについて既存航空機と同基準の安全要求値を実現しようと、500名以上の体制で開発に取り組んでいる。2024年に欧州航空当局(EASA)からのVoloCityの型式承認取得と運航開始を計画しており、翌2025年には日本の国土交通省航空局(JCAB)からの型式承認取得と大阪・関西万博での運航開始を目指している。また、機材開発と並行して、航空業界・自動車業界・物流業界のグローバルパートナーとの連携も進めており、eVTOLによる交通・物流サービスの提供、離着陸場の開発・運営・整備を含めた全体エコシステムの構築にも取り組む。搭乗可能人数が多く航続距離の長い次世代機材の開発にも着手しており、将来の市場拡大を見据えた取り組みを行っている。

 住友商事は2018年からAAM分野における事業化を検討しており、2020年には無人機管制システムを開発する米国のOneSky Systems Inc.に出資し、日本で市場開拓を行ってきた。同時に国内外で小型ドローンを用いた各種実証を通じて、AAMと既存物流を組み合わせた持続可能な物流システムの実装に取り組んでいる。今回の出資を通じ、AAMの日本国内の普及浸透と持続可能な新しい社会インフラの構築を目指すとしている。