2023年2月10日、群馬県安中市と、セイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、エアロネクストは、2月8日、安中市内の複数地域において、未来を見据えた地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向け、ドローン配送の実証実験を実施したことを発表した。

 同実証実験は、2022年10月に安中市、セイノーHD、エアロネクストが締結した、ドローンを含む次世代高度技術活用により地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた包括連携協定に基づく第1弾であり、国土交通省の「CO2削減に資する無人航空機等を活用した配送実用化推進調査事業」を活用した取り組みとなる。

 セイノーHDとエアロネクストによるドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub」の社会実装に向けて、実証実験では貨客混載やオンライン診療を組み込みながら、小学校、ゴルフ場、病院の3カ所を結ぶ複数ルートを農産物、フード、処方薬等、常時積み荷を空にすることなく一連のチェーンドローン配送をレベル3飛行(無人地帯での目視外飛行)にて実施した。地域自主組織や地元事業者と連携し、買物弱者、医療弱者等の社会課題の解決のため、さまざまな用途活用やビジネス採算性の検討を行う。

(左より)セイノーHD執行役員 河合秀治氏、安中市長 岩井均氏、エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏。
配送物の弁当と物流専用ドローン「AirTruck」
ゴルフ場のクラブハウス前から弁当を載せて離陸するドローン

実証実験 概要

 安中市では少子化が進む一方、高齢化率も年々増加しており、6〜7割が高齢者の地区もあるという。市内に人口集中地区(DID地区)がないのも特徴で、市街地に人口が集中することなく、低密度に拡散した都市構造になっている。

 また、公共交通としては乗合バス・乗合タクシー等が運行しているが、利用客が年々減少しており、公的負担が増加している。高齢化が進む地域やバス路線がない地域住民の日常の買い物や通院など、生活利便性の維持のためにも交通手段は課題になっているという。

 そこで、物流の最適化を目指し、ラストワンマイルの輸送手段にドローン配送を組み込み、地上輸送とドローン配送を連結する新スマート物流システムの導入により、買い物代行や災害時支援、医薬品配送等を行う仕組みをつくり、課題解決を目指す実証実験に官民協働で取り組む。

 同実証後、まずは旧松井田町においてSkyHubの今年度の実装を推進するとしている。

実施内容

 地域自主組織や地元事業者と連携し、小学校、ゴルフ場、病院間をドローン飛行で経由して、農産物、フード、処方薬等を各場所の地元住民に輸送する。

 常時積み荷を空にすることのない運用、新幹線を活用した貨客混載、オンライン診療からの3名分の処方薬と買物代行の商品の混載、届いた農産物を活用して調理した弁当をドローン配送してすぐに商品として店頭陳列する、産直品の集荷・加工・納品・販売の連携など、複数の試みを実施した。

 実証では、旧九十九小学校を物流サービスの拠点であるドローンデポ(仮設)に定め、ドローン離着陸の起点終点とし、3つのドローン配送を一連のチェーンで実施した。

① 旧九十九小学校からTHE RAYSUM :片道9.1km、約20分
 地元農家の野菜を輸送。届いた野菜とアンコウ(糸魚川から新幹線(手荷物)で届いたもの)を使いレストランで弁当を調理。

② THE RAYSUMから碓氷病院 :片道6.6km、約15分
 調理した弁当をデリバリーし、近くのJAファーマーズまで電動自転車で運び店頭に商品として陳列。

③ 碓氷病院から旧九十九小学校 :片道4.7km、約11分
 あらかじめオンライン診療と3つの薬局によりオンライン服薬指導を受けた患者3名にそれぞれの処方薬(※1)と、買物代行を想定したJAファーマーズからの食料品・日用品を混載して輸送。

※1 ドローンによる医薬品配送のガイドラインを遵守したうえで、実際の各患者への処方薬をデリバリーする。

仮設ドローンデポ(旧九十九小学校)でオンライン診療を受ける患者
オンライン診療後、ドローン配送で届いた処方薬と食料品を受け取る患者 (仮設ドローンデポ:旧九十九小学校)
ドローンが着陸する様子(仮設ドローンデポ:旧九十九小学校グラウンド)
実証実験に使用した物流専用ドローン「AirTruck」