2022年11月28日、花王とポーラスター・スペースは、パーム農園に甚大な被害をもたらしているガノデルマ病害の解決に向けた業務提携に合意し、花王からポーラスター・スペースへ出資を行ったことを発表した。ガノデルマ病害を早期発見するためのモニタリング技術の確立を目指し、2022年12月より協働で実証を開始する。

 アブラヤシから生産されるパーム油とパーム核油は、世界で最も多く消費されている植物性油脂で、食用油や界面活性剤の原料など多岐に使用されている。これらの油は世界の人口増加に合わせて需要も増えており、持続可能な生産と調達が求められている。

 ガノデルマ(※1)はガノデルマ属糸状菌の総称で、アブラヤシに感染すると、樹は水分伝達機能が阻害されるなどの影響で徐々に実の収量が低下し、やがて枯死する。パーム油の主要生産地であるインドネシアやマレーシアで被害拡大が問題となっているが、現時点で有効な防除方法はなく、感染樹をなるべく早く発見し、伐採することが主な対処法である。一方、感染初期は目視での判別が難しく、判別できた時にはすでに周囲に感染を広げているケースが多発しているという。現在多くの農園では、スタッフが歩いて見回ることで病害の管理をしているが、大きい農園では10万ヘクタール以上にもなるため、人件費の負担や専門家不足による診断精度低下も課題となっている。

※1アブラヤシに被害を与える種は主にボニネンス(学名:Ganoderma boninense)

ガノデルマに感染したアブラヤシがたどる経過

 花王は今後、遠隔地から対象物に触れずに測定できるリモートセンシング技術などを保有しているポーラスター・スペースとともに、パーム農園でのガノデルマ病害を管理する技術の確立を目指すとしている。

1. センサーカメラ搭載ドローンでのモニタリング技術
 特殊なセンサーカメラで樹の分光情報(スペクトル)を分析することで、目視では困難な初期のガノデルマ症状を判断する。このセンサーカメラをドローンに搭載して上空から撮影することで、効率的に初期の感染樹を発見して管理する「モニタリング技術」の開発を行う。

効率的に初期感染樹を発見して管理する「モニタリング技術」イメージ

2. パーム農園でのモニタリング技術の実証実験
 花王はインドネシアやマレーシアのパーム油生産地に油脂製品の生産拠点を保有しており、サステナブルな調達を目指して小規模パーム農園までのトレーサビリティの確保をすすめている。今までに構築したサプライチェーンとの協力関係を活用し、開発したモニタリング技術が実際のパーム農園において適用可能か確認する実証実験を行う。

 両社は技術開発や実証実験を通してモニタリング技術の確立を目指すと共に、今後はパーム農園へのサービス提供について検討も行うとしている。将来的には、花王のアジュバント(機能性展着剤、※2)技術と組み合わせてガノデルマ防除を達成し、持続可能なパーム油生産・調達への貢献を目指す。

※2 葉や害虫に農薬を均一に付着させ、農薬効果を安定化させるために添加する補助剤(花王ウェブサイトより)