エアロネクスト、セイノーHDなど5者、ドローンや自動運転バスを活用した新スマート物流の実証を開始

　2022年10月3日、茨城県境町とエアロネクスト、セイノーホールディングス（以下、セイノーHD）、BOLDLY、セネックは、ドローンや境町で定常運行する自動運転バスをトラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を、2022年10月に開始することを発表した。2023年度中をめどに、市街地でのレベル4（有人地帯における補助者なし目視外飛行）のドローン配送サービスの実装を目指すとしている。5者は、この取り組みを進めるため同日、連携協定を締結した。なお、同事業は内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金（デジタル実装タイプ TYPE2）に採択されている。

荷物を運んだ自動運転バスと、荷物を搭載して飛行するドローン。（道の駅さかい）

（左より）セネック取締役副社長 和歌良幸氏、BOLDLY代表取締役社⻑ 兼 CEO 佐治友基氏、境町長 橋本正裕氏、エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏、セイノーHD執行役員 河合秀治氏。

　この取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めるとしている。

　まずは、2022年10月以降に境町でドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンの離発着スペース「ドローンスタンド」（3カ所を予定）および荷物の集約拠点となる「ドローンデポ」（1カ所）を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進める。

　2022年末に予定されているドローンのレベル4飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行う。ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行い、将来的には注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指す。

ドローン配送サービスのイメージ（予定）。

　境町は、過疎化や公共交通の維持、物流業界の人手不足など地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入するなど積極的な取り組みを進めている。2022年度の補正予算においては、ドローンの研究開発およびオーダーメードを行う拠点施設の建設（約4億円）を決定した。今回5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減、住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指すとしている。

　ドローンおよび自動運転バスの運行管理は、BOLDLYが開発した運行管理プラットフォーム「Dispatcher（ディスパッチャー）」で行う。同社が2022年9月に開発したDispatcherのドローン向け機能「Dispatcher for Drone」により、Dispatcherを自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することが可能になる。これにより、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できるほか、将来的には関連するデータ活用なども期待できるという。
　Dispatcherは、2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されており、自動運転バスの運行に必要なシステムおよびオペレーション体制が整っている。これを土台に、スムーズにレベル4のドローン配送サービスを実装することを目指す。

　今後は全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進するとしている。

「Dispatcher」画面のイメージ。境町では物流ドローンに適した魚眼レンズにより周辺の状況を広範囲で確認する。

境町社会福祉協議会に設置している遠隔監視センター。緊急時の駆け付け（大型バイクで現場急行）体制を整備している。

　使用する機体は、エアロネクストとACSLが共同開発した物流専用ドローン「AirTruck」。エアロネクスト独自の機体構造設計技術4D GRAVITYにより安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に適したユーザビリティ、前進に特化、長距離飛行に必要な空力特性を備えている。可搬重量5kg、最大飛行距離は20km。

物流専用ドローン「AirTruck」