2022年8月30日、SkyDriveと中電工業は、中国電力ネットワークが保有する送電鉄塔の塗装工事において、鉄塔3基分となる1.6トンの塗料を物流ドローン「SkyLift」で運搬したことを発表した。今回実施した実証実験を経て、物流ドローンの導入を開始した。

 これまで両社は、物流ドローンを現場に導入するために飛行試験を重ねており、今回は2022年7月26日~8月10日のうち5日間、中電工業の送電鉄塔塗装工事現場において使用する塗料(一斗缶)の搬送を行った。総フライト数は102回、総運搬重量は約1,600kgとなった。

ホイストに吊す形態で約20kgの一斗缶を運搬する様子(2022年7月27日)。手前は中電工業 石井社長(左)とSkyDrive 福澤CEO(右)。

 電力会社では、送電鉄塔の塗装工事の際には、工具や塗料などの資機材を小型トラック等で運搬している。しかし、送電鉄塔の7割程度は山間部に立地しており車両の通行が難しいため、ほとんどのケースで作業員が山道を往復して資機材を運搬している。中電工業が送電鉄塔塗装工事で使用する塗料物量は、年間で約10万kgにもなるという。
 物流ドローンを山地の送電設備メンテナンス工事に活用することで、労働環境改善や安全性の向上、運搬人工の削減などの効率化を目指す。

 今後、中電工業はSkyDriveと協議の上、自社運搬に向けた課題(安全性、作業性、操作性、経済性、オペレーターの適性判断)の整理と解決、物流ドローンを操縦できるオペレーターの育成に取り組むとしている。
 具体的には、自社内のオペレーター育成のため、2022年10月を目途に難易度を上げた教育プログラムを実施する予定。2022年12月には必要スキルを習得し、2023年度に自社運搬の本格運用を目指す。また、1日あたりの運搬物量の向上、使用頻度の向上(可能な限り導入できるようにするための体制を構築)、トータルコストの低減(費用対効果を高める)を図る。
 さらに、中電工業が塗装工事を施工している全国の電力会社向けに展開し、将来的には他社送電工事に関係する運搬も担いたい考えだ。火力、水力発電所および電力関係以外のインフラ塗装工事においても活用するなど、自社の業務効率化だけでなく、地域社会への貢献という視点で取り組みを展開するとしている。

両社によるこれまでの電磁波の影響試験・実証実験等の様子。計4回実施(中国電力南原研修所1回、高梁有漢線2回、新広島幹線1回)。

物流ドローン「SkyLift」

物流ドローン「SkyLift」

 ワンボックスカーに積載可能なコンパクトな機体サイズ(全⾧1.9m×全幅1.2m×全高1.0m)、最大ペイロード30kgの物流ドローン。30kgの荷物であれば9分程度、往復1km程度の飛行が可能。タッチパネルのシンプルな操作で行き先を設定すると、自動運転で重量物を運搬する。オリジナルのカーゴバッグは、航空局から塗料やガソリン等の危険物輸送の飛行許可を取得した実績を持つ。

 着陸せずに荷下ろしできるホイスト機能を備え、山間部等の自動車やクレーン、ヘリコプターの活用が地形的に難しい場所や、災害時で道路が使用できない場合等、高低差運搬を中心とした場所やシーンで活用できる。

 航空・宇宙および防衛分野の品質マネジメントシステム「JIS Q 9100:2016」認証を取得しており、安全で品質の高い機体を開発する環境を持つ。

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