2022年8月22日、熊谷組、京セラ、日本電気(以下、NEC)は、熊谷組技術研究所屋外実験ヤードにおいて、無人化施工に不整地運搬車の自動運転を組み込んだローカル5Gの試験環境下で、建機の遠隔操作と自動運転の実証実験を6月に実施したことを発表した。

 災害補修時における二次災害予防のための無人化施工技術に注目が集まっている。同技術の高度化には、4Kによる車載カメラ映像の高品質化や、建機の傾き・振動等の現場情報のフィードバックが欠かせず、従来よりも高速で低遅延な伝送が可能な無線通信システムの適用が必要となる。

 3社は地域や産業の個別ニーズに応じて地域の企業や自治体などのさまざまな主体が構築可能なローカル5G(L5G)に注目し、屋外実験ヤードにおいてL5Gのシステムを構築して実証実験を行った。加えて、ヤード内を移動する建機の位置と通信速度の情報を組み合わせることで、通信状況を視覚化する方法を確認した。

図1:基本構成図

 同実証では、技術研究所の本館および土質実験棟にNEC製ローカル5G基地局を設置し、アンテナを屋外実験ヤードに向けて調整(写真1)。基地局ユニットから土質実験棟内のサーバーを経由して遠隔操作室の通信機器まで回線接続を行った。
 建設機械上には受信電力情報をリアルタイムで取得できる等、運用自由度の高い京セラ製ローカル5G対応デバイス「K5G-C-100A」を設置し(写真2)、車載カメラの映像をIPネットワークの上り回線を通じてパケット伝送を行い遠隔操作室のモニターに表示する(写真3)。

写真1:屋外実験ヤード内へ向けられたNEC製ローカル5G基地局とアンテナ
写真2:京セラ製ローカル5G対応デバイス「K5G-C-100A」(ドーム状のボックスに格納)を搭載した建設機械
写真3:ローカル5Gでのパケット通信を利用して建設機械を遠隔操作する様子

 屋外実験ヤード内でのスループットや遅延時間測定に関する基礎実験を実施し、基地局間のハンドオーバー機能(移動端末接続する基地局のスイッチ機能)を通じて、屋外実験ヤード内での高い上りリンクスループット、低遅延を達成可能なことを確認した(図2)。

図2:屋外実験ヤード内移動時の上りリンクスループット(左)と遅延特性(右)

 3社は今後、複数の建設機械にローカル5G対応デバイスを接続して遠隔操作を実施する際の操作性を調査し、現場環境での実験試験運用を行う予定。
 免許による周波数帯域の占有可能な特徴を生かして、他端末からの帯域内干渉が発生しやすい無線LANとの特徴の差異を把握し、複数の無線通信システムを併用しながら、建機の遠隔操作と自動走行を高度化することが可能なローカル5Gの本番導入に向けた取り組みを進めるとしている。