2022年4月14日、トルビズオンは、福島県桑折町、伊達西根堰土地改良区、日本工営の協力のもと、桑折町におけるドローンを活用したフードデリバリーに関する実証実験を同日実施したことを発表した。同実験を契機に、農業用水路上空を軸としたドローン航路網の構築に向けた検討を開始するとしている。

 現在地方が抱える物流業におけるドライバー不足や、高齢者の移動手段の確保といった課題を解決する方法として、ドローン配送サービスが注目されている。

 一方、農業水利施設を維持管理している土地改良区や自治体では、施設の老朽化や農業者減少による維持管理負担の増大などの課題があり、国会では農業用水利施設の維持管理費確保に向けた収益事業を可能とする土地改良法改正案が、2022年4月の施行に向けて審議されてきた。

 西根堰や藤倉ダムなどの農業用水利施設を所有・管理する伊達西根堰土地改良区(福島県)は、施設見学やノルディックウォーキングの開催等を通じた地域づくりに取り組んできた。しかし農業者の減少等により、今後の維持管理費を確保していくことが課題となっており、日本工営と共に、施設の新たな利活用方法(収益事業)の検討を進めてきた。

 そこで同社は農業用水路上空をドローン空路として活用することを伊達西根堰土地改良区に提案し、トルビズオン、桑折町と連携してピザを地元住民の方に向けてドローンでデリバリーを行う実証実験を実施した。
 同実証では農業用水路の利活用と地域の課題解決を目指しており、桑折町と伊達西根堰土地改良区が主体となって同町の農業用水路上空をドローン空路として活用する方法について検討を開始する。

  実証実験では「レガーレこおり Pizza Sta」よりピザを搭載したドローンが地域住⺠の自宅まで自動航行し、周囲の安全を確認の上ピザを届けて、再び離発場所へ戻り自動着陸を実施した。離発着便数は往復1便。使用機体はマルチコプター型ドローン「DJI M300」。搬送重量は1.5kg、搬送距離は約3kmとなる。
 実証の検討内容は、農業用水路上空におけるドローン飛行のリスクアセスメント、農業用水路上空におけるピザのドローン配送の検証(レベル2飛行)、ドローン航行に対する社会受容確保。

実証実験の配送ルート
実証実験の使用機体「DJI M300」(左)、配送するピザのイメージ(中央)、ピザ屋「レガーレこおり」(右)

 今後4者は、有人地帯での目視外飛行(レベル4)実現に向けて2022年度に予定されている航空法改正を見据えて、桑折町の採れたて農産物やテイクアウトのドローン配送による労働負荷の軽減、災害時の物資支援のほか、ドローンによる災害現場や有害鳥獣の被害状況確認等への活用など、町が抱える課題を官民連携により解決していきたい考え。

 今回の実験はその第一弾であり、JAふくしま未来や伊達果実、伊達西根堰土地改良区といった地元事業者と今後も協力し、桑折町全体でドローンを活用した地域課題解決を推進していく。

 桑折町は交通の要所でもあることから、将来的には空飛ぶクルマの活用等も視野に入れているという。また、福島市や伊達市、国見町といった周辺の自治体との広域連携を進めることで、より広範囲に空路をつなげていくことも検討する。日本工営とトルビズオンは、農業用水利施設上空のドローン空路利用モデルを全国の施設所有者・管理者へ提案していくとしている。