2022年3月1日、スカイマティクスは、既存投資家のフェムトグロースファンド2.0投資事業有限責任組合と、新規投資家であるミライトロン、ジャパン・コインベスト(運営者:三井住友トラスト・インベストメント)、および農林中央金庫の4者を引受先とする第三者割当増資により、総額で約13億円の資金調達を行ったことを発表した。シリーズBとなる本調達により、累計調達額は約29億円となる。

 調達した資金をもとに、地理空間情報と時系列情報を処理解析する「時空間解析プラットフォーム」を強化し、サービスの販売拡大や人材採用も促進するとしている。

 スカイマティクスでは、離れた場所からセンサーを用いて観測し、対象を調べるテクノロジーであるリモートセンシングを使って取得した情報を、地理情報システム(GIS)技術によりWEB上に再現し、そこに時系列情報を組み合わせることで「時空間解析プラットフォーム」を構築している。同プラットフォームを通じて、農業・建設・測量・設備点検・防災など幅広い業界における課題解決やDXの推進に取り組む。

 同社では、コロナ禍におけるDX推進の加速や、労働人口減少、生産性向上といった社会課題の解決、SDGsに対する関心の高まりなどを背景に事業が急速に成長しており、特に農家向けスマート農業サービス「いろは」、自治体向け農業管理DXソリューション「いろはMapper」、ドローン測量・現地管理DXクラウド「くみき」、および施設・設備情報管理システム「くみきスコープ」に対する引き合いが非常に多くなったという。

 今回調達した資金は、これらサービスのセールスおよびマーケティングに集中的に活用するとともに、採用の強化に充てる計画だ。採用に関しては、GISエンジニア、WEBエンジニア、画像処理解析エンジニアを中心に、R&D人材やセールス・カスタマーサクセス人材等を拡充するとしている。

農家向けスマート農業サービス「いろは」

 画像解析技術および地理情報技術を利用したスマート農業ソリューション。農地へ行かずとも衛星画像やドローン画像を利用することで広大な農地全体を把握することが可能となる。
 全都道府県に導入実績があるほか、農林水産省スマート農業加速化実証事業をはじめとした自治体事業にも多数採択されている。

「いろは」の農地画像解析による生育診断

自治体向け農業管理DXソリューション「いろはMapper」

 自治体では、経営所得安定対策と中山間地域等直接支払いのため、現地調査に多くの人手や時間を要している。同ソリューションにより、立札、現地調査、確認結果の取りまとめをDX化することで作業を大幅に軽減する。

「いろはMapper」の画像解析による現地調査

ドローン測量・現地管理DXクラウド「くみき」

 ドローン測量データや現場確認用画像・動画データなどの管理に必要な機能が揃った現場データ管理サービス。現場のデータを地図上で見える化することで、データ管理を効率化し、また、遠隔地から現地の詳細を把握できる。建設業界、砕石業界、自治体などが導入している。

「くみき」のドローン測量
「くみき」による地図上での時系列現場データ管理

施設・設備情報管理システム「くみきスコープ」

 施設や設備に関する画像やテキスト、ファイルなどの情報を、ドローン画像と360度カメラ画像から屋内外全てを360度化したパノラマ上で視覚化。独自AIを用いた画像処理解析により「サビ検出」「腐食診断」など設備点検に必要となる検知・診断にも対応する。化学、電力、海運業界などが導入している。

「くみきスコープ」による屋内外360度デジタルツイン

投資家からのコメント

フェムトパートナーズ Principal 山田慎吾 氏

 前回のシリーズAラウンドに続き、追加投資いたしました。前回の資金調達及びMBO以降、経営陣を中心とした皆さんの力により、事業領域やサービスの拡充が更に進み、力強い成長が続いています。独自の画像解析・AIや、それらを用いたGIS技術を強みに、農業・測量・点検・防災等の各産業分野の課題を解決するプラットフォーム企業として、よりいっそう飛躍されることを期待しております。

ミライトロン General Partner & CEO 井上瑞樹 氏

 スカイマティクスは、高い技術力により農業・建設・測量・防災といった幅広い分野におけるフィジカルデータの取得・解析を可能にし、日本が直面する労働人口減少や生産性向上といった喫緊の社会課題を解決できる唯一無二の企業と認識しております。その高い成長性とポテンシャルの大きさが、我々ミライトロンの投資一号案件に相応しいと判断し、リード投資家として本ラウンドに参加いたしました。今後、日本を代表するデータ・プラットフォーマーとして活躍することを期待するとともに、その実現にむけて一緒に取り組んで参りたいと思います。

三井住友トラスト・インベストメント Director David Seu 氏

 弊社運営のジャパン・コインベストシリーズのファンドは成長の確度が高いベンチャーへの投資を目指しております。スカイマティクスの画像処理解析・空間演算処理の高度な技術力に基づいたプラットフォームが、リモートセンシングによる産業革新を身近に、だれでもどこでもいつでも使えるツールになっていくことを期待しております。

農林中央金庫 営業企画部 上席担当部長 秋山浩一 氏

 農林中央金庫は、このたび「F&A成長産業化出資枠」を通じて株式会社スカイマティクスに出資いたしました。大規模化が進む農業生産現場やそれを支援する行政の現場において「いろは」・「いろはMapper」といったスマート農業のサービスは労働人口の減少といった社会課題に対応し、農業分野における生産性向上に貢献するものと考えております。今回の出資を契機に、社会持続性や自然災害等への対応、食農バリューチェーンにおけるデジタル技術活用による効率化等について当社の強みと当金庫ネットワークを生かした連携を深めて課題解決に貢献して参ります。

 なお、今後、こうした食農関連の企業投資については従来農業法人への出資業務を行ってきたグループ会社であるアグリビジネス投資育成株式会社を通じて行い、生産者の皆様への投資育成事業とのシナジーを図りながら農林漁業、食品産業等の発展に取り組んで参ります。