2021年12月1日、DRONE FUNDは、ドイツのWingcopterに3号ファンド(正式名称:DRONE FUND 3号投資事業有限責任組合)からの出資を実行したことを発表した。

 Wingcopterは、高スピード低コストの輸送ソリューションを開発するため、2017年に設立。事業を通じて世界中の人々の生活の質を向上させることを企業理念としている。eVTOL(電動垂直離着陸)無人航空機システム(ドローン)の製造およびサービスを提供しており、現在は医療サプライチェーンを中心に事業を展開。中期的には荷物・工具・スペアパーツ・食品や食料品など幅広い配送を、長期的にはより長距離の大型貨物および人の輸送を行う予定である。

 自社開発の「ウィングコプター198」は、特許取得済みのティルトローター機構により、マルチコプターのように垂直に離着陸しながら、雨や風の中でも固定翼機のように長距離を効率的かつ迅速に飛行できることが強みとなっている。また、一人のオペレーターが複数機体を操縦できるシステム構築によってオペレーターコストを削減し、ドローン実装の低コスト化の実現を目指している。

 Wingcopterは CEOのTom Plümmer(トム・プルマ)氏を中心とした創業チームと、経験豊富なエグゼクティブチームの良いバランスで認証制度にも適切なアプローチをとっており、業界最先端の工場設備を有している。片道配送ではなくネットワーク型配送によるコストイメージを考慮したシステム設計により、顧客のニーズに合わせた付加価値のある配送を低コストで実現できる中長距離ドローン配送の中心的プレイヤーとなりうること、日本国内で何度も飛行している機体であり、Wingcopterの日本国内でのオペレーションにDRONE FUNDが寄与できることから、今回の投資を決定したという。

 またWingcopterは、ANAホールディングスと日本における新たな地域社会インフラとしてのドローン配送ネットワーク構築を目指し、固定翼型VTOL(垂直離着陸)ドローンを用いた医薬品および日用品等のドローン配送事業化に向けた業務提携を締結している。

 DRONE FUNDは「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現に向けて、産業用ドローン市場のすそ野の拡大、および産業領域の深化に貢献することのできる幅広いサービス、ソリューションへの投資を加速するとしている。

©︎Jonas Wresch

各社コメント

Wingcopter CEO トム・プルマ氏

 当社が日本市場への取り組みを強化している時期に今回の投資の機会に恵まれました。

 DRONE FUNDと今後連携することで、日本だけでなく世界のより多くのお客様にドローンによる配送サービスを提供できると確信しています。また、DRONE FUNDの約50件の投資先の中で、当社が唯一のeVTOLドローン企業であることをとても誇りに思っています。今回の投資は、Wingcopter 198が配送用ドローン技術の最先端を走っていることを証明するものだと思っております。

©︎Jonas Wresch

ANAホールディングス デジタルデザインラボ ドローンプロジェクトディレクター 信田光寿氏

 ANAドローンプロジェクトは、今まで目視外による運航を約400フライト、目視内やテストフライトによる運航を含めると約600フライト以上実施しており、離島山間部を中心にドローン物流の課題や需要の調査を進めてきました。

 機体選定において、飛行距離および速度でマルチコプター型よりも勝る固定翼型VTOLドローンを検討している中、複数の国々において実績が豊富で機体性能に優れているWingcopter社の機体を実証において同社と共に運航しました。19年10月、21年3月に離島地域である長崎県五島市で医薬品を配送、21年9月には、年間を通じて強風の日が多い北海道稚内市において、地方と都市部の物流連接を目的にドローンの空港離発着を実施するなど飛行を重ね、同社の機体が地域特性に即した長距離飛行の機体として今後も活用、事業促進を検討しています。

DRONE FUND 共同代表 千葉功太郎氏

 日本における空の物流網は2021年のレベル3フライトの解禁を境に、今まさに加速度的に発展してきていることを現場の近くで実感しており、その中でもWingcopter社は日本国内におけるeVTOL機体としての実績が豊富で、世界で最も信頼できる機体製造チーム及び運用ソリューションの揃ったチームの1社と捉えておりました。そのようなチームに出資できる機会を得られた事を、とても喜ばしく感じております。

 Wingcopter社のチームと共に、国内外におけるドローン物流の発展に貢献していきたい所存です。