2021年10月5日、VFRは、2021年9月末までにDRONE FUND 3号投資事業有限責任組合(以下 DRONE FUND)、ACSL1号有限責任事業組合(以下ACSL CVC)、加賀電子、KDDI Open Innovation Fund 3号、理経の5社を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施したことを発表した。
 これに伴い同社は経営体制を一部変更。新代表取締役社長に湯浅 浩一郎氏、社外取締役にはDRONE FUND代表の千葉 功太郎氏が就任し、「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)に向けて事業拡大に取り組む。

 VFRは、VAIOの子会社として2020年3月に設立。ドローン機体開発、ソリューション提供を行っている。設立より1年半、VAIOのPC事業における設計・製造技術や国内外のサプライチェーンのマネジメント能力等を活用して、産業用ドローンの開発製造を複数受託している。レベル4に向けて既存事業の成長を加速させるため、今回の資金調達実施に至った。

 ドローンの実質的な社会実装ともいえるレベル4の実現に向けて、法律・体制・環境整備が産官学で進められている。ドローンを運用する側としても体制作りや社会実装に向けた社会システム全体の設計を積極的に構築するため、VFRではパートナーとの業種を超えたオープンな共創を推進してきたという。今回の資金調達により、事業シナジーをさらに高めていくとしている。

 同社は現在、下記3つの事業を推進しており、ドローンの社会実装に向けて本格的に事業成長に取り組む。

1. ToA(オープンイノベーション)事業
  “どこでも、誰でも、いつでも” 飛ばせる国産ドローンの開発・製造から社会実装までを産官学連携によるオープンイノベーションで推進する。

2. ToB(B to B)事業
 B to Bビジネスに特化し、国産ドローンに不可欠なパーツ開発製造または海外から良い部品を調達することで、レベル4の実現を加速させる。

3. ToC(B to B to C)事業
 B to B to Cビジネスとして、主にドローンに関わる研修、教育、エンターテイメントにより“ハピネスフォワード”(幸せの先渡し)事業を推進する。具体的には、人々にテクノロジーを活用する楽しさや幸福感を体験してもらい、その価値を購入してもらう。

経営体制の変更

代表交代 (2021年8月25日付)
新任 代表取締役社長 湯浅 浩一郎
退任 代表取締役社長 留目 真伸
※留目氏はVFRのFounder / 取締役チェアマンに就任。

社外取締役の就任 (2021年9月27日付)
新任 社外取締役 千葉 功太郎

新任代表取締役・社外取締役 略歴

代表取締役社長 湯浅 浩一郎 (ゆあさ こういちろう)

 電子部品メーカー、化学製品メーカーなどを経て、2006年デル・ジャパン、2013年レノボ・ジャパンに入社。2016年同社新規事業であるVR/スマート製品(Google社との提携)事業立ち上げの責任者を務める傍ら、広島県に株式会社瀬戸内未来デザインを創業。2019年OYO Hotels Japanの中国地域の責任者を経て、2020年よりVFR株式会社 COO に就任。2021年8月より現職。

 VFRはVAIO株式会社の子会社として、「VAIOが作り上げてきたコンピューティングの世界を空(および海やその他有人では到達できない場所)に拡大してゆく」ことを目指し、2020年3月に設立され、以来、国内外のパートナーと連携し、レベル4の実現に向けて、安心・安全に「誰もがどこでも必要な時に」使えるドローンを開発・製造してまいりました。現在では、ハードウェアにとどまらず、VR(仮想空間)を活用したシミュレーターの開発や、ITハードウェアの商流を活用した販売網の構築も推進しています。

 製造業というと時代遅れのイメージがありますが、日本の近代または現代から2000年までの歴史を振り返れば、日本は製造業のあらゆる分野において知恵と努力で世界の頂点に立っています。国産ドローンはかつての造船、自動車産業同様に海外と比べて遅れをとっているのが現状ですが、先代の日本人も、海外の良いものは学び、そこから改良に改良を重ねて日本ならではの良いものを作り上げてきました。VFRは日本のあらゆる産業で培われた製造業のノウハウをドローンに応用し、「オープンイノベーション+PCで培ったプロジェクトマネージメント力」で、世界に誇れる日本のロボティクスメーカーとなれるよう引き続き努めてまいります。

代表取締役社長 湯浅 浩一郎

社外取締役 千葉 功太郎 (ちば こうたろう)

 慶應義塾大学環境情報学部卒業後、リクルートに入社。KLab取締役を経て、2009年コロプラに参画し、取締役副社長に就任。2012年東証マザーズIPO、2014年東証一部上場後、2016年7月退任。 現在はインターネット領域等のスタートアップ60社以上、VC40ファンド以上に投資するエンジェル投資家であり千葉道場コミュニティ主宰。ドローン・エアモビリティ前提社会を目指す分野特化型VC「DRONE FUND」や、「千葉道場ファンド」の代表を務める。2019年4月には、慶應義塾大学SFC特別招聘教授に就任。またホンダジェットの国内顧客第1号であり、自らも日米航空パイロットライセンス(自家用操縦士 Private Pilot License)を有する。

 2022年の政府目標として掲げられているレベル4解禁が目の前に迫っております。ドローンの安全性や信頼性に対する要求はグローバルでも上がっており、その中で確かな技術力を持つVFRが担う役割は大きいと思っております。DRONE FUNDは全方面からVFRを支援して、ドローンの社会実装を加速してまいりたいと思います。

社外取締役 千葉 功太郎

出資引受けの経緯

DRONE FUND
 VFRはグローバル価格競争が厳しい情報端末機器の開発製造をバックグラウンドとしており、QCD(Quality/Cost/Delivery)のバランスを取った量産化プロジェクトの知見を有していることから、ドローンの量産を担えるプレイヤーとなりうること、ドローン専業で量産化をしている企業は数少なく、VFRの成長の最大化にDRON FUNDが寄与できることから、今回の投資を決定した。

ACSL
 ACSLとVFRは2020年5月に協業を開始し、都市部での目視外飛行(Level4)を見据えた物流機体の共同開発やドローン用シミュレーター開発などに取り組んできた。この度、CVCからVFRへ出資することで、開発、製造、及び販売の連携を強化し、顧客のニーズに合わせたさまざまな製品やソリューションを両社で提供していくことで、産業用ドローンの社会実装を加速していく。

加賀電子
 加賀電子は、「すべてはお客様のために」の経営理念のもと、エレクトロニクスの総合商社として、電子デバイスの 企画・設計、部品調達、生産、販売など多様な局面で顧客にとって最適な解決策を提供している。創立50周年を迎えた2018年3月期より、総投資枠50億円のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設定、ユニークな技術・製品やビジネスモデルを構想・展開するベンチャー企業への少額出資を通じて新たなイノベーションを創出し、次代に向けた当社グループの持続的成長に資する新規事業創出につなげる仕込みを行っている。
 当社は、今般のVFRへの出資を通じて、これまで培ってきた部品調達力、製造技術力、販売力をもってVFRを事業面から支援し、社会インフラとなりつつあるドローン市場の拡大に寄与していくことを決定した。

KDDI
 ドローン業界においては、ドローン事業者が自社で機体やモジュールを量産体制化するのが難しいといった課題がありますが、その製造工程をVFRが集約することで、ドローン機体製造のトータルコストの削減や品質向上の実現が可能となる。このような背景のもと、今後ドローンがあらゆる場面で活躍できる社会の実現に向け、スマートドローン 対応機体の品質向上や、機体開発における通信モジュールの組み込み支援、国内におけるドローン保守運用体制の構築などを目的として、業務提携を行った。

理経
 弊社は、「最先端」技術を用いた「尖った」製品を市場に提供するという理念のもと、2019年5月に発表致しました 2020 年3月期~2022 年3月期の中期経営計画を推進している。この中で、現行三事業の強靭化及び安定化、市場変化に合わせた柔軟な事業領域や組織の見直しを行うとともに、新たな事業領域の確立や相乗効果が見込まれる他社とのビジネス連携・資本提携・M&A等を推進していく方針のもと、収益のさらなる拡大を目指していく。
 VFRは「有人地帯における補助者なし目視外飛行」でのドローンの飛行を想定した開発を続けており、こうしたドローン技術は、防災など多岐にわたる応用が可能であり、理経が顧客に提供するソリューションの一つとしても強みとなると捉えている。また、理経のVRを活用したシミュレーション技術は自動運転車開発において既に実績があり、国産ドローン開発においても活用できる面が大きいと考えており、本出資を機会にさらなる連携を深め、今後のビジネス拡大を企図し、このたびの第三者割当増資引受に至った。

VAIOのコメント

VAIO 代表取締役 執行役員社長 山野 正樹氏

 VAIOの子会社として設立したVFRが、この度の出資受け入れを経て、また新経営体制で成長への道のりを進めることを大変嬉しく思います。今後、新株主とのシナジーを高め、ドローンの可能性を拡張し、発展させていくことを期待します。

出資元企業のコメント

DRONE FUND 創業者/代表パートナー 千葉 功太郎氏・共同創業者/創業パートナー 大前 創希氏

 VFRはVAIOで培ってきた確かな技術力と事業推進力を兼ね備えたチームで、今回リード投資家として参画させていただきました。VFRの成長がドローンの社会実装に直結すると考えており、他の株主とも連携して、支援してまいります。

ACSL 代表取締役社長 兼 COO 鷲谷 聡之氏

 ACSLは国産の産業用ドローンメーカーであり、VFRとはLevel 4を見据えた物流機体の共同開発やドローン用シミュレーター開発などに取り組んでまいりました。産業用ドローンがより活用されるためには、技術・製品の継続的な進化が不可欠であり、顧客により高性能かつ高品質なドローンを届ける必要があります。この度、CVCからVFRへ出資することで開発、製造、及び販売の連携を強化し、顧客のニーズに合わせた様々な製品やソリューションを両社で提供していくことで、産業用ドローンの社会実装を加速してまいります。

加賀電子 執行役員 経営企画室長 糀谷 仁志氏

 今後のレベル4開放など社会のインフラとなるドローン市場において、国産ドローンの製造が行えるVFRの成長に期待しています。当社の持つ部品調達力、製造技術力、販売力をもってその成長を支援してまいります。

KDDI 事業創造本部 ビジネス開発部 部長 齊藤俊一氏

 当社は、本出資及び提携を通じて、VFRと共に、レベル4に向けたモバイル通信を活用したドローンの社会実装を推進し、様々な分野におけるお客様一人一人の想いが叶えられる社会を実現してまいります。

理経 代表取締役社長 猪坂 哲氏

 この度の出資は、理経の注力事業分野への施策一環として、VR技術を活用した次世代ドローン開発などのシミュレーション分野での連携と、理経が知見を有する防災領域におけるドローン展開の協業を期待しています。