2019年12月13日、KDDI、東海大学、エア・カメラ、熊本県阿蘇郡南阿蘇村(以下 南阿蘇村)は、ドローンエンジニアチームAgrid協力のもと、2019年12月6日から12月13日の間、道の駅 あそ望の郷くぎのにて、第5世代移動通信システム「5G」(以下 5G)を活用して、2機のドローンに搭載した360度カメラの映像をVRゴーグルにリアルタイムに伝送し、南阿蘇地域の観光スポットをドローン視点で自由に飛行体験する新しい観光サービスの実証試験を実施したことを発表した。

 また同試験では、ドローンに搭載した4Kカメラの高精細映像を5Gで伝送し、その映像を見ながらリアルタイムにドローンを制御する実験を実施した。

 なお、同試験は総務省の5G総合実証試験(※1)の一環として実施された。

試験の模様
360度VR映像

 南阿蘇地域は、阿蘇山や絶滅危惧種であるハナシノブなどの群生地、熊本地震の被害を受けた東海大学校舎をはじめとする震災遺構など、貴重な観光資源を多数有している。

 一方で、火口付近のガス濃度や火山活動の状況によってしばしば入山が規制される阿蘇山や崩落の危険などがある震災遺構は、観光客が容易に立ち入ることができず、南阿蘇の魅力を十分に伝えることができないといった課題がある。

 同試験では、道の駅 あそ望の郷くぎのに5Gエリアを構築し、2機のドローンに搭載した360度カメラで撮影した映像を、5Gを活用してVRゴーグルに伝送し、ドローンの視点で南阿蘇の景色を眺望する検証を行った。さらに、事前に収録した南阿蘇のさまざまな観光スポットの映像を組み合わせ、人が立ち入れないエリアも含めた南阿蘇の魅力をVRで視聴する新しい観光体験の検証を行った。複数の5Gドローンから360度VR映像のライブ伝送が可能になることで、遠隔地に対しても南阿蘇地域の魅力を発信するなど、観光誘客への活用が期待される。

 加えて、5Gと超低遅延4K伝送システム(※2)を活用し、ドローンに搭載した4Kカメラから撮影した4K高精細映像を、地上に設置したモニターに低遅延で伝送し、その映像を見ながらリアルタイムにドローンを制御できることを確認した。低遅延の4K高精細映像を見ながら機体の制御が可能となることで、空を自由に飛び回る飛行体験による地域の観光振興への活用に加え、災害現場の迅速な状況把握など、防災・減災への貢献が期待される。

 今後も各者は、5G/IoTをはじめとする最先端のテクノロジーを活用することで、地域産業の発展に貢献していきたい、としている。

試験の概要

1. 実施概要

 2019年12月6日から12月13日の間、熊本県阿蘇郡南阿蘇村の道の駅 あそ望の郷くぎのにおいて、以下の通り実施した。

(1)2機の5Gドローンを活用した360度のライブ映像伝送によるVR観光

 道の駅上空のドローン飛行区域を5Gエリア化し、ドローンに搭載した360度カメラで撮影した阿蘇山の全景を、VRゴーグルを装着した体験者にリアルタイムに配信。阿蘇の景色を眺望するドローン視点での観光体験を検証。また、ドローン視点のライブ映像をVR観光ポータルとして活用し、事前に撮影した南阿蘇の様々な観光地や震災遺構のVR映像を体験者が自由に切り替えて楽しめるVR阿蘇観光体験を検証。

南阿蘇・震災遺構VR観光
VR観光ポータル イメージ

(2)4K高精細映像を活用した5Gドローンのリアルタイム制御

 道の駅上空の5Gエリアを飛行するドローンに、4Kカメラと低遅延コーデックを搭載し、ドローン前方の4K高精細映像を低遅延で地上に伝送。4K高精細映像を地上で見ながら、繊細なドローン制御が可能となることを確認。

4K高精細映像を用いた5Gドローンの制御

2. 各者の役割

KDDI :同試験の実施・推進、5Gエリアの設計・構築、および映像伝送システムの構築
東海大学 :同試験の実施アイディア提案
エア・カメラ :観光スポットのVR映像制作、360度カメラ搭載ドローンの操縦、VR観光システム・5Gドローンの制御システムの提案・構築
南阿蘇村 :試験実施場所の提供
Agrid :4Kカメラ搭載ドローンの操縦、VR観光システム・5Gドローンの制御システムの構築

※1 電波を有効に利用できる実現性の高い技術について技術的検討を行い、その技術の早期導入を図ることを目的として、総務省が「技術試験事務」を実施している。詳細は下記を参照。
周波数ひっ迫対策のための技術試験事務の実施(総務省)
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/purpose/tectest/

※2 KDDI総合研究所が開発したシステム。映像を構成する画面を適切なサイズで細分化。この分割画面単位で発生ビット数の平滑化を行うことにより、エンコーダ・デコーダ双方のバッファサイズを最小化。さらに、5G回線の特性を分析した上で、伝送遅延に影響を及ぼすFEC(誤り訂正符号)の適用単位を必要最低限のサイズに抑えることで超低遅延を実現。