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 人口減少という社会課題の解決と基幹産業の発展を、国家戦略として束ねる日本の政策、そして巨額の資本。Humanoids Summit Tokyo 2026では、ヒューマノイドを「社会にどう実装するか」という問いが繰り返し語られた。大阪大学の石黒浩氏が共生社会の像を描き、経済産業省の奥谷俊一氏が日本のAIロボティクス戦略を示し、Boston Dynamicsのブレンダン・シュルマン氏が、その日本を先進例と仰ぐ米国の動きを説く。投資家たちは資本の向かう先を論じた。人・国家・資本の三層で、社会実装の現在地を追った。

 Humanoids Summit Tokyo 2026は、2026年5月28日・29日の2日間、東京・高輪ゲートウェイ・コンベンションセンターで開催された。主催者によれば、30カ国以上から2,000名を超える参加者が集まり、ヒューマノイド、AI、ロボティクス、投資、研究、政策の各分野でおよそ300社が名を連ねた。創業者や研究者、投資家、企業のリーダー、政策立案者が一堂に会するなか、本稿では社会・政策の文脈を象徴する講演を束ねて伝える。

なぜ社会はロボットを必要とするのか――石黒浩氏が描く「人とアバターの共生社会」

 初日の基調講演に登壇したのは、大阪大学栄誉教授で、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)石黒浩特別研究所の客員所長を務める石黒浩氏。「Humanoid Avatars and Building Societies(ヒューマノイド・アバターと社会の構築)」と題し、ロボットを社会基盤として実装する構想を語った。

写真:壇上で話をする石黒氏
大阪大学栄誉教授、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)石黒浩特別研究所の客員所長 石黒浩氏

 石黒氏はまず、アバターの定義を更新した。「アバターとは、AIまたは人間のオペレーターのいずれかによって操作される、ロボットまたはCGキャラクターである」。重要なのは、それが「人間の個人的・社会的な意図を反映するように設計されている」点だという。長年のHRI(人間とロボットのインタラクション)研究で最大の難所だった「会話」も、大規模言語モデル(LLM)の登場で人間らしさを獲得しつつあると説明した。

 壇上では、自身を模したアンドロイド(アバター)が披露された。石黒氏の著書やメディア取材を学習し、人格を実装したものだ。「これはある意味、まさに私のコピーだ」と同氏。別の場所で対話して自らの経験を積む「分身」であり、ロボットは人間を映す「鏡」にもなる。石黒氏にとってヒューマノイドは、意識や自己という人間の本質を探るテストベッドでもある。

写真:壇上の石黒氏とアンドロイド
自身のアンドロイドとともに登壇する石黒浩氏

 研究を社会実装へ向かわせる動機は、日本特有の事情にある。「今後50年以内に、日本の人口は減少し、3割の人々を失う」。移民の受け入れも容易ではないが、「私たちの文化は、ロボットやAIを受け入れることにかなり前向きだ」。だからこそ日本でヒューマノイド市場を育て、世界に示せると石黒氏は説く。この未来像を同氏は「人間とアバターの共生社会」と呼ぶ。

 実現の柱は学術とビジネスだ。内閣府のムーンショット型研究開発制度では、アバターで人々の能力を拡張し、2050年までに誰もが場所や身体の制約を超えて活動できる社会をめざす。すでに100を超えるフィールド実験を重ねた。応用は、工場の自律労働ロボットから危険作業、医師による遠隔診断、高齢者・障害者支援、時差を活かした国際的な労働力ネットワークまで広い。

 石黒氏は「アバターは私たちに多様性と包摂(ダイバーシティ&インクルージョン)をもたらします。アバターを使えば、互いを認め合い、つながり合い、ともに生きられる社会を実現できます。ですから私は、こうした人間とアバターの共生社会を未来に実現したいのです」と述べた。