弊社主催の「ドローンジャーナルコンファレンス2025秋」が9月に開催され、建設・インフラ・製造業の関係者が多数参加した。エアロセンスからは代表取締役社長の佐部浩太郎氏が登壇し、VTOL機「エアロボウイング」を活用したインフラ点検の最新事例と今後の展望を紹介した。
VTOL機「エアロボウイング」がもたらす高効率な点検運用
VTOL機のエアロボウイングは、マルチコプターと同様に垂直離着陸とホバリングを可能とし、加えて固定翼の特長である高速巡航にも対応したドローンだ。これにより、通常のマルチコプターよりも長時間の飛行ができ、広い範囲で高効率な運用を可能とする。
2020年に販売を開始したエアロボウイング「AS-VT01K」は、固定翼機として初めて第二種型式認証を取得し、レベル3.5飛行の実施実績も持つ。通信はLTEと2.4GHz帯に対応し、安定した長距離運用を可能にする工夫が施されている。また安全性を重視し、飛行中にトラブルが発生した場合には、飛行機モードからマルチコプターモードへ切り替えて減速・安全飛行へ移行するフェールセーフ機能を搭載。「『飛行機はその場で止まれないですよね?』とよく言われますが、巡航速度70km/hでもマルチコプターモードに変更してブレーキをかけるように飛ぶことができます」と佐部氏は強調した。
今年6月には、モデルチェンジを施した「AS-VT02K」を発表。主翼部分とローター部分を分割構造とし、よりコンパクトに収納可能な設計に変更したことに加え、航続距離の延伸や防水・防塵性の強化が図られた。同機も第二種型式認証の取得を目指している。
課題は“安全・人材不足・緊急時対応”──広域点検の実例が示すVTOLの優位性
佐部氏は、インフラ点検分野でドローンに期待されている役割として「安全面」「人材不足の解消」「緊急時対応」の3点を挙げた。目視外飛行や自動航行の普及により、すでに安全性や効率性は高まりつつあるものの、「1機を1人以上で運用する現状では、費用対効果が十分とはいえない」と指摘。より広い範囲を少人数で確認できる運用が求められ、その解決策としてVTOL型ドローンの価値が高まっているとした。
その実例として、六甲山での砂防設備点検の事例が紹介された。山の傾斜に沿って蛇行する経路で飛行させ、31kmに及ぶ斜面全体の地形データを取得した。飛行時間は36分で、計3235枚の写真を撮影。砂防設備の個別確認や地形変化の把握が可能になり、作業はわずか2名1チームで完了したという。
砂防設備点検のほか、線路点検の実例としてJR東日本・第一建設工業との共同によるJR磐越西線の点検も取り上げた。山間部75kmの区間を飛行してデータを取得し、土木復旧計画に活用できることが確認された。
運用者育成・遠隔運用の仕組みづくりへ——広がる活用領域
エアロボウイングの活用領域が広がっている一方で、運用者の不足が課題として残る。エアロセンスでは講習プログラムの強化や講習団体との連携により、ライセンス取得の機会を広げ、運用者の裾野拡大を進めている。さらに、遠隔地での運用に向けた取り組みも進行中だ。ユーザー側で機体の配置・確認を行い、オペレーターは現地に赴かずに飛行させるといった運用モデルの導入を検討しているという。
インフラ点検は、長時間飛行で広範囲のデータを一度に取得できることが効率向上の鍵になる。今回の講演は、VTOL型ドローンがその要請に応えうる有力な機体であることを示す内容となった。
