ドローンに関連する建設業やインフラ業、製造業向けに弊社主催の「ドローンジャーナルコンファレンス2025秋」が9月に開催された。講演セッションでは、アメリカ製ドローン「Skydio」をいち早く点検現場に導入したジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)のインフラDX担当課長の岡田氏が登壇し、Skydioシリーズの特徴やこれまでの活用実績、そして今後の展望について語った。

Skydioを軸に広がる事業と点検実績

 JIWはNTT西日本の子会社として発足し、橋梁に通信設備を通す橋梁添架管路の点検にドローンを活用してきた。現在では東京電力や北陸電力をはじめとする電力会社、ガス関連企業などからも出資を受け、事業領域を着実に広げている。

 その事業は、点検受託、Skydioの機体やドックの販売・レンタル、導入効果を検証するPoCの提案と講習・Skydio製品の運用コンサルティング、そして水上ドローンなどを含む受託開発の4つが主軸だ。

写真:壇上で話をする岡田氏
Skydioシリーズの積極的な活用を進めてきたと説明する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク インフラDX 担当課長の岡田正義氏。

 設立した2019年以降、同社が担ってきた点検件数は6年間で6200件以上にのぼる。橋梁点検は約1200件、橋梁添架管路は2800件を超え、いずれもSkydioを使用した。従来は手動操縦による点検が中心だったが、JIWでは今後、Skydioドックと組み合わせた自動航行による点検を積極的に導入する方針だ。ドックから自動離陸した機体がデータを取得し、帰還後にクラウドへアップロードする一連の流れを整備するだけでなく、そのデータを自社サーバーに移してAI解析する仕組みも提案している。サビの自動検出やプラント内メーターの読み取りなどに活用することを想定し、実証実験も進められている。

写真:展示された「Skydio Dock Lite」、その上に載せられた「Skydio 2+」
ブースには、Skydioのドックのなかでも手軽に持ち運びや設置ができる「Skydio Dock Lite」が展示された。機体はSkydio 2+。

GPS不要の飛行性能がもたらす価値とSkydio X10の進化

 JIWがSkydioシリーズを採用した理由は、GPSに依存しないビジュアルSLAMによる安定飛行性能にある。橋梁の裏側や構造物内部など、GPSが入りにくい環境こそ点検の現場であり、Skydioの特性はまさに条件に適していた。

 2024年10月に登場した最新機種「Skydio X10」は、非GPS環境に加え、従来モデルではできなかった暗闇での安定飛行も備えている。これによってこれまで以上に適用範囲が広がった。点検能力としては、機体に搭載されたライトで照射しながら、0.1mm幅のクラックスケールまで読み取るカメラ性能を持ち、500m先のテレメトリ情報が取得できるため、遠隔点検にも活用しやすい。岡田氏は、「下水管やトンネルなど暗所を伴う点検においてX10の価値は非常に大きい」と述べた。

 さらにSkydio X10を用いた外壁点検の検証も紹介された。ドローン点検では、プロペラの風がカメラ周辺の温度を下げる「シェーディング現象」が課題となっていたが、JAIRA(日本赤外線劣化診断技術普及協会)と共同で行った検証では、Skydio X10に標準搭載されたTeledyne FLIR製赤外線カメラの性能を確認したところ、この現象が発生しないことがわかった。取得した画像は季節による温度差の影響を受けず、r-jpeg形式で保存されるため後処理にも対応しやすい。Skydio X10が外壁点検に向いていることが実測データから裏付けられたかたちだ。

導入支援の強化と期待されるSkydio活用の広がり

 JIWではSkydio X10の導入を検討する事業者に対し、現場の条件や要望を丁寧にヒアリングし、最適な機体・ドック構成を提案している。導入時に利用できる補助金の案内も行い、初期導入のハードルを下げるための支援に力を入れている。また注目のSkydioドックについてもPoC支援を実施しており、自動航行を取り入れた遠隔点検など、運用の高度化に向けた取り組みを各社とともに進めている。

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