国産ドローンメーカーのエアロセンスは、10月1日から3日の期間、東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2025」において、新型VTOL(垂直離着陸)型ドローン「エアロボウイング AS-VT02K」を展示した。
VTOL型の型式認証機の進化版、よりコンパクトで長距離対応へ
同社は2024年6月にVTOL型ドローンとして国内初の第二種型式認証を取得した。この「AS-VT01K」をベースに、機能と性能を向上したのが「AS-VT02K」である。
機体の基本設計は維持しながら、ペイロードは1kgから1.6kgに増加し、最大航続距離は50kmから70kmへと向上。搬送時には、機体の主要部と主翼を分解できる構造であったが、それに加えてローター部分も分割する設計に見直し、よりコンパクトなケースに収納可能となり、バンなどの車両への積載・輸送が容易になった。
AS-VT01Kに引き続き、静止画カメラ、赤外線カメラ、LiDARなど用途に応じて機器を搭載可能で多目的な災害対応・測量・監視業務に対応する汎用性を持つ。エアロセンスでは本機についても、01K同様に第二種型式認証の取得を目指している。
能登半島地震での実績が信頼を裏付け
AS-VT01Kは、2024年1月の能登半島地震の際に現場投入され、長距離飛行性能を生かして被災地の道路状況を空から確認。崩落箇所の特定や孤立集落への救援ルート確保に貢献するなど、実災害現場での運用実績を残した。この経験が、新型機のさらなる開発と防災用途への展開を後押ししている。
同社によると、南海トラフ地震の被害想定が見直されたことを契機に、全国の自治体から「防災ドローンの導入・活用」に関する問い合わせが増加しているという。すでに兵庫県など複数の自治体が同社製ドローンを採用しており、地域防災力の強化を図っている。
エアロセンスの担当者は、「以前はドローンを日常的に運用している企業と連携する形が多かったが、近年は自治体が自前で機体を保有し、操縦者を育成する体制にシフトしてきています。現在、弊社では月に約10人のパイロットを育成しており、いざという時にVTOL機を即応運用できるよう支援体制を整えています」と体制の変化について説明した。
エアロセンスは、固定翼とマルチローターの利点を兼ね備えたVTOLドローンを主力に、防災・測量・インフラ点検・物流といった分野での社会実装を進めている。国産機としては、AS-VT02Kはその中心的機体として位置付けられており、今後の「自治体防災×国産VTOL」モデルの普及拡大に向けて注目を集めている。
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