無人機を含む航空機の開発や認証のコンサルティング事業を展開するAeroVXRは、Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2024 in 関西において、自社のコンサルティングサービスやテストパイロットスクールの紹介を行った。
起業のきっかけはMRJ
同社CEOの安村佳之氏は、航空自衛隊および三菱重工業「三菱リージョナルジェット(MRJ)」でのテストパイロットとしての経験の持ち主だ。MRJは2008年に事業化が決定し、日本初のジェット旅客機として注目を集めたが、2023年に撤退が発表された。日本が長らく民間機を作ってこなかったためにノウハウがなかったことが、撤退を余儀なくされた大きな要因となった。
MRJの開発時には、とりわけ型式認証の厚い壁が立ちはだかった。安村氏は「どうやって型式認証を取ればいいのかも、行政とのコミュニケーションの進め方もわからなかった」と振り返る。
安村氏が起業に至ったのは、このときの悔しさや未練が原点だ。「MRJで得た苦い教訓を今後に生かし、日本に貢献しなければいけない」との思いで、“認証する側”の国土交通省航空局出身の中田博精氏とともにAeroVXRを立ち上げた。
同社では、無人機を含む航空機全般の調査、研究、開発全般に対するサポートを実施する。せっかく航空機を作って申請しても、却下されてしまえば手戻りのコストが高くなる。そこで同社のコンサルティングを受けることで、型式認証ならびにローンチまでの期間が短くなり、結果的にコストを抑えられることが期待できるという。
2024年末までに、ドローンメーカー、航空機メーカー、航空装備品メーカーら計42社に対してコンサルティングを実施している。
アジア初のテストパイロットスクールを開校
さらに同社は2023年1月、アジア初の民間テストパイロットスクール「Japan Test Pilot School(JTPS)」を開校。ここにも、MRJ開発時に痛感した「航空機開発にかかわる人材不足の問題を解決したい」との思いがあった。
MRJ開発では、開発担当者の6~7割を外国人が占めていた。日本に旅客機を作ることのできる人材が不足していたからだ。それは、テストパイロットについても同じことが言えた。多様な機体を乗りこなせるパイロットが不足していることに、安村氏は危機感を募らせていた。
「ドローンも含め、新しい機体を作るということは、まったく未知の乗り物に触れるということ。だからこそ、設計の段階で感覚的に『ここがおかしい』『これは乗りづらい』と指摘することができるテストパイロットを育てることが必要なのです」(安村氏)
その思いで開校したテストスクールでは、有人機、無人機を問わないテストパイロットの育成を行う。入学者は航空会社や装備品開発企業の社員らで、2024年11月末までに28人が履修している。決められた入学時期などはなく、一人ひとりに合わせたスケジュールを組む形だ。
ドローンのコースとしては、耐久性と信頼性を実証試験で証明するために必要な知識と技術を学ぶ「D&R(Durability & Reliability)コース」を用意。有人航空機と異なり、無人航空機の場合、飛行試験を行う操縦者の要件が定まっているわけではない。そこでこのコースでは安全で効率的に飛行試験を行う技術、具体的には、航空関連知識や飛行試験法、実機実習などを40時間かけて学ぶ。
有人機では名古屋空港や神戸空港で飛行を実施するが、ドローンでは本社のある岐阜県内にあるテストフィールドを活用する。「空飛ぶ乗り物が身近となる未来を創る」チャレンジは、緒に就いたばかりだ。
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