JUIDA(日本UAS産業振興協議会)では、ドローンの運航を担う操縦士(パイロット)や安全運航管理者を養成するドローンスクールの認定制度を2015年10月から実施している。2024年10月現在、認定スクールは全国に234校あり、日本におけるドローンビジネスを担う人材を生み出し続けている。そんな認定スクールが一堂に会するイベント「JUIDA認定スクールフェスタ2024」が2024年11月29日、東京都文京区の東京大学山上会館で行われた。

災害対応でドローンの有用性を示した2024年

写真:登壇する鈴木理事長
日本UAS産業振興協議会 鈴木真二 理事長。
写真:スライド画像、話をする鈴木理事長
2024年ドローン社会貢献元年のスライドを前に発表する鈴木理事長。

 イベントではまず、鈴木真二理事長が登壇した。JUIDAでは毎年スローガンを発表している。近年でいえば2022年は「ドローン社会実装元年」、2023年は「『レベル4』実現元年」といったものだったが、元日に発生した能登半島地震を受けて発表された2024年のスローガンは「ドローン社会貢献元年」だった。鈴木理事長は同地震でのJUIDAの活動を振り返り「26社の協力企業と災害復旧支援活動を行いました。各スクールでパイロットの養成に取り組んでいただいているからこそ、このように活動できたと認識しています」と感謝の意を表明したうえで「JUIDAでは今後も国や自治体との連携、民間におけるドローン防災協力体制の立ち上げ、防災に関するドローン教育に取り組んでいきたい」と今後の方針を示した。

写真:登壇する熊田事務局長
日本UAS産業振興協議会 熊田知之 事務局長。

 熊田知之JUIDA事務局長はJUIDAの2024年における8つの重点施策について発表。そのうちライセンス事業では「ドローン防災スペシャリスト教育」を取り上げた。自治体の防災担当、消防団員、警察官らだけでなく、これまでドローンの操縦経験がない人でも災害時におけるドローンの活用方法について理解できる仕組みにすると解説した。

 本イベントには経済産業省、国土交通省からもドローン担当者が出席した。経済産業省から出席した滝澤慶典次世代空モビリティ政策室長は北海道で開催された第3回ドローンサミットにおいて、寒冷地での利用や災害対応をテーマにしたデモが行われたことを報告。自治体での利活用事例を全国に展開したいと所感を述べた。

国家資格を取り扱うドローンスクールの不備・不正が課題に

写真:登壇する齋藤課長
国土交通省 無人航空機安全課長 齋藤賢一氏。

 国土交通省からは齋藤賢一無人航空機安全課長が出席し、スクール運営上の課題として実地修了審査員の資格不備や採点基準の不徹底など、教育の質に関する課題を挙げ、今後はスクール全体で教育の質向上に努める必要があると指摘した。

写真:登壇する田口部長
日本UAS産業振興協議会 田口直樹 事業推進部担当部長。

 田口直樹JUIDA事業推進部担当部長も実地修了審査に関する注意点を紹介。「実地修了審査におけるドローンのホバリングのカウントは実地修了審査員が実施する」「机上試験における試験問題は指定試験機関が提供するものを使用する」「係留装置を使用する場合も、ドローンの挙動が使用しない場合と同様になるようにする」といったことが徹底されず、審査がおろそかになっていると述べ、適切な実地修了審査の実施を呼びかけた。

SKY FRIENDS ACADEMY がJUIDAスクールアワーズ2024ゴールド賞を受賞

 イベントは後半に入り、認定スクールの1年の活動を称える表彰式へ。栄えあるJUIDAスクールアワーズ2024ゴールドを受賞したのはSKY FRIENDS ACADEMY(北海道)。母体となった企業は建機などのレンタルを手掛けており、スクール事業のかたわら点検や測量といった業務も行っているという。トロフィーを受け取った同スクールの北本勉氏は「JUIDAに登録して2年で受賞でき、励みになります」と感想を語った。わずかな期間で最高賞の受賞に至った同スクールの運営にかける積極的な姿勢は、ほかのスクールの参考になるはずだ。

 JUIDAのカリキュラムと合わせてドローンの知識や技能向上、安全教育のためにスクール独自で行っている取り組みを表彰する理事長賞には、2パイロット方式で農林資材の運搬や測量を行ったFALCON DRONE SCHOOL(福岡県)が受賞。また、受賞には至らなかったが、徳島県で消防団を新規設立したOcean One Drone Schoolや、YouTubeを活用したスクールのプロモーションを積極的に行うドローンテクノポート神戸&ドローンテクノポート熊谷も実績が評価され壇上で発表の機会があった。このほか、JUIDA優良登録講習機関として認定された14法人、開校1周年を迎えた23校が表彰された。

写真:壇上の鈴木理事長と、トロフィーを手にした北本氏
JUIDAスクールアワーズ2024ゴールドに輝いたSKY FRIENDS ACADEMYを表彰。
写真:壇上の鈴木理事長と、トロフィーを手にした浦田氏
理事長賞を受賞したFALCON DRONE SCHOOLを表彰。

 国家資格制度が開始され、民間資格取得を中心としてきたJUIDAの活動も国家資格取得にシフトしつつあるようだ。だが、約10年にわたってスクール事業を手掛けてきた実績や指導方法は優良なスクールと、腕利きのパイロットの輩出に貢献しているのは確か。今後もJUIDA認定スクールはドローン業界の人材育成に欠かせない存在となるだろう。

写真:JUIDA役員との集合写真
JUIDAスクールアワーズ2024を受賞した各スクール(後列)
写真:JUIDA役員との集合写真
理事長賞にノミネートされた各スクール(後列)
写真:JUIDA役員との集合写真
JUIDA優良登録講習機関(後列)
写真:JUIDA役員との集合写真
開校1周年を迎えたスクール(後列)