おもに関西電力の発電所を中心に、幅広い産業分野のプラント設備などの保守を行っている関電プラントは、同社の取り組みのひとつとして、風力発電設備のブレードのダウンコンダクター(引き下げ導体)の導通試験を行うドローンを展示していた。

ドローンによる風力発電設備の導通試験で安全性と効率性の向上を目指す

 関電プラントは関西電力の関係会社として、関電の火力・原子力発電設備の保守を担っている。火力発電設備では、関電各発電所のタービンやボイラー、電気関係設備の点検工事を行っているほか、独立系発電事業者のタービンや発電機、ボイラーなどの点検や修繕も行う。また、こうした点検作業を効率化させるために、配管の内外面に磁力で吸着して自走しながら目視点検ができる自走式目視検査ロボット「Mクローラー」を独自に開発し、点検作業で活用している。

 そんな点検作業のための新しい技術のひとつとして、同社では近年、ドローンの活用も進めている。社内にドローンを扱う部署を設け、ボイラーや煙突といった設備で、ドローンを使った点検を実施。例えば、関西電力舞鶴火力発電所には、地上高200mに達する煙突があるが、関電プラントではこの煙突の内部をFlyability社のELIOSを使って点検しているという。

 また、近年はバイオマスや風力といった再生可能エネルギーを使った発電設備のメンテナンスも手掛ける。そんな取り組みの一つとして、同社は風車ブレード点検ドローンの開発に携わっている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業」のひとつである、「洋上風力発電の低コスト化/洋上風力運転保守高度化事業(フェーズ1)」プロジェクトに関電プラントも参画。同プロジェクトでは「浮体式風力発電設備外観点検用ドローンの開発」「ブレード打音検査用ドローンの開発」「ダウンコンダクター導通試験用ドローンの開発」という3つのテーマがあるが、同社のブースでは3つめのテーマである「ダウンコンダクター導通試験用ドローン」を展示していた。

AIの自動制御で風車ブレードの点検を実現

写真:ダウンコンダクター導通試験用ドローンの外観。片側のアームは折りたたまれている。
関電プラントのブースに展示されていた「ダウンコンダクター導通試験用ドローン」。

 風力発電設備のタービン(風車)のブレードには、雷が落ちることが多い。そのため、避雷した際に雷の電気エネルギーを大地に流すためのダウンコンダクター(引き下げ導体)を内蔵している。しかし、避雷によってこのダウンコンダクターが断線することもあり、ブレードの点検項目のひとつとして、ダウンコンダクターの導通試験がある。一般的には点検者がロープワークなどでブレードにのぼり、先端の金属レセプター(受雷部)と大地の導通を確認する。関電プラントが展示していたドローンは、この作業をドローンが半自動で行うというものだ。

 このドローンはヘキサコプターをベースに、導通試験用のエンドエフェクター(接点器具部)を搭載している。ブレードの先端に接近したドローンは、AIによる画像認識技術によって、自動でブレード先端部のレセプターに、機体に搭載したエンドエフェクターを接触させ、導通を確認する。

 「風車によってはブレードの高さが百数十メートルに及ぶものもあり、その先端に人の操縦でエンドエフェクターを接触させるのは困難」(説明員)だといい、「AIによる自律制御だからこそのなせる業」(説明員)だという。こうしたドローンのエンドエフェクターをブレード先端に接触させてダウンコンダクターの導通を検査する技術は他にも開発されているが、同社のドローンは「ほかの閉ループ回路で点検するものは、ドローンと地上の間にケーブルがあり、風の影響を受けやすい。当社のものは独自の技術でこのケーブルを廃しているのが特徴」(説明員)だといい、ドローン側の回路を大地にアースすることが難しい、洋上風力発電設備の点検を見据えたものとなっている。

写真:ドローンとその前方に伸びた器具
機体から大きく前に伸びたエンドエフェクター(接点器具部)。
写真:エンドエフェクターの先端
エンドエフェクターの先端にある接点をブレード先端のレセプターに接触させる。接点の付け根にあるカメラの映像から、AIがドローンを制御・誘導する。

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