1988年以来、小型無人ヘリコプターの自律制御について研究を進めてきた千葉大学の野波健蔵名誉教授。2013年に自律制御システム研究所(現:ACSL)を創業した後、2019年に先端ロボティクス財団を設立し、研究開発を継続してきた。その知見を社会実装につなげるべく、研究開発・設計、製造などを行う会社として2022年に設立されたのがAutonomyホールディングスだ。

最新の「Surveyor-Ⅳ」が可能にする高精度点検と測量

写真:Autonomyの展示ブース。

 ブースには最新の研究成果を反映し開発された機体「Surveyor」シリーズが展示された。その中でも大きく取り上げられていたのが「Surveyor-Ⅳ」である。最大の特徴は富士フイルム製デジタルカメラで1億200万画素のラージフォーマットセンサーを持つ「GFX100S Ⅱ」が搭載できること。このカメラを活用すれば、0.1mmのクラックさえもはっきりと判別できる。また高画素化により少々暗い画像になっても、明るさを持ち上げられるのも大きな利点だ。

写真:展示ブースに吊るすように展示されたSurveyor-Ⅳ。
写真:「高精度カメラによるひび割れ(クラック)の撮影テスト」の説明パネル。
Surveyor-Ⅳ。ペイロードとして搭載されているのが、GFX100S Ⅱだ。機体のそばには撮影テストの様子がパネル展示され、実際のクラックがくっきりと撮影されていることが、手に取るように分かった。

「画素数が大きくなると、撮影データは機体の振動などの影響をもろに受けるようになります。ですから富士フイルムさんの協力のもと、GFX100S Ⅱを搭載できるようにSurveyor-Ⅳのジンバル性能や機体性能を作り込んでいます」(担当者)。

 なお、ペイロードには赤外線カメラも用意されている。AIを活用して撮影したデータを解析するツールも開発中とのこと。

 ブースの担当者は、バッテリーを2本搭載して30分間飛行できるスペックと高性能なペイロードの組み合わせで、効率的な点検業務や測量業務に活用できることをアピール。また「災害対応などで距離をとって飛行しなくてはならない場合でも、解像度が高いレンズのおかげで緻密な撮影ができます」と付け加えた。

大型物資運搬ドローン「Surveyor-X」の実力

写真:展示ブースに吊るす形で展示されたSurveyor-X。
最大50kgの積載を可能とするSurveyor-X。

 ブースには大型物資運搬ドローン「Surveyor-X」も展示された。推奨される積載量は50kgで、最大12分まで飛行が可能な機体だ。鉄塔の塗り替えに使う塗料といった物資の運搬実績を持つ。もともとは苗木運搬を行う事業者から30kg程度を運べるドローンの開発を要望されていたが、効率化を追求するうちに50kgが積載可能な機体になったという。現在は災害対応における距離を飛ばしたいというニーズに応えるため、飛行できる距離と時間の向上を目指している。往復20kmを30分で飛行できることを目標に改良が進行中だ。

写真:Surveyor-ⅠのLiDAR搭載モデルの外観。
写真:Surveyor-Ⅰに搭載したLiDARとカメラ。
Surveyor-ⅠのLiDAR搭載モデル。
写真:Surveyor-Ⅰのデュアルレンズ搭載モデルの外観。
写真:Surveyor-Ⅰに搭載したデュアルレンズ。
Surveyor-Ⅰのデュアルレンズ搭載モデル。
写真:Surveyor-Ⅱと、厚みのある四角い板状の給電装置。
非接触給電に対応しているSurveyor-Ⅱ。機体の下に敷かれた板の部分が給電設備。
写真:Surveyor-Ⅴの外観。
アームをボディに沿って折りたたみ、コンパクトに収納できるのが強みのSurveyor-Ⅴ。

 このほかには、腕が折りたためて、4800万画素の可視光カメラとサーモカメラのデュアルレンズを搭載した「Surveyor-ⅠN」が展示された。レーザー測量装置・LiDARを搭載したモデルもあり、測量、点検、警備など幅広く活用できる汎用型だ。「Surveyor-Ⅱ」はワイヤレス給電、「Surveyor-Ⅲ」は有線給電に対応するモデル。2025年春にデビュー予定の「Surveyor-Ⅴ」はアーム折りたたみ時の寸法が261×200×228mm、重量は1.6kgで、コンパクトになり「リュックに入れて搬送可能なミニドローン」とアピール。実際、ACSLの「SOTEN(蒼天)」やDJIの「Mavic 3」を意識して開発が進められており、光学&サーモのデュアルレンズの搭載を検討している。また、10~20機のドローンを群れで飛行させる「スウォーム飛行」にも対応。これにより、幅広い面積の空撮が可能になるなど、ドローンの活躍の幅が広がる見込みだ。

安全なFPV飛行をサポートするウェアラブルデバイス「b.g.」の導入

写真:マネキンの両目中央付近に装着されたウェアラブルデバイス「b.g.」。
写真:デバイスを装着したマネキンを正面からみた様子。
「b.g.」を頭部マネキンに掛けた様子。マネキンの目がデバイスに隠れることなく見えていることがわかるだろう。

 最後に、ブースで見つけた、少し変わったメガネ型のウェアラブルデバイス「b.g.」を紹介しよう。FPVドローンを操縦する際はゴーグル型のモニターを身につける。これだと視界がすべて覆われてしまい、機体や周囲が肉眼で目視できなくなってしまう。だが「b.g.」の場合は両目の中央付近にのみモニターが現れる構造。視線を上下へ動かせば、モニターをかわして、肉眼で機体やプロポが目視可能になるというスグレモノ。映像入力はHDMIを使用するため、無線設備の追加なども必要ない。いままでにない視覚を味わえるので、機会があればぜひ試してみてほしい。

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