70リットルの荷物運搬を実現するDJI FlyCart 30
展示場出入口の正面に広いブースを展開していたのが、KDDIスマートドローンだ。その一角で存在感を発揮していたのが、DJI FlyCart 30。2024年1月に日本国内で販売開始となり、事業者への納品も進みつつあるという。機体下部に70リットルの荷物を搭載できるカーゴモードで展示され、機体のかたわらにはウインチモードで使用するウインチも置かれた。カーゴモードでは離着陸地点に十分な広さが必要になるため、場合によってはウインチで荷物を吊って飛行し、目的地ではホバリングして地上からの高さを保ちながら、ウインチを使い荷物を上げ下ろしすることが有効だ。これが動画で解説されており、来場者の多くは異なるモードを使い分けることで様々な用途に応じられる本機のポテンシャルの高さに感心している様子だった。
物流ドローンの本命の呼び声が高い本機は注目度も高い。どのような引き合いがあるか担当者に尋ねると「『大型船への荷物運搬に小型船を使っているが、ドローンで代替したい』といったお話や『山小屋への配送にヘリコプターを使用しているが、ドローンに置き換えてコストカットを目指したい』といった声が聞かれます」とのこと。同社は2024年5月に静岡県熱海市のPICA初島にある宿泊施設に同機で荷物を運搬する実証を実施。今後も様々な検証を行い、同社が手掛けるドローン物流に活用する考えだ。
ドローンの自動充電と遠隔操作が可能なドローンポート
DJI FlyCart 30以上にブースで目立った存在が、ドローンポート。DJIが3月に発売したDJI Dock 2と、米・Skydio社が手掛けるSkydio Dockが展示された。説明員は、ドックを使用するメリットは着陸後の機体の自動充電による完全自動化運用、遠隔操作及び映像のリアルタイム配信、取得データのクラウドへの自動アップロードであることをアピール。2台のポートのデモンストレーションも行われた。いずれのポートも会場から約50km離れた「コードベースキミツ」に設置。DJI Dock 2は屋外に置かれ、あらかじめ設定した飛行ルート情報をブースのPCからインターネットを介して受信すると、ポートのフタをオープン。格納されていたMatrice 3Dが飛び立ち、遠方に設置された石碑をズームで捉えてその文字まで読み取れるといった、鮮明な映像を送信した。自動操縦だが操作介入してカメラの調整などができることも説明された。
非GPS環境でも安定飛行を実現するSkydioの技術
また、非GPS環境であっても安定した飛行が実現できるSkydioの機体の特性を活かすため、Skydio Dockは屋内に設置。飛行ルートを受け取った機体は、発電所内の点検を模して取り付けられたメーター機器の前でホバリングし撮影。以前に撮影した画像と比較し、同じ場所の撮影を正確に繰り返せる能力をアピールした。
2024年秋に発売が予定されている点検用機体Skydio X10も出品。これからドローンを使用した点検に取り組みたいという事業者や、カントリーリスクを考慮して国内産や米国産の機体に切り替えたい事業者からの引き合いが増えているという。トンネルや、電源施設など高電圧が通っている場所でも安定した飛行ができることから、製鉄会社や鉄道会社、建設会社からの問い合わせが多い。また、取得した画像や映像をAIで解析し、被写体の状態をチェックするサービスや、光ケーブル敷設が困難な場所での衛星インターネットサービス・スターリンクを活用した4G LTE通信環境整備についても紹介されていた。
2024年8月以降、機体がLTE通信で制御できるDJIドングルへの対応も予定されている。KDDIスマートドローンは機体とモバイル通信を組み合わせ、広域での自律飛行やリアルタイム映像配信を行うことで、複雑な構造物の点検や長距離飛行、遠隔操作の実現を狙う。今後も、様々な分野で業務の自動化・省人化を進めていく考えだ。