写真:展示ブースでELIOS 3を手に笑顔を見せる熊田氏。
ブルーイノベーション株式会社 代表取締役社長 熊田貴之氏。

 2023年12月に東京証券取引所グロース市場への上場を果たし、ドローン業界での存在感がますます高まるブルーイノベーション。2024年6月には国産の産業ドローンメーカー5社などと機種別ライセンスの創設や、東京都板橋区で建設が進む物流拠点「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」併設の実証実験施設「板橋ドローンフィールド」を施設監修・運営するといった発表をしており、その動きから目が離せない。

「ELIOS 3」による困難な場所の点検実演

写真:ブルーイノベーションの展示ブースの様子。

 国際ドローン展では、同社が手掛けるドローンを活用した点検ソリューションをじっくりと検討できるように、ブースでのデモンストレーションや展示が行われていたのが印象的だ。

写真:ELIOS 3の外観。三角形メッシュのガードが機体を球状に覆っている。
ELIOS 3は球体のガードに覆われ、障害物から機体を守る構造になっている。

 デモンストレーションでは、人が入り込むのが困難な場所の点検に投入されるドローン「ELIOS 3」を実演。ELIOS 3は、ブース内に設けられたダクトを模したネットの中を滑らかに飛行し、一角に設けられた鉄板の前でホバリングを始めた。搭載された金属の肉厚を計測する「UTペイロード」を使用して鉄板の厚さを測り、金属の減耗がないかチェックする。プロポには3.2mmと計測結果が表示され、0.1mm単位で計測可能だ。従来は人間が計測器を持って測る必要があったが、高所の検査では足場を組まなければならないといった課題があった。ドローンで計測が可能になったことで各事業者も興味を示しており、問題なく使用できるか検証が進められている。

写真:UTペイロードの外観。機体側からUTペイロードの先端に伸びたチューブでプローブヘッドにカプラントを供給する。
ELIOS 3に搭載されたUTペイロード。鉄板の肉厚を測ることができる。
写真:ELIOS 3がホバリングしながらUTペイロードの先端のプローブヘッドを鉄板につけている様子。
デモンストレーションの様子。鉄板の前でホバリングし、UTペイロードを鉄板にピッタリとくっつけて計測する。
写真:展示ブースのモニターに映し出されるドローンからの映像。
機体のカメラからの映像が画面中央に、計測データが右下に映し出される。

送電線点検ソリューション「BEPライン」の導入進展

 同社では開発するドローンやロボットなどを自動制御・連携させるプラットフォームとして「Blue Earth Platform(BEP)」を展開している。その旗頭となるソリューションが、送電線点検を行う「BEPライン」だ。独自開発したボックス状のモジュールをDJI Matrice 350といった産業ドローンに搭載する。送電線を自動で認識したモジュールは、距離を一定に保ちながら送電線に沿って移動するようにドローンの挙動を制御する。また、点検対象を捉え続けるように自動でジンバルを調整し続ける。

 BEPラインで使用されるモジュールはネットワークに接続する必要がなく、送電線を認識すれば最適な離隔距離を推奨してくれる。それに合わせて機体を自動追従飛行と映像撮影させれば点検に必要なデータ収集は完了。点検員の負担は大幅に軽減される。

 BEPラインは東京電力ホールディングス、テプコシステムズと共同開発を進めており、すでに実装段階に入っている。また、北陸電力送配電でも導入に向けた検証が進められている。今後も保守点検作業の効率化に向けて、取り組みが続く。

地上ロボット「BEPサーベイランス」での新たな点検手法

写真:自動走行ロボット「BEPサーベイランス」の外観。
写真:機体上部に取り付けられたカメラなどの機材。
BEPサーベイランスは3輪で移動。機体の上部に計測用のカメラなどを取り付ける。

 ドローン以外では「BEPサーベイランス」という自動走行ロボット(UGV)も展示された。飛行するドローンでの巡回が難しいような場所でも、ドローンと同様の点検を実現するために開発された。「点検する計器などの前で止まり撮影する」など、あらかじめルートや点検方法を設定しておけば、自動で稼働する。さらに収集したデータは同社が用意するプラットフォームにアップロードされる仕組みだ。点検に使用する機材は光学カメラだけでなく、マイクやサーモカメラなども取り付け可能。顧客のニーズにあわせてカスタマイズに対応する。拠点での自動充電もできるので、人の手を介することなく点検が完了する。現在は発電所内で活用されているそうだ。

 点検分野でのドローン活用は、効率的にインフラや設備の状態を把握できることが理解されつつあり、需要が大きい。今後もブルーイノベーションにより展開されるソリューションが活躍する機会は増えていくだろう。

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