1月19日から21日の間、東京ビッグサイトで第6回目となるロボデックスが開催された。最新ロボットからロボット開発技術、周辺機器、ロボット部品など、数多くの工業製品が集結。なかでも自動車や産業機器向けにネジ・ボルトを提供しているヤマシナでは、2021年半ば頃からドローンメーカーからのニーズが高まっているという。

ドローンの品質向上に欠かせない構成部品の信頼性

 近年、国産ドローンというワードに注目が集まり、昨年12月にはACSLがいよいよ蒼天-SOTEN-を発表した。同機は国産部品で構成されているのに加え、これまでのドローンと大きく異なるのは量産化の体制が整えられたことだ。従来は試験的に作られたものや受注生産がほとんどであったが、ドローン開発の在り方も徐々に変わりはじめている。これに加え、航空法改正に伴う機体認証制度が新設され、レベル4の目視外飛行には、認証された機体が必要になるなど、さらなる普及には機体の品質向上が今後のカギとされる。

 ドローン開発や航空法改正、社会実装など、総じて第一に検討されるのは“安全の担保”であり、機体の安全性においては、ドローンを構成するひとつひとつの部品の信頼性も大きな要素となる。そのような背景からヤマシナではドローンに使われるネジ・ボルトの受注が増加傾向にあるという。

ドローンに用いられるのはM3、M5のボルトが多い(写真はM3のアルミボルト)。価格は10本でおおよそ1000円程度。また、空力特性を意識した頭部が平らなボルト(極低頭ボルト)が人気だという。

 同社が取り扱うネジ・ボルトの種類は大きく分けて鉄、ステンレス、アルミの3種類。ドローンでは鉄ボルトに比べ、比重が3分の1程度となるアルミボルトのニーズが高く、信頼性のある国内製品を求めて同社に相談が寄せられる。相談の中にはアルミボルトにこだわる理由として軽量化のほか、帯電しないという点に目をつけた開発者もいるという。自動車のように地上と接地しているものであれば、常に地上アースされているが、空中を飛行するドローンはアースされないので帯電してしまう。その結果、電波や基板等へ影響をもたらす可能性はゼロとは言い切れない。アルミボルトはそういった細かなリスク削減にもつながるという。

フローラインの形成で決まるボルト・ネジの破損

 ネット通販などでボルトやネジはあらゆるメーカーから販売されている。ヤマシナの担当者はこれについて「近年、数多くの素性の分からないボルトやネジが出回るようになった。たかがボルト1本と思われるが、自動車やバイク、ドローンなどでは破損すれば重大事故につながりかねない。強度や耐久性を見ると粗悪なものも多いので、素性が公開されているものを選ぶべきだ」と話す。

ボルト断面図に見えるフローラインの例。

 では、ボルト・ネジの破損とはどういったものなのか。その多くは頭部が切断され、飛んでしまうのだという。製造したボルト・ネジの断面図を見ると、頭部からネジ部にかけてラインができているのが分かる。これはフローラインと呼び、ラインが綺麗につながっているものは強度が高く、途中で途切れているものは破損しやすい個体だ。ヤマシナでは1本1本の製品に至るまで検査して出荷しているという。

 また、ドローンにアルミボルトを使うことについて「ドローンのほとんどは樹脂部にボルトが使用される。物は熱で膨張し、冷やすと縮まる特性を持っており、この線膨張係数によるボルトと使用部材との相性もある。樹脂は鉄よりもアルミに線膨張係数が近いため、同じ温度に対して膨張・収縮の差が少ない。一方で樹脂と鉄は膨張・収縮の差が大きいので、膨張と縮小を繰り返すとネジの緩みにつながってしまう」と担当者は話した。

 ボルト・ネジを選ぶ場合には寸法の精度のほか、引張強度や耐力、アルミボルトであれば強度を表すAL6といった規格など、公開されている情報をもとに選定すると良いだろう。