ZERO ZERO ROBOTICSは2024年から、日本市場で「フライングカメラ」と位置づける「HOVERAir」シリーズを展開している。これまで、機体重量99gで2.7K撮影に対応する「X1 Smart」、4K撮影に対応する「X1 PRO」と8K撮影に対応する「X1 PROMAX」、水面から離着陸できる「AQUA」などを投入してきた。

 そして、9月から新たに加わったのが「HOVERAir VERSA(バーサ)」だ。3軸ジンバルを備えたハンドヘルドカメラにフライトキットを装着することで、自律飛行型ドローンとしても使用できる。一般的な撮影用ドローンは搭載カメラを手持ち撮影に使うことを前提としていないが、VERSAは手持ち撮影と空撮を1台で切り替えられる点が大きな特徴だ。

 本稿では、9月に行われたメディア向け発表・体験会の模様をレポートする。ZERO ZERO ROBOTICSのMQ Wang(ウォン)CEOによる製品解説とともに、実際にVERSAを使用した印象を紹介する。

ドローンではなく「フライングカメラ」

 Wang CEOは、自社製品を「ドローン」ではなく「フライングカメラ」と呼んでいる。一般ユーザーがドローンに対して抱く「操作が難しい」「危険そう」「資格が必要なのではないか」「兵器にも使われる」といったイメージから距離を置き、「誰もが日常使いできるカメラとして届けたいと考えています」と同社の考えを説明した。

写真:壇上で片手を肩の高さに上げるWang氏、その手のひらの上を飛行する「HOVERAir VERSA」
「HOVERAir VERSA」を手の平から飛ばすZERO ZERO ROBOTICSのWang CEO。

3軸ジンバルと1/1.3インチセンサーを搭載

 まず、ハンドヘルドカメラとしての仕様を見ていこう。本体は163gのポケットサイズで、3軸メカニカルジンバルを搭載する。歩きながら撮影する際などのブレを抑え、安定した映像を撮影できる。

 イメージセンサーは1/1.3インチ。同社公称のダイナミックレンジは17.5段で、明暗差の大きい場面でも白飛びや黒つぶれを抑えられるとしている。映像は4K/60fps、10-bit HDRに対応する。

写真:左手で握ったハンドヘルドカメラ
ハンドヘルドカメラに採用された1.64インチのディスプレイは、縦横どちらの向きでも使用できる。

 ハンドヘルドカメラにフライトキットを装着すると、自律飛行カメラへと切り替わる。本体背面には接点が設けられており、マグネットによる位置合わせと機械式ラッチを組み合わせた独自の「MagLatch」システムで固定する。

 フライトキットの重量は67gで、装着時の総重量は230gとなる。このため、日本国内で屋外飛行させる場合は国土交通省への機体登録が必要だ。人口集中地区の上空や夜間、目視外、人または物件から30m未満の距離で飛行する場合など、特定飛行に該当する飛行では許可・承認が必要となる場合がある。発表会では、国内向け製品はリモートIDに対応すると説明された。

写真:フライトウイング中央のラッチ部分
本体とフライトキットを接続する接点は「MagLatch」システムが採用され、位置を合わせるだけでしっかりと固定される。また、5Aの電流をモーターへ供給する専用設計とした。
写真:フライトウイングを装着した状態で翼を折りたたんだ様子
フライトキットを取り付けた状態で折りたたむことが可能。

10種類以上の自動飛行モード、3D空間の再構築にも対応

 HOVERAirシリーズの特徴の一つが、AIで被写体を認識し、プリセットされた飛行を自動で行うインテリジェント飛行モードだ。VERSAにも、被写体に追従するフォローモード、被写体の周囲を飛行するオービットモード、上空から撮影する俯瞰モードなど10種類以上が用意されている。AIが周囲の環境や被写体を分析し、カメラの位置や構図を調整する「AIフレーミング」も搭載する。例えば、集合写真の撮影時に全員が画角に収まるように最適な構図を自動選択することができる。また、「3D Worlds」では、空間をさまざまな角度から撮影し、「3D Gaussian Splatting(3Dガウシアン・スプラッティング)」と呼ばれる技術を用いて立体的な3D空間として再構築できる。

写真:ディスプレイのある機体背面
インテリジェント飛行モードは、ドローンのディスプレイで設定できる。

 手動操作用には「Mico」と呼ばれるミニコントローラーも用意する。上昇・下降、前後左右への移動、旋回といった基本操作に対応し、自動飛行中に構図を調整したい場合などに使用できる。Micoはオールインワンセットに含まれる。

 バッテリーの駆動時間は、ハンドヘルドカメラとして使用する場合が最大3時間、ドローン飛行時は最大14分となっている。

9月29日からMakuakeで先行販売、価格は12万7,900円~

 VERSAは9月29日、応援購入サービス「Makuake」で先行販売を開始した。スターターセットは通常価格13万9,800円(税込)で、数量限定価格は12万7,900円(税込)。MicoやNDフィルター、予備バッテリーなどが付属するオールインワンセットは通常価格17万7,800円(税込)、数量限定価格16万2,600円(税込)となる。

 同社によると、Makuakeで購入した製品は10月中旬から下旬にかけて発送を開始する予定。その後、11月中旬から下旬には家電量販店などでの一般販売を予定している。

写真:ハンドヘルドカメラ、フライトウイング、MiCo
ハンドヘルドカメラとフライトキットはスターターセットに含まれる。Micoはオールインワンセットに付属。
写真:ウイングを装着したVERSA(黒、白)
カラーバリエーションはホワイトとブラックの2色展開。

手持ちカメラから数秒で自律飛行カメラへ

 実際にVERSAを使用した。163gという重量はスマートフォンと大きく変わらない印象で、手に持つとグリップ部分がしっかり収まる。親指で操作するスティックや撮影・録画ボタンにもアクセスしやすい。

 本体には1.64インチのOLEDディスプレイを搭載する。ディスプレイを回転させて横位置にすると電源が入り、縦位置でも使用できる。表示は明るく、被写体も確認しやすい。各種設定はディスプレイをスワイプして呼び出せる。撮影した映像もその場でディスプレイから確認できる。少なくとも本体画面で確認した範囲では、細部まで鮮明に記録されている印象だった。音声は内蔵マイクで録音できる。一方、発表会で確認したところ、外部マイクの直接接続には対応していないという。外部マイクを使用する場合は、別途録音した音声と映像を編集時に同期する必要がある。

 続いて飛行モードを試した。折りたたまれたフライトキットを展開し、ハンドヘルドカメラをセットする。「カチッ」と音が鳴れば装着完了だ。MagLatchについては5,000回以上の着脱耐久試験を実施したとしており、着脱を繰り返す使用を想定した設計となっている。ディスプレイからインテリジェント飛行モードを選択する。多くの取材陣がいる室内での体験だったため、今回はホバリングモードのみを試した。手のひらから離陸させると、VERSAは筆者を被写体として認識。筆者が前後左右に動いても、フレーム内に捉え続けた。

写真:飛行するVERSA
体験会では室内でホバリングを試した。筆者が移動しても被写体として追従した。

 飛行そのものも安定しており、手持ちカメラに後からプロペラを取り付けたことで生じるような不安定さは感じなかった。これまでのHOVERAirシリーズと大きく変わらない感覚で使用できた点は印象的だった。

 ドローンを飛ばす機会は限られる一方、ジンバルカメラであれば日常的に使用したいというユーザーにとって、VERSAの「手持ちでも使える」という設計は分かりやすいメリットになる。Wang CEOは「カメラを持ち替える必要はもうありません」と強調した。

 VERSAの特徴は、単にジンバルカメラが飛行することではなく、普段は手持ちカメラとして使い、必要な場面では同じカメラを空撮に切り替えられることにある。一方、飛行時は230gの無人航空機となり、日本国内では機体登録や飛行方法に応じた手続きが必要になる。この点を理解したうえで、手持ち撮影と空撮を1台で使い分けたいユーザーにとって特徴的な選択肢となりそうだ。