Zero Zero Roboticsが展開する「HOVERAir」シリーズには、重量99gで2.7K撮影に対応する「HOVERAir X1 Smart」や、最大4K・8K撮影が可能な折りたたみ式の「HOVERAir X1 PRO」「HOVERAir X1 PRO MAX」などがある。今回新たに加わった「HOVERAir AQUA」(以下、AQUA)は、名称が示すとおり、水上からの離陸と水上への着陸に対応した機体だ。実際に水面から離陸させ、被写体の自動追尾やウェアラブルコントローラーによる操縦を試すと、海や川のレジャーに最適な一機だと実感できた。
水上離着水に対応する249gの防水機体
機体の外形寸法は約20.2×20.6×6.2cm(長さ×幅×高さ)。防水構造のため、X1 PROシリーズのような折りたたみ機構は備えていない。持ち運ぶ際には、A4サイズ程度の収納ケースを用意しておくと便利だろう。公称重量は249g。日本では100g以上の無人航空機に該当するため、屋外で飛行させるには機体登録が必要だ。また、飛行場所や飛行方法によっては、飛行許可・承認などの手続きも必要になる。
機体の周囲には、プロペラガードを兼ねたフロートを備える。水面に置いても浮いた状態を維持できるほか、モーターやバッテリーなどにも防水対策が施されている。
バッテリーを取り付ける際は、機体後部側から差し込んだ後、左右のロックを固定する。機体底面にはゴム製のカバーで覆われたUSB Type-C端子がある。
RTKを利用したLighthouseとの高精度トラッキング
カメラには1/1.28インチCMOSセンサーを搭載し、最大4K/100fpsの動画撮影に対応する。スローモーション撮影や縦位置での撮影も可能だ。レンズには撥水加工と曇りを抑えるための機構を採用し、水辺や湿度の高い環境における映像への影響を抑える工夫が施されている。
HOVERAirシリーズは、カメラ映像を利用して被写体を捉え、自動で追尾する機能を特徴としている。今回発表されたAQUAも、被写体に追従するフォロー、上空から撮影する俯瞰、高度を上げながら後退するズームアウトなどの飛行モードを備える。カヤックやSUPなど、水上アクティビティ向けに設定された撮影モードも用意されている。
AQUAには、腕に装着して使用するウェアラブルコントローラー「Lighthouse」が付属する。AQUAは、カメラ映像によるビジュアルトラッキングとLighthouseによる測位情報を組み合わせて被写体を追尾する。メーカーによると、AQUAとLighthouseの間ではRTK(Real Time Kinematic)を利用し、cm単位の相対測位を行うという。
Lighthouseには、離陸、帰還、前後左右の移動、旋回、高度調整などに使用する操作部も設けられている。片腕に装着し、反対側の手で操作できるため、水上アクティビティ中でも一般的な送信機を持たずに機体を操作できるのが特徴だ。
水しぶきを上げて水面から離陸
筆者はこれまで、日本国内で販売されたHOVERAir X1 Smart、X1 PRO、X1 PRO MAXを使用してきた。これらの機体は手軽にスポーツシーンや自撮りなどを撮影するために開発された小型ドローンであり、手のひらに載せて離陸させることが多い。
AQUAでも当初は手のひらからの離陸を試みたが、これまで販売してきたドローンとはコンセプトが異なるため、手のひらから離陸させようとすると、プロペラに触れてしまうことに気づいた。そこで、機体を水面に置いて離陸させることにした。
水面に置くと、機体は機首側をやや沈ませた状態で浮いた。腕に装着したLighthouseの中央に設けられた離陸ボタンを押すと、カウントダウンが始まり、プロペラの回転が始まる。機体は水しぶきを上げながら水面から飛び立ち、目線の高さまで上昇した。
離陸後は、フォローモードを使用し、歩く筆者を追尾飛行させてみた。飛行の安定性は従来のHOVERAirシリーズと同様で、被写体との位置関係を保ちながら撮影を続けた。
着水させる際は、Lighthouseの下部にある帰還ボタンを押すことで自動で着水する。着水する場所は離陸地点となっており、自動で戻った機体は高度を下げ、水面に着水した。Lighthouseによる手動操作も複雑ではない。筆者は左腕に装着し、右指で操作。コントロールリングの上下方向で機体の前後移動、左右方向で左右移動を指示し、リング上部のボタンで高度を調整する。
2本のスティックを備えた一般的な送信機ほど精密な操縦ではないが、撮影位置の調整にはとても便利で、送信機を持たずにドローンを操作できるのはとても良い。一方、機体と向かい合った状態で操作すると、操縦者から見た左右と機体の左右が反対になるため、意図した方向と逆に動かす「逆舵」が起こりやすいので最初は慣れが必要だ。
内蔵画面で撮影設定と映像確認が可能
機体には1.6インチのAMOLEDディスプレイと物理ボタンを備える。スマートフォンを水上へ持ち込まなくても、飛行モードの選択や撮影設定、ライブビューの確認、撮影映像の再生などを機体側で行える。
スマートフォン用アプリ「HOVER X1」に接続することも可能だ。これを利用すれば、機体が撮影しているカメラの映像をリアルタイムでスマートフォンに映し出せるため、画角を調整しやすい。アプリ上に表示される仮想スティックを使った操縦にも対応している。
アプリから利用できる機能の一つが「タートルモード」だ。機体が水面で上下逆さまになった場合、プロペラを回転させて自動で正しい向きに戻すことができる。
次に、「フロートモード」では、機体を浮かせたまま水面上を移動させられる。今回は、池の中央付近に着水した機体をフロートモードで岸へ近づけ、回収する際に使用した。水上で機体から離れてしまった場合にも役立つ機能だ。
海水で使用した後は真水で洗浄
水上で使用した後は、機体の手入れが必要となる。今回は淡水の池で使用したが、海水で使用した場合は、塩分を残したままにすると金属部品の腐食などにつながる恐れがある。
メーカーが案内する手順を確認し、プロペラや機体に付着した砂、藻、草などを真水で洗い流したうえで、十分に乾燥させる必要がある。アプリには手入れ方法を説明する動画も用意されているため、使用前に確認しよう。
水上アクティビティに向けた独自性
AQUAの大きな特徴は、機体が水面に浮き、そのまま離着水できることにある。実際に水しぶきを上げて離陸する様子は、陸上から飛ばす一般的なドローンとは異なる体験だった。
水上バイク、SUP、カヤックなどのアクティビティでは、操縦者自身が送信機を操作しながら撮影することが難しい。Lighthouseを装着した利用者を自動追尾できるAQUAは、こうした場面を1人で撮影するための選択肢となる。水上アクティビティを提供する事業者が導入し、体験者を撮影して映像を提供するといった使い方も考えられる。
一方、防水性能を生かし、橋梁や水上構造物の点検に応用できる可能性も考えられる。船上から機体を水面に降ろし、離陸させる運用であれば、手のひらから離着陸させる必要がない。ただし、点検用途への適性については、撮影対象との距離、障害物検知機能、通信環境、必要な画質や安全管理などを含め、実際の現場で検証する必要がある。
AQUAは、X1シリーズ向けの「ビーコン&ジョイスティック」にも対応する。これは一般的なドローンに用いられるスティック型の送信機となっていて、精度の高い操縦ができれば、水上撮影の自由度はさらに高まるだろう。水上から離着水できる構造とLighthouseを利用した自動追尾機能は、AQUAならではの特徴だ。水辺での映像制作を目的とする利用者にとって、新しい撮影方法を提案する機体といえる。
※取材協力/丹波山村営つり場
