タブレットやスマートフォンを充電する様子、窓の外に映る空港の景色

 空撮や点検、測量、災害対応訓練など、ドローン業務では機体本体だけでなく、送信機やスマートフォン、タブレット、映像確認用端末、通信機器など、多数の周辺機器を持ち運ぶのが一般的だ。そのため、航空機での移動を伴う案件では、「ドローンを飛ばす準備」と同時に「機材を安全に運ぶ準備」が不可欠となる。

 こうした中、国土交通省はモバイルバッテリーの機内持ち込みルールを見直し、2026年4月24日から新たな取扱い(以下、新ルール)を適用することを4月14日に発表した。背景には、国内外で増加している機内での発煙・発火事案と、それに伴う国際基準の緊急改訂がある。

▼国土交通省-モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて
https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000310.html

 今回の見直しは単なる注意喚起ではない。従来から預け入れ荷物への収納は禁止されていたが、新ルールでは持ち込み個数に加え、機内での使用方法にまで規制が及ぶ。つまり、航空機内におけるリスク管理がより具体化されたといえる。

航空機内で何が変わる?モバイルバッテリー新ルールの要点と実務への影響

 新たに追加された主な規制は次の3点だ。

1. 機内に持ち込めるモバイルバッテリーは2個まで(160Wh以下に限る)
2. 機内でモバイルバッテリーへの充電をしない
3. 機内でモバイルバッテリーから他の電子機器へ充電をしない

 まず、機内に持ち込めるモバイルバッテリーは160Wh以下のものに限り2個までに制限される。次に、機内でモバイルバッテリー自体を充電する行為が禁止される。そして、モバイルバッテリーからスマートフォンなど他の電子機器へ給電することも認められない。
 重要なのは、規制の対象が「持ち込み」だけでなく「機内での使い方」にまで広がっている点である。これまで移動中にスマートフォンやタブレットへ継ぎ足し充電を行っていたドローン運航者にとっては、運用の見直しが不可避となる。

 本改正の影響が特に大きいのは、地方ロケや山間部での点検、離島案件など、航空機での移動を前提とした遠征型のドローン運用である。従来は、移動中にスマートフォンやタブレットのバッテリー残量が減った場合でも、モバイルバッテリーから充電することで対応できた。しかし、新ルールのもとでは、このような「機内での継ぎ足し充電」は認められない。

 そのため、フライトアプリを使用する端末や地図表示用端末、通信機器などについては、搭乗前の段階で十分なバッテリー残量を確保しておく必要がある。さらに、現地到着後にどの電源を使って再充電するのかまで含め、あらかじめ運用を設計しておくことが求められる。

 一見すると制約が厳しくなったように感じられるが、見方を変えれば、これまで現場任せになりがちだった電源管理を、業務全体の設計として捉え直すきっかけともいえる。今回のルール改正は、ドローン運用における電源管理をより計画的かつ体系的に行う必要性を明確にしたものだ。

見落としがちな重要ポイント──モバイルバッテリーと予備電池の違いとは

 次にドローン運航者にとって特に重要なのが、「モバイルバッテリー」と「予備の電池(リチウムイオン電池)」が明確に区別されている点だ。モバイルバッテリーは「他の電子機器へ給電するためのもの」、一方で予備電池は「カメラやドローンなどの交換用バッテリー」や「機器から取り外した電池」と定義されている。

 この区分に従えば、USB給電用のバッテリーはモバイルバッテリーとして扱われ、ドローン本体や送信機の交換用バッテリーは予備電池として扱われる。ただし現場ではこれらをまとめて「バッテリー類」として扱うケースも多く、区別が曖昧なまま移動していることも少なくない。今後は、それぞれの違いを正確に理解し、説明できる状態にしておく必要がある。

持ち込み数で制限が変わる?ドローン用予備バッテリーの新ルールを整理

 さらに注意すべきは、モバイルバッテリーの持ち込み数に応じて、予備電池の持ち込み条件も変わる点だ。

 前述のとおり、新ルールでは機内へのモバイルバッテリーの持ち込みが2個までに制限されているが、予備電池の持ち込みに関する制限も記載されている。モバイルバッテリーの持ち込み数に応じ、予備電池の持ち込み数は以下のように制限される。

モバイルバッテリー予備電池
(100Wh以下)
予備電池
(100Wh超160Wh以下)
100Wh以下を2個個数制限なし2個まで
100Wh超160Wh以下を2個個数制限なし持ち込み不可
100Wh以下1個、かつ100Wh超160Wh以下1個個数制限なし1個まで

※ワット時定格量(Wh)= 定格容量(Ah)× 定格電圧(V)

 100Wh以下の予備電池については個数の制限がないが、100Whを超え160Wh以下の予備電池は、モバイルバッテリーの持ち込み状況によって制限を受ける。特に中型以上のドローンでは、この上限に該当するケースがあるため注意が必要だ。

空港で止まらないために──ドローン運航者が見直すべきバッテリー管理の実務

 実務面では、まずモバイルバッテリーの個数管理が重要になる。「念のため」と複数持ち込む運用は見直しが必要だ。また、Wh(ワット時定格量)の表示確認も欠かせない。容量が不明確な製品は保安検査時の説明負担を増やす。加えて、端子の絶縁やケース収納など、ショート防止の基本対策も徹底する必要がある。なお、預け入れ荷物への収納禁止は従来どおり維持されるため、使用しないからといってスーツケースに入れることはできない。

 ドローン運航者に求められる対応は、荷造りの見直しにとどまらない。出張前チェックリスト、機材管理表、現場マニュアル、スタッフ間の情報共有まで含めて運用全体を更新する必要がある。特に複数人で現場に入る場合、誰がどのバッテリーを管理するのかを明確にしておかないと、空港での手続きや現地での運用に支障をきたす可能性がある。さらには現地到着後に必要端末の電力が不足し、飛行計画や撮影工程に直接影響するおそれがある。制度変更は法令対応の問題であると同時に、工程管理・品質管理の問題でもある。

「安全に飛ばす」だけでなく「安全に持ち運ぶ」ことまでが実務

 今回の改正は、「安全に飛ばす」だけでなく「安全に持ち運ぶ」ことまで含めて、ドローン運用の一部であることを示している。飛行に関する法令順守が重視される一方で、輸送段階のルールは見落とされがちだが、移動に失敗すれば業務そのものが成立しない。

 今後は、バッテリーの区分整理や個数・容量の確認に加え、端末ごとの電力管理や到着後の充電計画、スタッフ間でのルール共有までを一体的に設計することが求められる。今回の改正は、バッテリー管理を「現場の工夫」から「運用設計の一部」へと引き上げる重要な転換点といえるだろう。