2月18日、空飛ぶクルマ(eVTOL:電動垂直離着陸機)と称される「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)」の開発を進めるSkyDriveの福澤知浩CEOが、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行った。
会見では、eVTOLの開発状況をはじめ、グローバル市場での受注動向、そして2月下旬に予定されている東京初のデモフライトに向けた狙いについて説明。量産化・型式証明・海外展開という三位一体の戦略が、いよいよ具体的なフェーズに入りつつあることを印象づけた。
都市部100か所超を視野に入れる「コンパクト設計」と量産体制
SKYDRIVEの最大の特徴は、そのコンパクトさにある。マルチコプター型を採用し、翼を持つ固定翼タイプのeVTOLと比較して約3分の2のサイズに小型化されている。機体幅は約11.5m。この寸法により、東京都内の高層ビルに設置されている緊急離着陸場など、100か所以上での運用が可能になるとの見立てを示した。
すでに東京都は、東京駅前の丸ビルにおいてヘリコプターによる離着陸実証を実施しており、安全性に問題がないことを確認している。福澤CEOは「ヘリコプターより物理的に小さいSKYDRIVEであれば、十分に対応可能と考えています」と述べ、既存インフラを活用した都市内運航の実現性に自信を示した。
開発・製造体制も着実に整備が進む。現在、3か所のテストフィールド、1か所の開発センター、1か所の工場を保有。開発チームの約半数は海外人材で構成されており、グローバルで蓄積された航空・電動化技術の知見を取り込む体制を築いている。
製造面では、自動車メーカーのスズキと連携協定を結び、静岡県磐田市に量産拠点を構築。自動車と同様の生産ライン思想を導入し、現時点で年間100機の生産能力を有する。将来的には昼夜2交代制によって年間200機規模へ拡大する計画で、その水準に到達すれば事業収支の黒字化も視野に入るという。コンパクトカー生産に強みを持つスズキとの協業は、「航空機を量産する」というeVTOL産業の根幹課題への一つの回答といえる。
型式証明と2028年商用化ロードマップ
空飛ぶクルマが「日常的に気軽に利用できる移動手段」となるためには、機体の安全性を立証する型式証明の取得が不可欠だ。市街地上空での飛行を実現する前提条件であり、事業化の最重要マイルストーンでもある。
SkyDriveは2028年のサービス開始を目標に、国土交通省航空局(JCAB)および米連邦航空局(FAA)と連携しながら型式証明取得に向けた手続きを進めている。福澤CEOによれば、型式証明プロセスは5段階あり、現在は3段階目の「認証計画の合意」フェーズまで進んでいるという。この合意が成立すれば、本格的な試験フェーズに移行でき、取得時期の見通しもより具体化する。合意の結果については、「数か月以内には発表できる見込み」と述べ、進展を示唆した。
機体開発が進む一方で、グローバル市場での受注状況も堅調だ。2025年12月時点で、世界8か国から計415機のプレオーダーを獲得している。日本および米国からの受注もあるが、数量ベースでは東南アジアや中東など新興国が中心となっている。
その背景にあるのは、機体のコンパクト性と都市課題との親和性である。たとえばインドネシアでは、国内最大級のヘリコプター運航会社Whitesky社と提携し、最大30機のプレオーダーを確保。ジャカルタの深刻な交通渋滞に対し、国際空港からダウンタウンまで車で1~2時間を要する区間を約15分で結ぶ構想を描く。ビル屋上などの限られたスペースを活用した離着陸が前提となる都市構造において、小型機体は明確な競争優位となる。
一方で、海外メディアからは「日本は商業化が遅れているのではないか」との指摘もあった。これに対し福澤CEOは、「2025年に開催された大阪・関西万博において、複数の機種が一般イベントで飛行しました。この規模での公開飛行は日本が初めてです」と説明した。同イベントではSKYDRIVEに加え、米国のJoby S4やHEXAも飛行しており、日本が実証環境として先行している側面を強調した。
東京初デモフライトが示す「社会実装フェーズ」への移行
同社は、国内のサービス設計も具体的に進めている。東日本旅客鉄道とは、交通系ICカード・Suicaによって電車から空飛ぶクルマへのシームレスな乗り継ぎ構想を検討。九州旅客鉄道とは、別府と湯布院の間を約15分で結ぶ観光路線を構想している。さらに大阪市高速電気軌道とは、森ノ宮駅再開発に合わせて駅ビル屋上へのバーティポート設置を計画するなど、鉄道インフラとの統合が一つの軸となっている。
そして2026年2月24日から28日まで、東京ビッグサイト東棟屋外臨時駐車場にて東京初のデモフライトを実施。最大10回の飛行を行い、特設バーティポートでのチェックインや地上オペレーションの実証も行う。単なる飛行披露ではなく、商用運航を見据えたオペレーション検証が主目的だ。飛行空域は羽田空港の管制圏内。福澤CEOは「機動性の高さを実際に見てください」と語る。「既存ヘリコプターは前進飛行が基本であり、固定翼型eVTOLは横風耐性に課題があります」と指摘。その点、マルチコプター型のSKYDRIVEは機敏な移動が可能で高い機動性を持つという。
東京都は2025年度から「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」を始動し、2027年度にプレ社会実装、2030年の市街地商用運航を目標に掲げる。今回の東京デモフライトは、そのロードマップにおける重要な実証ステップとなる。開発、量産、型式証明、そして都市インフラとの接続。SkyDriveはeVTOLスタートアップから「社会実装企業」への転換点に立っている。東京での飛行が、その実力を測る試金石となる。
