2月24日から28日にかけて、三菱地所、兼松、SkyDriveの3社は東京都の東京ビッグサイトにおいて、空飛ぶクルマ(eVTOL)の実運用を想定した飛行実証を実施した。本実証は一般公開され、初日となる24日には100人を超える来場者がeVTOLの飛行を見守った。都内でのeVTOLの飛行は2024年の「SusHi Tech Tokyo 2024」に続き2例目となるが、SkyDriveが開発する国産機体が東京都内でデモフライトを行うのは今回が初めてである。
東京都は、都市部における慢性的な交通混雑やインフラ未整備地域での移動課題、さらには災害時の人命救助や物資輸送の迅速化といった社会課題の解決手段として、空飛ぶクルマの活用を推進している。2024年には「空の移動革命実現に向けた東京都官民協議会」を発足し、2030年の市街地での商用運航実現を目標に掲げ、都庁に加え有識者や関連企業とともに制度設計や事業モデルの検討を進めてきた。
2022年に国土交通省と経済産業省が合同で開催した「第8回 空の移動革命に向けた官民協議会」では、2030年代に向けたロードマップが策定された。現在は大阪・関西万博を終え、「商用運航の拡大」のフェーズに移行しており、各自治体と共同で実現に向けた検討が行われている。
こうした流れを受け、東京都は2025年に「空飛ぶクルマ ビジネスモデル構築プロジェクト」を公募。三菱地所、兼松、SkyDriveの3社によるコンソーシアムが採択された。本プロジェクトの特徴は、単なる飛行デモにとどまらず、事業化を見据えた運用全体の検証に踏み込んでいる点にある。地域開発の知見を持つ三菱地所が全体統括を担い、バーティポート事業の経験を有する兼松、そして国産eVTOLの開発メーカーであるSkyDriveが連携し、それぞれの強みを持ち寄る体制を構築した。
2月24日から東京ビッグサイトで行われたeVTOLの飛行デモは、同プロジェクトの一環で、旅客者が搭乗するための「ターミナル施設」を構築し、利用者を含む運用の全体像を検証した。
都市部での運用を見据えたSD-05型の飛行実証
東京ビッグサイトでは、SkyDriveが手掛けるeVTOL「SkyDrive式SD-05型」が飛行。同機はパイロット1名と乗客2名の計3人乗りだ。バッテリーを動力源とし、完全電動で飛行する。航続距離は15~40kmと、海外で開発されている他社のeVTOLに対して短めであるが、都市部での運航を目的としており、短距離を短時間で移動できる点を強みとしている。そのため、ビル屋上等の限られたスペースを離着陸場として活用する構想を掲げ、マルチコプター型を採用することで小型な機体設計を実現した。
今回の実証では安全確保の観点からパイロットを含む乗員は搭乗せず、すべて遠隔操縦によって飛行が行われた。向かい風の中、隣接する東京湾方向へと離陸。高度約13mまで上昇し、約150mの区間をおよそ3分30秒かけて周回飛行した後、離陸地点の駐車場へと着陸した。低速での飛行ではあったものの、都市部での限定空域運用を想定した性能確認という意味でも意義のある内容となった。
福澤CEOは、「SD-05型は他のeVTOLと比較して小型で、20m四方のスペースがあれば離着陸が可能です。大規模な用地確保が難しい都市内での運用に適しています」と説明する。さらに現在、航空機としての型式証明取得に向けた手続きを進めており、「2028年までには型式証明を取得し、乗客を乗せた実運航を開始したい」と将来展望を語った。
顔認証と統合管制を備えた“移動式ターミナル”の検証
今回の実証で注目を集めたのは、機体の飛行だけではない。旅客の搭乗を前提としたターミナル機能を含めた一体運用の検証が行われた点にある。公開されたターミナルはトレーラーハウス型で移動が可能な仕様となっており、約54m²の内部には保安検査エリアやラウンジエリアを備える。利用者は予約から入場、搭乗までの一連の手続きを顔認証で完結できる設計だ。
併設されたコントロールルームでは、搭乗者情報や離着陸を含む運航情報に加え、周辺約4km圏内の航空機の飛行状況を一元的にモニタリングできる体制を構築。これには、兼松が資本提携する英国のバーティポート開発企業Skyportsのシステムが導入されている。さらに、公募により参加したモニターによって保安検査や搭乗動線の検証も行われ、将来的な商用化を見据えたオペレーション面の課題抽出が進められた。
三菱地所の土山氏は、「空飛ぶクルマの社会実装には、航空機における空港のような役割を果たすターミナルの整備が不可欠です。今回の実証では、社会実装に必要な最低限のインフラを整えたうえでの一体運用を検証しています」と説明。
機体性能のみならず、地上インフラ、認証技術、運航管理システムまでを含めた統合的な実証は、2030年の都内商用運航という目標に向けた重要なステップといえる。都市型eVTOL運用の現実解を探る取り組みは、いよいよ“飛ばす”段階から“回す”段階へと移りつつある。
