(引用:コカ・コーラクリスマスドローンショー2024)

 2024年11月から12月にかけて神戸と横浜で開催された「コカ・コーラクリスマスドローンショー2024」は、国内最大手のドローンショー企業・レッドクリフが手がける圧巻の演出で観客を魅了した。1225機のドローンが織りなす光のアートや、花火を搭載したドローンによるサプライズ演出など、華麗なショーを展開。やや時間がたってしまったが、ドローンショーを自分の目で見たいという人々が多数押し寄せ、活気に満ちていた会場の模様をレポートする。

国内最大手レッドクリフが手がける圧倒的パフォーマンス

「コカ・コーラクリスマスドローンショー2024」は2024年11月27日(水)に神戸、12月7日(土)に横浜で開催された。神戸では初開催、横浜では2023年に引き続き2度目の開催となる。筆者は2023年に横浜で開催された同ショーを現地で観覧。光り輝くドローンで次々と形作られる様子にすっかり見入ったことを覚えている。

 コカ・コーラクリスマスドローンショー2024の運営は国内ドローンショー最大手のレッドクリフが手がけた。2024年における同社の躍進は目覚ましく、夏の多い時期には全国各地で1日に複数件を同時に実施したこともあったという。また日本では初めてとなる、花火を搭載したドローンによるショーの成功も実現した。時系列が前後するが、2024年大晦日から2025年元日にかけては、神戸で日本最大規模となる2025機を使ったドローンショーも成功させ、2024年のドローン業界におけるMVP的な活躍ぶりといえよう。

横浜の混雑する観覧エリアで安全に配慮して感動を提供

 12月7日午後、筆者はコカ・コーラクリスマスドローンショー2024が開催される横浜新港ふ頭付近を訪れた。ここは東京湾内をクルージングする観光船が発着する客船ターミナルを備えた横浜ハンマーヘッド、商業施設のマリンアンドウォークヨコハマや横浜赤レンガ倉庫2号館がある一帯に当たる。周辺では恒例イベントである華やかなクリスマスマーケットも開催されており、ホリデーシーズンを楽しむ人々で大変な混雑だった。

 横浜の会場にはマリンアンドウォークヨコハマの前に第1観覧エリア、赤レンガ倉庫2号館前広場に第2観覧エリアを設けていた。当日15時から整理券を配布すると予告されていたため、10分ほど前に第1観覧エリアに行くと、「これから並んでも整理券は手に入らない」とアナウンスが行われていた。第2観覧エリアに転じても同様だった。どうやら事前に並んだ人たちだけで整理券の予定枚数に達したようだ。ドローンショーに対する人々の興味関心が非常に高まっていることの証左といえるが、今後の開催では事前応募・抽選制にしたり、有料の観覧席を設けたりする対策が必要になるだろう。

 やがて日はどっぷりと暮れ、会場付近を飾るイルミネーションの輝きがより目に飛び込むようになった。整理券を得られなかったものの、会場の混雑具合を確認するため、第1観覧エリア付近を歩いた。ここは目前が海になっており、ドローンショーが行われる空域から最も近い場所に当たる。エリア内にはすでに観覧者が集まり始めていた。背後に目を転じると、通路を挟んでマリンアンドウォークヨコハマの前に多くの人々が三重四重に列をなしている状況。警備員が通路を確保するため、立ち止まらないように歩行者に注意を続けていた。

写真:4階ベランダから見た夜景
横浜赤レンガ倉庫2号館の4階ベランダから会場付近を眺める。画面左上の紫色にライトアップされたクレーンの右側でショーは展開された。

 第1観覧エリアと第2観覧エリアの間には旧横浜港駅プラットフォームというモニュメントがあり、その周囲が地上も上空も開けた場所になっている。この付近にも多くの観覧者が集結していた。筆者も一画に立ち開始を待つことにしたのだが、次々と人々が集まる状況で、車道に立つ人もちらほら。これには混雑ぶりを見て駆けつけた地元の警察当局が対応に入り、今後はさらなる連携強化を図って協力していくことになったという。

花火とドローンの共演で観覧者を魅了

写真:上空に打ち上がる花火
横浜スパークリングトワイライトの花火。車道を含めて多くの人々が観覧に訪れていたとわかる。

 19時15分から開始予定のドローンショーの前に、19時から5分間、「横浜スパークリングトワイライト」の花火が打ち上げられた。ドローンショーと花火がセットで行われるケースが増えている。横浜スパークリングトワイライトは2024年度の30日程度、このような短時間花火を打ち上げるイベントのためセット開催の事例ではないのだが、夜空を彩るイベントを1度で2種類も味わえると、観覧者の満足度はかなり向上するに違いない。

 花火が終わって硝煙が消え、いよいよショーの開幕……かと思いきや、いっこうに始まる気配がない。どうやら相当数の観覧者が集まっているため、ドローンショーで使用する電波と観覧者のスマートフォンの電波が干渉してしまっているようだ。海の側特有の強風が吹き、10℃前後の気温のなか、スタートをいまか今かと待つ観覧者たち。そこへ「スマートフォンの機内モードへの切り替えに協力を」というアナウンスが聞こえた。これにより電波干渉をやわらげられるという。

トナカイからコカ・コーラの炭酸表現まで精密な空中演出

写真:ドローンショーの様子。サンタクロースが乗ったソリをトナカイがひいている。
トナカイを従えて空を飛ぶサンタクロース。ソリの荷台部分の厚みや、底のカーブがうまく表現されていることがわかる。

 花火の終了から40分ほどが経ったとき、にわかに「ブーン」というドローン特有のプロペラ音が付近に響き渡った。「いよいよ始まるのか?」と思うやいなや、目の前の上空にパッと光って現れたのが、3頭のトナカイを引き連れたサンタクロースだ。2023年も同様の描写があったが、2024年はよりダイナミックになった印象を受けた。調べたところ、使用されているドローンの台数は2年とも同じ1225機だ。

 筆者が保存していた動画で2つの描写を見比べてみると、2024年のほうが2023年よりもトナカイを引く手綱を長くしたようだ。また、光点の密集度が2023年よりも2024年のほうがゆるくなっている。つまり1点同士の間隔が広がっている。その結果、描かれるイラストは同様でも大きく見せることができるようになったという仕組みだ。

写真:ドローンショーの様子。コカ・コーラのロゴが入った赤いトラック。
トラックにはタイヤ部分の光り方を変化させて回転する描写が取り入れられた。

 次に登場したのがコカ・コーラのロゴがコンテナに入った “コカ・コーラ トラック” だ。こちらもコンテナ部分が2023年のものよりやや長くなったように見受けられ、ボリュームが増した印象だ。コカ・コーラ トラックはプレゼントボックスに姿を変え、さらにクリスマスツリー、そして独特のくびれを持つコカ・コーラの瓶へと変化。そのたびに周囲の観客から歓声があがった。おそらくドローンショーを初めて見る人が多かっただろう。目の前で次々といろいろな形が立体的に紡がれていく様子は、ほかであまり見る機会がない。純粋に驚きと感動に近い感情が湧き上がっていたに違いない。

写真:ドローンショーの様子。グラスに注がれるコーラの泡をドローン搭載花火で表現している。
20機以上の花火搭載ドローンを使用して炭酸の泡立ちを表現。まず注ぎ口の花火が発火し、グラスの底から上に向かって順番に花火が光ることで、コーラがグラスに注がれる様子が描写された。

 コカ・コーラの瓶をシュポっと開ける描写に続いて現れたのがグラス。さらに瓶が傾きコーラを注ぐようにすると、なんと空中で炭酸がシュワシュワと弾けている! レッドクリフの伝家の宝刀・花火搭載ドローンを使用し、炭酸を見事に表現していた。筆者も思わず感心し歓声をあげた。まさにコカ・コーラドローンショー2024のハイライトといえるポイントだ。

写真:ドローンショーの様子。「カンパイしよう!」
夜空にあがった「カンパイしよう!」の文字。可読性になんら問題はない。
写真:ドローンショーの様子。瓶を手に持つサンタクロース。
サンタクロースが瓶を持ってポーズする様子も、腕を前に突き出すなどアニメーションが施された。

 このあとは「カンパイしよう!」の文字が空に浮かび上がり、豊かなヒゲを蓄えたサンタクロースが登場。さらに再びトレーラートラックが出現して、夜空へ向かって消えていった。コカ・コーラの英語のロゴ、さらにコカ・コーラ製品がプレゼントされるQRコードが表示され、一連のショーは終了した。

写真:ドローンショーの様子。QRコード(PRESENT FOR YOU)
プレゼントが提供されるQRコードもはっきり読み取れるように表示された。
写真:会場を埋め尽くす観客。スマートフォンで撮影する人々。
(提供:コカ・コーラクリスマスドローンショー2024)
多くの観客が集まり、ドローンショーの演出に魅了されていた。ドローンショーはSNSなどでも拡散されやすい傾向にあり、スポンサーのPRとしても高い効果が見込めそうだ。

2025年に向けて新機体を導入!さらなる演出の進化に期待

 1000機以上を使って大きくビジュアルを見せるだけでなく、動きや色みの変化も多く、おおいに楽しめるショーだった。これは3DCGアニメーターをスタッフに持ち、アニメーションの描画力の高さで定評のある同社だからこそできる構成でもある。一方で、会場付近には観覧者が多く、警備員が常に声がけを行っていた。観覧者がどの程度集まるのか読み切れなかったと考えられる。事後の取材では、観覧者によるスマホの電波干渉や風が強かったことが、ショーのスタートの遅れにつながったということが判明した。機体の進化とともに今後の改善に期待したい。

 レッドクリフでは2025年にスモークやレーザーなどのアタッチメントに対応した新機体の導入を予定している。2025年の年末、新鮮な演出を交えたコカ・コーラドローンショーにまた会えることを望む。