2026年3月11日、ポケット・クエリーズは、建築研究所との共同研究「ロボット等を活用したフェーズフリーな都市・建築の被災状況把握技術の開発に関する研究」として、ヒューマノイドロボットおよび四足歩行ロボットの協調制御による被災建築物調査の無人化システム開発の段階的な実証実験を開始したと発表した。

 この取り組みは、日本政府が掲げる重点投資対象17分野に関連する技術開発であり、激甚化する自然災害に対する迅速な状況把握と、現場調査を担う専門技術者不足に対応するものとなる。フィジカルAIと複数ロボットの協調制御技術を社会実装することで、危険を伴う被災地調査の完全無人化や調査業務の抜本的な効率化を図る。

 ポケット・クエリーズと建築研究所は、これまでの共同研究「四足歩行ロボット×デジタル技術の開発と災害時の活用検証」を通じて、複数の四足歩行ロボットによる建物調査技術の開発や、現実空間を仮想空間に再現するデジタルツイン(VR)を用いた遠隔操作システムの構築など、被災地調査の安全性向上に取り組んできた。今回の共同研究では、これまでの実証実験の成果と課題を踏まえ、さらなる技術的飛躍を目指す。

 従来の四足歩行ロボット単体では困難であった人間用機材を用いた高度な調査作業や、現場での直感的な状況判断を実現するため、新たに二足歩行ロボットを導入する。ドローンによる上空スクリーニングと四足歩行ロボットによる不整地移動支援を組み合わせ、平常時から災害初動・復旧段階まで一貫して運用が可能な「フェーズフリーな無人調査システム」の開発に取り組む。

運用体制の概要図
ロボット等を活用したフェーズフリーな都市・建築の被災状況把握技術の運用体制

取り組み内容

 この共同研究では、遠隔地の操作拠点と現場の異機種ロボット群をネットワークで統合し、調査・記録プロセスを完全自動化する運用体制を構築している。

【システムの主な特長】

  • 直感的な遠隔操作と身体的対話
     VRとヘッドトラッキングによる低遅延な視点同期を実現。ヒューマノイドロボットがレーザー距離計等の人間用機材を直接扱い、異常発見時には頷きや指差し等の身体的対話を行うことで、現場との強い実在感を創出する。
  • 異機種ロボットの協調動作
     ドローンによる上空スクリーニング、人間用機材を扱うヒューマノイド、不整地走破を担う四足歩行ロボットが相互に連携し、現場の状況を立体的に把握する。
  • 事務フローの完全無人化
     AI画像認識による損傷検知を起点に、写真撮影から危険度判定、既存フォーマットへの帳票自動入力までを自動化。声による指示のみで調査記録が完結する効率的な作業を実現する。
遠隔統括システム構成図
ヒューマノイドロボット等を活用した被災建築物調査システム(遠隔統括システム構成図)

実証実験の概要と成果

 システムの社会実装に向け、実際のフィールド環境で実証実験を行い、都市・建築分野における被災状況把握への適用可能性およびシステムの有用性を確認した。

  • 第1段階:基礎検証
     ロボットの基本動作、通信・同期プロトコル、センサー取得機能の確認、および実験手順と安全対策の妥当性を確認することを目的に、各種ロボットの移動性能の確認、LiDARやデプスカメラ等によるセンサーデータ取得および通信状況の検証、簡易的な被災状況把握の試験を実施した。
  • 第2段階:実用性・性能検証
     開発システムに関わる総合的な性能評価と、現場運用における実用性の検証を行うことを目的に、実際の被災状況を想定し、模擬損傷部や傾斜角・沈下量・変形量を定量的に判断できるスケールを評価尺度として設置。被災建築物調査を想定した一連の調査プロセスにおいて、ヒューマノイドと四足歩行ロボットによる高度な協調動作を含む調査試験を実施した。
写真:被災建築物調査技術の概要と実施体制
ヒューマノイドロボット等を活用した被災建築物調査技術の概要と実施体制

 実証実験を通じて、専門技術者による「人による調査」と「ロボット群による無人調査」の特性差(視認性の違い、データ取得の網羅性など)が定量的に明らかになった。今後、これらの特性差を埋めるためのセンサーチューニングや実運用上の課題となる通信環境の安定化等を含め、実戦投入に向けたシステムの改良を進める方針だ。

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