2026年4月14日、JISDA(日本技術安全保障戦略機構)は、完全国産の固定翼ドローン「ACM-01 Shiraha」の提供開始を発表した。

 Shirahaは、木製の機体構造を採用した訓練・短距離運用向けの固定翼無人機。翼長は1.9mで、コンポーネントまで含めて国産で構成されている。訓練用途に必要な最低限の仕様に絞ることで原価7万円を実現した。

 この機体は、訓練現場で継続的に使い、必要に応じて損耗・交換しながら運用能力を高めていくことを前提に設計している。JISDAはShirahaの提供を通じて、より多くの現場で継続的に固定翼ドローン訓練が行える環境づくりを支援するとしている。

写真:飛行するACM-01 Shiraha
ACM-01 Shiraha イメージ画像

 JISDAおよび無人アセットコンソーシアム「RISE」では、防衛・技術安全保障の観点から、無人機・ロボティクス・AI等の研究開発、製造、運用、後方支援を横断的に推進する取り組みを進めている。RISEは、単一の製品開発ではなく、国内で継続的に改善可能な無人アセット産業基盤を構築するための枠組みであり、Shirahaもその延長線上に位置づけられる。

 無人機の運用では、機体の性能だけでなく、部材の確保や製造、補充などの供給体制が運用能力の一部になる。JISDAは、国内の優れた要素技術や製造力が十分につながらず、統合された運用基盤として機能しにくいという課題認識のもと、RISEを通じた国内サプライチェーン開拓を進めている。Shirahaは国産の構成を前提に、訓練で必要な数量を継続的に供給できる体制づくりを視野に開発された。

 JISDA創業チームは、法人設立以前からウクライナで継続的に現地調査を行ってきた。前線周辺やロシア国境に近い地域まで足を運び、装備が使われる環境や損耗の状態、改修方法、運用者のニーズについて継続的に分析を重ねてきた。無人機は対策され、破損し、改修を行い、再び使用される。前線では周波数や映像伝送、航法、アンテナ配置、機体構成、ペイロードの扱い方などが週単位で見直され、継続的に訓練を行い、補充し、改善できる体制が戦力の一部になっている。Shirahaは、こうした知見を日本の訓練基盤整備に落とし込む試みとなる。

 また、JISDAが提供するドローン訓練・保管・補充パッケージ「Skill House」でも、継続的に運用可能な環境の整備を重視している。損耗を前提とした訓練環境、機体ストック管理、修理・補充対応、実践的な訓練を一体で提供することで、利用者が訓練に集中しやすい仕組みを構築する。Shirahaもこの考えに基づき、固定翼機の訓練用途に必要な最低限の仕様を導入しやすい価格帯で実現することを目指した機体である。

製品の特長

 Shirahaは木製の機体構造を採用し、コンポーネントまで含めて国産で構成されている。国内で組み立てるだけでなく、部材調達や製造、組み立て、検査、品質管理までを視野に入れた国内での供給体制と接続しやすい構成を前提としている。これにより、継続的な供給、現場ニーズに応じた迅速な改良の両立を目指す。

 原価7万円という水準は、訓練用途での利用を前提に、必要最低限の仕様に絞り込んだ構成によるものである。訓練の現場では十分な回数を飛ばし、失敗も経験しながら操縦、整備、運用判断を磨いていくことが重要になる。訓練で繰り返し使える価格設計がこれを実現する。

 Shirahaは、訓練に加えて短距離運用での活用も想定している。原価7万円は訓練用途を前提とした最低スペック構成であり、航続距離の延伸、通信性能の強化、各種機能の追加など、用途に応じて価格は上昇する。まずは訓練の土台となる機体を低コストで提供し、必要に応じて拡張できる設計思想が実用的であるとしている。

JISDA代表取締役 國井翔太氏のコメント

 私たちは、ドローンの機体そのものにこだわることは、本質的ではないと考えています。技術者やラジコンに親しんだ人からすれば、飛ぶ機体を作ること自体はそこまで特別なことではありませんし、価格を気にしなければ、ペイロードや航続距離、通信性能といったスペックはある程度引き上げることができます。

 しかし、現代の意味で実戦に投入可能な無人機とは、単に空を飛ぶ機体のことではありません。無人飛行体という技術的コンセプト自体は18世紀ごろから存在しており、現在の無人機の価値は、ネットワーク接続性、リアルタイム処理、自律性、耐ジャミング性、運用戦術との統合、補給性など、多層的な技術と運用の統合によって初めて成立しています。つまり、機体の技術そのものが革新的だったというより、技術要素の小型化・民生化、ソフトウェアによる制御統合、そして社会・産業システム側の受け皿が整ったことで、防衛イノベーションが現実のものになったと私たちは捉えています。

 今回の『Shiraha』では、まず必要最低限のスペックでどこまで価格を下げられるかを出発点に据えました。原価7万円という数字を示したのは、単なる価格訴求のためではありません。高価な機体を限られた場面で使う発想から脱し、無人機をサービス・ソリューションとして、現場で繰り返し使えるものとして捉える方向へ、日本のマインドセットを変えていきたいと考えているからです。

 また、素材そのものを過度に神聖視する必要もないと考えています。木製であることは一つの特徴ではありますが、素材自体が本質なのではありません。重要なのは、制御の質とコストのバランスです。1機を極めて高精度に仕上げることよりも、安価な複数機体を柔軟に運用した方が全体最適になるかもしれませんし、群制御やセンサー配分の工夫によって、システム全体のコストを下げられる可能性もあります。私たちは、単機性能ではなく、全体の運用設計の中で価値を考えるべきだと考えています。

 21世紀の産業構造は、ハードウェアとソフトウェアの統合によって大きく変化しました。かつてはモノそのものの性能が価値の源泉でしたが、現在では、それを通じてどのような体験、意味、秩序を提供するのか、すなわち『コト』を設計する力が競争の中心になっています。『Shiraha』は、そうした時代認識の中で生まれた機体です。私たちはこの機体を、単なる一製品としてではなく、日本における無人機のイノベーションの循環をつくるための起点として位置づけています。