2026年3月30日、FullDepthは、東洋エンジニアリング(以下、TOYO)、日鉄エンジニアリング(以下、NSE)、沖電気工業(以下、OKI)と共同で、AUV(自律型無人探査機)等を活用した洋上風力発電設備の水中点検作業の無人化に向けた実証試験を実施したと発表した。

 実証試験は、FullDepth製の遠隔操縦技術や自動航行機能を搭載したROV(遠隔操作型無人潜水機)、エイトノット所有のASV(自律型海洋無人機)、東京大学生産技術研究所巻研究室所有のAUVを組み合わせ、OKI所有のバージ船において、浮体式洋上風力発電設備の水中部点検を想定して行った。

 FullDepthは、AUVやROV、ASVを活用した洋上風力発電設備の水中部点検における現在地を示すとともに、これらを活用して同設備の水中点検を無人化するための技術・運用課題を抽出し、AUV等の社会実装に向けた具体的な将来展望を提案した。

 なお、この事業は内閣府総合海洋政策推進事務局の「自律型無人探査機(AUV)利用実証事業」の採択を受け実施したものとなる。

実証試験の概要

 2025年10月、静岡県沼津市でROV、ASV、AUVを組み合わせた実証試験を行い、固定式計測バージ「SEATEC NEO」の水中部に対して映像やソーナーを用いた点検作業を行った。この試験により、洋上風力発電設備の水中点検作業の自律化と無人化に向けた技術的・運用的な課題(海底部の点検方法・運用体制など)が明らかになった。

「自律型無人探査機(AUV)利用実証事業」成果報告(FullDepth YouTubeチャンネル)

 この課題を踏まえ、2030年および2040年に想定される水中点検システムの将来像を検討。ASVとAUVを組み合わせて広範囲の点検作業を自律的かつ無人で行うシステム構成など、海洋ロボティクスを最適配置することで効率化・低コスト化を図る。あわせて、継続的な技術開発や検証、長期実装試験の実施などを整理し、早期社会実装に向けたロードマップを提案している。

水中点検システムの将来像
2040年に想定されるAUV等海洋ロボティクスを活用した点検システムの将来像(イラスト:東洋エンジニアリング)

① ホバリング型AUVは水上基準点の測位支援により水中自己位置を把握し、係留ライン、送電ケーブルなどの点検作業を行う。
② ASVはAUVが収集したデータを水中通信により受信し、DXパネルへ送信する。
③ AUVは自身のバッテリー残量が低下すると自律的に海底ステーションへ移動し、充電やデータ通信を行う。
④ 航行型AUVは海底基準点の測位支援により水中自己位置を把握し、ソーナー等を用いて海底ケーブルの状態を点検する。

FullDepthの主な取り組み

自動航行可能ROVとASVを組み合わせた実証試験

 自動航行可能なROVとASVにより目標地点まで移動し、遠隔操縦に切り替えてROV搭載カメラとソーナーを用いた係留ライン、海底ケーブルの点検を実施した。特に海底ケーブル点検では独自技術を活用したソーナーマッピングにより、海底ケーブルおよびアンカーブロックの状況把握を行った。

【使用機材】

写真:ROV「DiveUnit300 Lite」
FullDepth製ROV「DiveUnit300 Lite」
写真:ASV「Eight Knot Ⅰ」
エイトノット所有ASV「Eight Knot Ⅰ」

【試験手順と成果】
1. ASVの自律航行で目的地点①に移動。
2. ROVを投入し、GNSSによる自動航行を遠隔で指示して目的地②に移動。
3. ROVを遠隔手動操縦に切り替え、海底ケーブルの目視点検、ソーナーマッピングによる点検を実施。

自動航行・遠隔操縦による海底ケーブル点検実証実験

自律追従機能を持つAUVを使った実証試験(東京大学生産技術研究所)

 自律制御によりケーブル追従機能を有するAUVを用いて、自律でのケーブル撮影、3次元座標データの取得を実施。AUVの運用およびデータ解析は東京大学生産技術研究所巻研究室が担当した。

写真:AUV「Tri-TON」、ケーブルの3次元座標データ
左:東京大学生産技術研究所巻研究室所有AUV「Tri-TON」、右:ケーブルの3次元座標データ

 FullDepthは2030年ごろのAUV等の社会実装を目標に、洋上風力発電事業を対象としたAUVや、AUVを用いたデータ取得技術を開発し、海洋データ利活用基盤の構築など海洋産業における新たな価値創造を目指すとしている。

【各社役割】

TOYO・事業全体取りまとめ
・社会実装に向けた各種課題の取りまとめとロードマップの作成
・サービスプロバイダ、海洋データ利活用基盤の検討
NSE・実証試験の取りまとめ
・AUV等海洋ロボティクスの社会実装に向けた運用的課題の整理
・サービスプロバイダ、海洋データ利活用基盤の検討
FullDepth・ROV「DiveUnit 300 Lite」の提供・運用
・AUV等海洋ロボティクス開発における技術的課題の整理
OKI・実証試験対象である固定式計測バージ「SEATEC NEO」の提供・運用
・水中インフラ開発における技術的課題の整理