秋田県立大学、東光鉄工、秋田県大仙市は、2021年度から5年間にわたり、農業用ドローンを活用した水稲湛水直播農法の確立を目的とする産学官連携の現場実証に取り組んできた。2026年2月17日、その成果を体系的に整理した「農業用ドローンによる水稲湛水直播作業と栽培の手引き」を公開した。

 この取り組みは、内閣府の地方創生推進交付金事業(Society 5.0)として採択され、「秋田版スマート農業モデル創出事業」の一環として実施したものとなる。予算額は16億円。

 このマニュアルは、ドローンと高精度衛星測位を組み合わせた省力的で再現性の高い稲作技術を実装可能な形で整理したものであり、全国の水稲生産者、自治体、農業関係機関での活用を想定している。

 地方農業は、水稲生産者の高齢化、担い手不足、耕作放棄地の拡大による里山荒廃や獣害の深刻化などの問題に直面している。これは一地域に限ったことではなく、国の食料安全保障、国土保全、地方定住の維持と密接に関わる国家的な課題である。

 こうした課題に対し、収穫期まで水田に立ち入る必要がない超省力型の稲作体系を確立することを目的に実証実験を実施した。

写真:圃場の上を飛行するドローン
農業用ドローンによる湛水直播作業の様子

 この取り組みの最大の特徴は、準天頂衛星「みちびき」によるセンチメートル級測位補強(CLAS)を活用した、高精度自動飛行による水稲直播技術である。国産農業用ドローンを採用し、安全性と情報セキュリティーに配慮した上で播種や除草剤散布を高精度自動航行で実施する。中山間地域や小区画・不整形圃場にも対応可能な作業体系を実証し、日本の地形・農地条件に適合した独自モデルを確立している。

自動飛行の軌跡
播種作業時の農業用ドローンの自動飛行軌跡。圃場を往復して二度撒き散布を行った(赤色線:往路、青色線:復路)

主な実証成果

作業能率

水稲湛水直播1haあたり約1時間
除草剤散布1haあたり約0.25時間

収量評価

  • 4年間平均では移植栽培比で若干減収
  • 新型粒剤散布装置と高精度自動飛行を導入した直近3年間で移植栽培比を平均3%減まで改善

経営・地域効果

  • 育苗作業の削減、春作業の平準化による労力低減
  • 経営面積拡大への対応力向上
  • 中山間地域における作業継続性の確保と国土保全への寄与
直播と移植の収量を年度ごとに表したグラフ
水稲湛水直播と移植栽培の収量比較 ※栽培年によって天候等が大きく変動することもあり、実証試験で得られた収量を担保するものではない

 このマニュアルでは、5年間の実証を通じて得られた成果と課題を踏まえ、「使用機体・散布装置の仕様」「播種量・飛行設定の具体例」「種子コーティング方法」「播種後の水管理・除草体系」「現場で留意すべき課題と対策」を、現場で再現可能な形で体系化している。

 生産者だけでなく、自治体や農業関係機関、スマート農業導入を検討する地域にとって、実装を前提とした実践的技術資料として活用されることを想定している。

 この技術は、国の食料安全保障政策への貢献や若年層の稲作参入促進と地域定住、中山間地域における持続的な農地利用といった観点から、今後さらに重要性が高まることが期待される。また、耕作放棄地の抑制を通じた里山環境の維持や、特に東北地方で問題となっているクマの出没抑制への波及効果も期待される。

▼農業用ドローンによる水稲湛水直播作業と栽培の手引き
https://tokouav.jp/files/libs/3822/202602131621091263.pdf