2026年2月18日、MizLinx(以下、ミズリンクス)、LAplust(以下、ラプラス)、ながさき地域政策研究所、NTTドコモビジネスは、長崎県五島市と連携し「水産業務の効率化による持続可能な漁業の実現や藻場の生育状態の即時的な把握」を目的とした実証実験に成功したことを発表した。

 この実証により、920MHz帯の周波数を利用した通信手段である「Wi-Fi HaLow」を活用して漁場でモニタリング環境を構築し、陸上からの出漁判断や養殖いけすの遠隔監視を可能とする。また、ガンガゼ(海藻をエサとするウニの一種)の生息調査に自律型水上ロボットを用いることで、効率的な調査を実現する。

 なおこの実証は、総務省「令和7(2025)年度 地域社会DX推進パッケージ事業」に採択され実施するものとなる。

 長崎県五島市の定置網漁業や養殖業を行う場所は通信環境が不安定であるため、定置網内の魚の様子や周辺の異常を把握するには、定期的に船を出して現場に行く必要があった。また、ガンガゼなどの植食動物が海藻を過剰に摂食することで起こる磯焼けが広範囲で発生し、藻場の面積は年々減少傾向にある。磯焼けの対策には潜水して植食動物を除去する必要があり、ガンガゼの生息域の調査・駆除が負担になっている。

 労力やコストを削減し、効率的な漁を実現するため、通信が不安定なエリアにおける遠隔モニタリングモデルの構築を目指し、同実証を実施した。

実証のイメージ図

Wi-Fi HaLowを利用した、水中映像のリアルタイムモニタリングおよび洋上と陸上間でのコミュニケーション

 ミズリンクスが開発した通信中継専用ブイにWi-Fi HaLowを搭載し、Wi-Fi電波をホッピング(※1)させることで、陸上から1.5km離れた定置網設置箇所まで安定的に通信を確立させた。さらにWi-Fi HaLow経由で、水中映像のリアルタイムモニタリング、および洋上と陸地間での音声や画像でのコミュニケーションを取ることに成功した。これにより、陸地で定置網内の状況を確認した上での出漁判断や、漁場から陸上への連絡に要する時間の短縮による漁港での水揚げ準備の効率化、平時および緊急時における情報共有の迅速化が期待される。

※1電波を複数の機器で順番に中継することで、通信できる距離を遠くまで延ばすこと。

MizLinx Monitorから通信中継専用ブイを使ってWi-Fi電波をホッピングさせるイメージ図
「Wi-Fi HaLow」の利用イメージ図
写真:養殖場に浮かぶ「MizLinx Monitor」
洋上に浮かべた海洋IoTモニタリングシステム「MizLinx Monitor」

画像認識AIを利用した魚のへい死やいけす周辺の異常検知

 養殖いけす周辺に監視カメラを設置することで、カメラ1台あたりいけす4台の撮影を実現した。撮影した動画をラプラスが開発した画像認識AI「LA-Eye」により解析することで、魚のへい死やいけす周辺の異常検知に成功した。

写真:いけすに設置された監視カメラ
養殖いけすに設置した監視カメラ
異常解析システムの出力画面(魚のへい死数、いけす周辺の異常数の時系列チャート)
AIによる異常解析システムの出力画面
へい死した魚がマークアップされた画像
画像認識AI「LA-Eye」で検知した魚のへい死

自律型水上ロボットを用いたガンガゼの生息調査

 長崎県五島市にある水ノ浦湾では、ガンガゼの生息調査を1週間かけて湾内の一部のみで実施していた。今回、自律型水上ロボットを用いることで、2日間で水ノ浦湾全体の調査を完了することができた。これにより、ガンガゼの駆除範囲の拡大、調査時間の短縮による漁業活動への専念が可能となる。

写真:水上ロボットと、その後ろを追う複数の人が乗った船
自律型水上ロボットによる調査の様子

【各社役割】

MizLinx実証の実施、「MizLinx Monitor」の開発
LAplust実証支援、画像認識AI(LA-Eye)を用いた動画像解析および海のヒートマップの作成
ながさき地域政策研究所実証支援、磯焼けに関する課題の整理
NTTドコモビジネス実証支援、クラウド間の閉域網やインターネットとの接続などの通信環境の提供、「Wi-Fi HaLow」の技術を使用する実証の環境構築


 今後、海洋IoTモニタリングシステム「MizLinx Monitor」の量産化と全国販売を進めるほか、今回の実証内容と成果を全国に普及させていく方針だ。磯焼け問題や漁業の人手不足が進む地域へ水平展開し、持続可能な漁業の実現を目指すとしている。