2025年12月15日、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)新潟支社、第一建設工業、東鉄工業、エアロセンスの4社は、VTOL型ドローンのレベル3.5による自動飛行機能を活用した鉄道斜面確認の実証実験を、2025年4月に只見線、12月に上越線で実施したと発表した。
従来はヘリコプターやマルチコプター型ドローンで実施していたが、この手法により冬季斜面の状況把握の選択肢が増え、より適切な規模での斜面調査が可能となる。
試験概要
JR東日本新潟支社は、豪雪地帯での降雪時の安全運行のため、山間部では沿線斜面の積雪の状況やなだれ発生の調査などを適宜実施している。社員による車両や徒歩での調査に加え、広域調査ではヘリコプター、スポット調査ではマルチコプター型ドローンを活用している。中距離の調査では、移動しながらマルチコプター型ドローンを使うこともあり時間を要していた。中距離の冬季斜面調査の効率化を対象に、VTOL型ドローンの適応性を検証した。
実証実験は、只見線大白川駅~上条駅間および、上越線土樽駅~越後湯沢駅間で実施した。飛行時には、新潟市中央区施設管理部門などの離れた場所への飛行画面リアルタイム共有試験を行ったほか、ドローンへ搭載する機材や斜面状況調査への適用性を評価した。
磐越西線(2023年3月、2024年3月)
磐越西線の馬下駅〜喜多方駅間の約75km区間(※1)を6分割して、VTOL型ドローンにより最大35kmの自動飛行を行い、災害時の一次調査の適用性を検討した。最高速度100km/hで飛行し、飛行時のリアルタイム映像およびカメラ画像からオルソ画像や3次元点群データの生成を行い、災害発生時の一次調査を実施することができた。
※1 JR東日本新潟支社、第一建設工業、エアロセンスの3社で実施
只見線(2025年4月)
只見線の大白川駅〜上条駅間の約10km区間(※2)において、VTOL型ドローンのレベル3.5による自動飛行を行い、斜面状況調査への適用性を検討した。その結果、飛行時のリアルタイム映像および飛行後のジンバルカメラ撮影動画を用いて斜面の積雪状況を把握することができた。従来の点検手法と同等の精度で、より迅速な調査が実施できた。
※2 JR東日本新潟支社、第一建設工業、東鉄工業、エアロセンスの4社で実施
上越線(2025年12月)
上越線の土樽駅〜越後湯沢駅間の約10km区間(※3)において、より実環境に近い冬季における実証試験を実施した。位置情報とライブ映像を現地から離れた場所(新潟市中央区にある施設管理部門)へウェブ配信することで、現地の状況をより速やかに把握できるようになった。只見線で使用したジンバルカメラを固定カメラに変更し、積雪下の3D点群データおよびオルソ画像の生成、データの適用性拡大について検討を行った。
※3 JR東日本新潟支社、東鉄工業、エアロセンスの3社で実施
【使用機体・記録装置】
試験で用いたエアロセンス社製のVTOL型ドローン「AS-VT01K」は、第二種型式認証を取得済みで、国家ライセンス所持者が飛行させる場合は目視外飛行の申請が不要となり、LTE通信による遠隔操作と最大50kmの自動飛行が可能。固定カメラやジンバルカメラを搭載でき、只見線ではジンバルカメラ、上越線では固定カメラを活用した。また、フロントカメラの映像をリアルタイムで確認して調査を行った。
4社は、今回の実証実験を踏まえ、2025年度冬季の斜面検査へのVTOL型ドローンの活用を引き続き検討する。また、新型VTOL型ドローン「AS-VT02K」の活用も検討している。同機はIP43の防塵・防滴性能を備えており、少雨下でも飛行できることから、用途の拡大が期待される。さらに、二分割式のコンパクトな運搬ケースに収納できるため、東京都内からの機体輸送について、列車荷物輸送サービス「はこビュン」の検証も行う予定だ。新幹線輸送による速達性や安定性を生かし、VTOL型ドローン機材の迅速な手配や災害時の緊急輸送などの検討を進める。
今後も新型機材の活用や、はこビュンを活用した迅速な機体輸送の検討、他路線での運用に向けた飛行計画策定について検討を進め、調査業務におけるDXを推進するとしている。
