ロジクトロンは、2025年10月21日、近畿大学、近大アシストが主催する医療資材のドローン輸送実証実験に協力企業として参画した。

 実証実験は全行程を自動航行で行い、予定していたポイントに荷下ろしすることに成功した。

写真:荷物を吊り下げて飛行するドローン

 この実証は、医療資材の自動輸送の社会実装に向けた検証を目的としており、技術的課題の検証もあわせて実施した。

1. 医療資材の自動運搬に関する検証(実証の主目的)

  • 倉庫から病院などの医療機関へ医療資材を無人で輸送する将来的な運用モデルの構築。
  • 医療資材(ガーゼ、輸血セット等)13.6kg(ワイヤー等の吊り具を除く)を実際に輸送し、離陸から荷下ろしまでの一連の流れを検証。
写真:3つの段ボールに収められた輸送物資
ガーゼや輸液セットなどの医療資材

2. フォトグラメトリーによる3D空間を用いた自動航行ルート設計(技術検証)

  • 写真測量技術で生成した高精度3D空間をもとに航路を作成。
  • 既存の建築物・高圧線などの障害物を避けながら安全なルートを設計できるかを検証。
  • 建物の高さ情報をもとに、屋上上空でのホバリングおよび荷下ろしを精度高く行えるかを確認。
写真:建物周辺に設定された自動航行ルート
写真測量技術で生成した3D空間上で自動航行ルートを設定

3. LTE通信が届かない環境下でのドローン運用可否に関する検証(技術目的)

  • 災害時を想定し、LTE通信が不安定または圏外の状況で遠隔操作がどこまで可能かを検証。
  • 通常は離陸地点と荷下ろし地点の双方にオペレーターが必要だが、ワンオペ(単独オペレーター)で荷下ろしまで完了可能であることを確認。
写真:荷物を吊り下げて飛行するドローン
近畿大学東大阪キャンパス上空を飛ぶドローン

 これらの複合的な目的のもと、医療資材輸送に適した自動化技術と、災害時の通信途絶を前提とした実運用モデルの両面から検証を行った。

実施概要

 実証実験では、写真測量技術で生成した3Dマップをもとに自動航行ルートを設計し、離陸から荷下ろしまでの一連の輸送を検証した。通常は、離陸地点と荷下ろし地点それぞれにオペレーターを配置する必要があるが、今回の実験により、LTEが届かない環境でもワンオペレーションで荷下ろしを完了できることを実証した。これにより、災害時など現地オペレーターの派遣が困難な状況下でも物資を届けることができる運用モデルの可能性を確認できた。

実施日時2025年10月21日(火)
実施場所近畿大学 東大阪キャンパス
主催近畿大学、近大アシスト
協力ミヤマエ、ロジクトロン

【使用機体スペック】

機体名DJI FlyCart 30
最大積載重量30kg(デュアルバッテリー運用時)
最大飛行距離16km
最高速度20m/s(約72km/h)
最大飛行時間最大18分(標準モード時)
通信方式O3映像伝送/LTEバックアップ対応
機能ウインチ荷下ろし機構/冗長通信切替機構/障害物検知センサー/フェールセーフ自動帰還/防塵防水(IP55)
実験の様子をまとめた動画レポート(株式会社ロジクトロンYouTubeチャンネル)


 この実証の結果を受け、今後はDID(人口集中地区)外での長距離飛行実証を段階的に実施し、倉庫から病院まで約8kmの自動輸送の実現を目指す。また、レベル3.5飛行の活用も視野に入れ、災害時や医療物資の緊急輸送など大型ドローン活用を推進するとしている。