2025年11月19日、NTT e-Drone Technology(以下、NTTイードローン)、エヌ・ティ・ティ エムイー(以下、NTT-ME)、NTT東日本 神奈川事業部(以下、NTT東日本)は、神奈川県内の自治体が管理する公共下水道管路において、ドローン点検の飛行検証を実施したと発表した。

 下水道管の老朽化により道路の陥没事故が発生するなど、下水道管路の点検の重要性が高まっている。一方、従来の人による目視点検は、有毒ガスや酸素欠乏症等の危険性や、高所での作業負荷が課題となっている。カメラロボット等による点検は、構造上の制約や流下量等により対応が難しい状況だ。

 そこで3社は、飛行安定性・安全性・効率性・通信環境といった観点から、ドローンによる点検が有効に機能するか技術検討を実施した。当日は自治体職員が立ち会い、現場における技術の適用性や点検作業の効率化・有効性を確認した。

 実証では、非GNSS環境での飛行に強いFlyability社の屋内用ドローン「ELIOS 3」、点検・防災用途などに活用されるSkydio社製オールラウンドドローン「Skydio X10」を使用した。

 また、ドローンにより取得したデータについて、より効率的に損傷箇所を判断するためのサポートツールとして、NTTイードローンのAIサービス「eドローンAI」のアルゴリズムを下水道管に適用させ、損傷箇所を自動判定する試行検証を実施した。

写真:機体全体が球体のガードで囲まれたFlyability社製「ELIOS 3」
Flyability社製「ELIOS 3」
写真:飛行するSkydio社製「Skydio X10」
Skydio社製「Skydio X10」

実証概要

 実証では、ELIOS 3を用いた汚水管渠の点検飛行、Skydio X10を用いた雨水貯留管の点検飛行、そしてeドローンAIを用いた損傷箇所のAI解析を行った。

 狭く暗い場所でも安定飛行を行い、曲がり角を含む約150mの飛行に成功。高精細映像を取得し、ひび割れなどを鮮明に確認できた。また、AI解析により人力点検と同等レベルで損傷箇所を検出した。作業員が管内に入らず短時間で広範囲を点検できるため、安全性・効率性が向上した。

実証日時2025年10月20日(月)、10月31日(金)
実証場所神奈川県内の公共下水道施設(計3か所)
・雨水貯留管(2か所)
・汚水幹線(1か所)
実証内容検証①:ELIOS 3を用いた汚水管渠の点検飛行(Φ3,000mm)
検証②:Skydio X10を用いた雨水貯留管の点検飛行(Φ10,000mm)
検証③:「eドローンAI」を用いた損傷箇所のAI解析

【各社役割】

NTTイードローンドローンの選定、運用、操縦、AI解析
NTT-ME飛行支援、通信状況や取得情報の確認を通じた運用支援
NTT東日本全体統括として実証計画策定、体制構築、現場調整、技術連携

検証①「ELIOS 3を用いた汚水管渠の点検飛行」の結果

 狭く暗い下水道管内でも安定飛行することを確認した。高輝度LEDライトと高解像度カメラにより管内の状況を鮮明にとらえることができた。

 また、独自の電波増幅器である「Range Extender」を活用し、従来では難しかった下水道管内における直角に屈曲した構造の箇所を2か所通過することに成功し、屈曲部2か所を含め直線距離で約150mを飛行した。

 マンホール上の地上から操縦者がELIOS 3を操縦した状態でも安定飛行し、鮮明な映像を撮影できた。

写真:マンホールから侵入するELIOS 3、施設建屋内BOX部から投入するELIOS 3
写真:マンホールから降下するELIOS 3、ELIOS 3により取得した点群データ

検証②「Skydio X10を用いた雨水貯留管の点検飛行」の結果

 ドローン自体の独自技術により、地下空間かつ暗所であってもSkydio X10が安定飛行することを確認した。特に前例がほとんどなかった下水道管(雨水管)内において、Skydio X10を適用した点検飛行および鮮明な映像撮影ができた。

写真:貯留管を飛行するSkydio X10、飛行時の様子

検証③「eドローンAIを用いた損傷箇所のAI解析」の結果

 ELIOS 3、Skydio X10で撮影した画像をeドローンAIで解析した結果、ひび割れを高い精度で検出・軸方向と円周方向に伸びるひび割れを検出することに成功した。過年度点検調書と比較した場合でも、人の目で確認する場合と遜色ない結果を得た。これにより、損傷箇所を発見する労力が低減される。

写真:AI解析前、AI解析後
写真:AI解析前、AI解析後

 この検証結果を踏まえ、NTT東日本グループは神奈川県内および全国の自治体・下水道点検事業者に対し、ELIOS 3、Skydio X10等をはじめとするドローンの導入支援を強化し、AI等を含めた新技術活用による下水道点検・地下設備点検における課題解決に取り組む方針だ。